「一期一振さん。改めてよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願い致します」
「さっそろそろ弟さん達の所へ行ってあげてください。外で待ってますよ」
長谷部とあの二振りには外で待機するようにと言っておいたので今頃襖のすぐ横で待ちくたびれている頃だろう
「お待たせしました」
「いち兄!!」
襖を開けてすぐ秋田藤四郎さんと五虎退さんが飛び出してきた。後ろには駆けつけてきたのか薬研もいる
「秋田!五虎退!」
互いにぎゅっと抱きしめている。一期一振さんの目は本当に愛しい弟達を見る目をしている。
「薬研も…来てくれるかい?」
「…あぁ」
優しくて暖かい空間だ。
「家族愛とはいいものですね長谷部」
「俺の主を想う気持ちも負けてませんよ」
「そこ張り合うところですか?」
ふふっと笑みを零すと長谷部もまたニコニコとしている。今回は営業スマイルなどではなさそうだ。
「せっかくのいい雰囲気のところお邪魔するよ」
「燭台切、どうしたんですか?」
「そろそろ昼餉の時間だから呼びに来たんだ」
「もうそんな時間ですか」
「いち兄、手を洗いに行きましょう!」
「あぁ行こうか」
「こっちです…!」
「私達も行きましょう」
「はい主」
「いただきます」
声を揃えて皆でご飯をいただく
「いち兄!燭台切さんのご飯はとっても美味しいんですよ!」
「ほっぺが落ちちゃいそうになるんです…!」
「どれも絶品だぜ」
「それでは1口…」
ほとんど初めての食事にも関わらず綺麗な所作で口におかずを運んでいく
「美味しい…!」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
「皆燭台切の手料理で胃袋掴まれちゃいますね」
「ふふっそんなに褒めても何も出ないよ」
その後皆で楽しく賑やかに食卓を囲んで食事をした。
「食事というのはいいものですな」
「腹が減っては戦ができぬ、とよく言いますからね。それ程食は大事なんですよ」
「えぇ先程思い知らされました。それにあぁやって楽しく弟達と会話ができることが何より幸せです」
「楽しんでくれてるようで良かったですよ」
「そういえば一期一振さん」
「なんでしょうか」
「実は新しい食器をいくつか買おうと思ってて」
一緒に選んでくれませんか?と聞くと意外とすんなりはいと返事が返ってきた
「ここから選べば良いのですか? 」
「はい、まずはお好きな湯呑みを選んでみてください」
「そうですね…」
悩みつつ画面をスライドして色々な食器を見ている
「…!あのこれが良いです」
「これですか?」
見せられた画面には淡い水色と桜の花びらの模様が入っている綺麗な湯呑みだった
「わぁ綺麗ですね」
一期一振さんは出会った時より雰囲気が柔らかくなり今はほんの少し微笑みながら画面を見ている
「せっかくなので弟さん達の分も選びましょう」
「勝手に決めても良いのでしょうか?」
「兄からのプレゼントと渡してあげましょう」
「ぷれぜんと…」
「それに貴方から貰うならなんでも嬉しいと思いますよ」
「…!」
「そう…ですか」
なんだか嬉しそうだ。
あの後一期一振さんと3振り分の湯呑みを買った。
薬研には黒と紫のグラデーションに白い花が入った湯呑み
五虎退さんには白と可愛い虎が入っている湯呑み
秋田藤四郎さんには桃と白のグラデーションに桜が入っている湯呑みを
「全部綺麗ですね…」
「喜んでくれると良いけれど…」
大丈夫ですよと声をかけながら私も燭台切と長谷部の分を選んでいく
燭台切は黒に内側が紺色で飲み口部分に金が入った湯呑みを
長谷部には白で淡い色の藤とほんの少し金が入っている湯呑みを
「私のも買おう」
自分のはシンプルな白に青のグラデーションが入った湯呑みにした
「さて、あとは雑誌とかもあるっぽいし…それも買って…」
あれこれと選んでカートに入れていく。お金は全く心配ないので多少買いすぎても問題なし
「…貴女意外と浪費癖あったりしますか」
「…そんな事ないですよ」
金はありますから…心配要らないんですよ…
「ゴホン…それはさておき。注文は済ませましたから届いたら皆に渡しましょう」
「はい」
「ではまた後で」
居間から出ていくとそこには手に何かを持っている燭台切がいた
「あれ燭台切、その手に持ってるものは…」
「あぁ主ちょうどいいところに」
すると燭台切はぱっと手を広げて私の方に差し出してきた
「これは…何かの種ですか」
「そう!これいちごの種なんだ!」
「ほへぇいちごですか…どこで見つけたんです?」
「倉庫を掃除してたら偶然種の袋を見つけてね、植えるにもピッタリの季節だし」
「植える場所も決まってるんですか?」
「そうだね、元々母屋近くに大きな畑があるんだ。そこにしようと思ってるんだけど」
「良いですね」
「でも、あそこ見たところ穢れがついてて…植えられるかどうか…」
「あちゃー…なるほど…」
穢れというのは本当に厄介らしい。多分生命を蝕んだりとか色々あるんだろう。
「まぁ今日はもうお昼過ぎですからまた明日考えましょう」
「そうだね、」
少し日が暮れてきた頃
「一期一振さん荷物届きましたよ」
「今参ります」
少し早歩きで門に荷物を受け取り急いで屋敷に戻る。他の刀剣男士に会う訳にはいかないからね
「さて心の準備はできましたか?」
「…もう少し待っていただけますか」
「初めてですもんね、緊張しちゃうのは分かります」
「……もう大丈夫です」
「じゃあ渡しに行きましょう」
湯呑みの入った箱を大事そうに抱えながら皆がいる居間に向かう。ちょうど夕飯の時間に近いのでこの時間には大体皆集まっている
「お邪魔します〜」
「主君!いち兄!」
「そ、その箱は何ですか?」
「ほらいち兄さん頑張って」
「…皆に、ぷれぜんとを買ったのです」
「ぷれぜんと?」
「箱を開けてみてください」
そう言いながら一期一振さんは弟さん達に箱を渡していく
「長谷部と燭台切にも私から」
「わぁありがとう」
「ありがたき幸せッ…」
一斉に箱を開けて中身を見る。
「これは…」
「湯呑み…ですか?」
「…どうでしょうか」
少し不安そうな顔をしている一期一振さんにすぐ3振りは
「とっても素敵です!!」
「こりゃいいな…」
「す、すごく可愛いです!」
「これ君が選んでくれたの?」
「私と一期一振さんで選んだんですよ。素敵でしょう?」
「一生の宝物に致します…!!」
「ふふ、大事にしてくれると嬉しいですね」
皆嬉しそうに湯呑みを眺めている。
「サプライズ、大成功ですね」
と小さくガッツポーズしてみせると一期一振さんも嬉しそうに
「はい…!」
と笑ってくれた
すると
ぼふんっ
と音が鳴ったと思えば上から大量の桜の花びらが降ってきた
「うわぁ何これ何これ!」
「これ一期くんの誉桜だよね!?庭の方まで溢れ出てるよ!!」
「いち兄の誉桜こんなに出たところ見た事ありませんんん…!!!!」
「ふふ…あっはっはっは!」
「これはやってしまいましたなぁ」
そう言いながら一期一振さんは笑う
「貴様ァ!早くどうにかしろ!!」
「この誉桜長谷部くんの分も入ってない!?」
「うわぁぁぁぁ!!!」
大量の桜の花びらに埋もれながら所々で叫び声が聞こえたり笑い声が聞こえたり、とんでもない空間になってしまっているが、皆幸せそうだ
「幸せ、ですな」
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