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その日、バタンQだった麗三。
翌日の土曜にゆっくり入浴しバスタブの中で考えていた……。
(やっぱりこのストレス、あたし一人じゃ抱えきれないわ。なおちゃんに相談しよう!)
日曜日の夜、なおちゃんがもう帰宅しているであろう夜の9時になおちゃんへ電話をかけてみた。
なおちゃんは5回目のコールで出てくれた。
『麗三! ただいま』
「なおちゃん、何時に帰ってきたの?」
『それがね、ついさっきなんだよ』
「ああ! そうなんだ、ごめんね、バタバタのところ……」
『ううん。構わないよ。アネキが夜実家にきてさ、ごはんももう済んでるし……電話、ゆっくりできるよ』
「……」
『麗三……? 何かあったんでしょ。こないだも、心配してたんだ。オレに気を遣う事なんかしないで。どうしたの?』
「うん……。あの、もしかしたらなおちゃん、嫌かも知れない内容なんだけど……あたし、耐え切れなくって!」
『ン?! どういうことだい、 麗三』
「う……ん、実はね、前のお店のお客さんが最近『夢と黒猫』に来ているの」
『うん。そのお客さんがトラブルメーカーなんだね?』
「そう……」
かくかくしかじかで、ああでこうで、云々……。麗三は詳細を思い切ってなおちゃんに打ち明けて、辛いんだと言った。
「何だか、凄く嫌なの。興信所でも使って調べたのかしら、あたしが『夢と黒猫』に居ること。恐怖すら感じるよ」
『そうだな。麗三……早めに店長さんに相談したほうがいいよ。その、もしも麗三が『夢と黒猫』を続けたいのなら、の話だよ?』
なおちゃん……やっぱり、あたしが嬢である事が辛いのかな。フツーはそうだよね。
「はい、なおちゃん。あたし20年間この仕事をしてきてね、他の仕事をする自信がないの。何一つ続かなかったわ。現場仕事や露店の手伝いも介護のお仕事も……。でも今の仕事だけは頑張ってこれたんです」
『……うん。わかるよ、麗三』
「なおちゃん、続けるならお店を変わったほうがいいよね?」
『う~ん……麗三、明日はどうしてもそっちへ行かれないんだよ。休みの人間が多くて明日は一日カフェが人手不足。オレが残らなきゃなんない。でもオレ、麗三と直接逢って早くお話ししたいよ。あさって、仕事のあと寄っても良いかな?』
やっぱりなおちゃんは頼りになるわ!
「ええ、もちろんよ! なおちゃん、きてくださいっ」
『うん、じゃあ、明日の出勤時には、さっそく店長さんに事情を話すんだよ。そうすればボーイさん達も高梨さんに目を光らせておいてくれるだろうからさ』
「うん、わかりました。そうするね」
『好きだよ……麗三』
「あたしも、とっても愛してるよぉ、なおちゃん、ちぅ――」
『ちゅ――♡』
「ンフ、おやすみなさい」
『うん、おやすみ、麗三』
そして翌日。店長に高梨さんのこれまでの行動について詳細に話した。
とても不快で困惑している、と。
『夢と黒猫』の店長は前の店の店長のように、我慢を強いるような言葉は一切言わなかった。
「……そうか~。そんな事が。ララちゃん、大変な思いをしていたんだね。前の店で……。それでウチまでララちゃんを追って来てしまったという訳か」
「はい……。いったい、何でここのお店にあたしが勤めているとわかったのか不思議でなりません」
「うん、確かにそうだな。高梨さんは売り上げだけで考えればいわば太客だが、女の子に対してそんな風だと、はっきり言って店として迷惑だ。女の子達あっての『夢と黒猫』だからね」
やっぱり、なおちゃんの言う通り、店長に話して良かった。話しただけでも心が安堵する。
「ララちゃん、困った時はいつでもボーイか私を呼んでください。決して無理しないで!」
「ハイ! 店長、ありがとうございます」
「あ、おはようございま~す。ララ姐さん、何かあったの? 店長とずっと話してたね」
里奈ちゃんが心配そうに声を掛けてくれた。
「うん、ちょっとね。でも店長に話して具体策が浮かんだから大丈夫よ!」
「そうなんですね……。ララ姐さん、あたしにできる事があったら何でも言ってくださいね」
「うん、そうする。ありがと、里菜ちゃん」
今日もララはじめ女の子達目当てのお客様が次から次へと来られ、店は賑やかだった。
なぜか高梨さんの姿は見えなかった。
「ご指名です、ララさん」とボーイさんに呼ばれる度に、今日一日冷や冷やしていた。
高梨さんには悪いけど、こなくてよかった。
駅へと向かう。いつものように電車に乗り、一駅目が麗三の自宅の最寄り駅だ。商店街を抜け、今日は疲れたから、お家近くのコンビニでお弁当を買う。
(……さっきから、なんか……人の視線? というか気配を感じる)
住宅街に入ってから麗三はそんな不安を抱き始めた。
(う~ん、ここのところ疲れ過ぎているから、きっと気のせいね)
コンビニでやっぱお弁当はやめ、玉子サンドとコールスローと、レジ横のホットスナックを購入。もちろん大好きなプリンも。
そうして、やっぱりなんだか違和感を感じつつ足早に麗三はマンションまで急ぎ、辿り着いた。
玄関を開け鍵をかけ、ホッとした……。
(どうかしちゃってるわ、あたし……今日はなおちゃん、カフェの人手が足りないから遅くなると言っていたな。お疲れだろうから、電話はせずにおこう)