テラーノベル
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めちゃくちゃ手垢でベッタベタの展開です。
騎士×令嬢。歳の差両片思い。
多分あなたが一度は見たことあるネタ。
白亜の城と見紛うばかりの豪奢な伯爵邸。その美しく手入れされた薔薇庭園の片隅で、若き見習い騎士の少年は、小さな主の我が儘に付き合わされて、額に青筋を浮かべていた。
「おい、太宰! 待てって言ってんだろ! そっちに行ったら服が汚れるッ!」
赤漆を溶かしたような鮮やかな髪を揺らし、十五歳の中原中也は声を荒らげる。その視線の先では、まだ五歳になったばかりの少女――太宰治が、ひらひらとした豪奢なレースのドレスの裾を泥で汚しながら、満面の笑みで振り返っていた。
「やーだね! ちゅうやがわたしをつかまえられないのがわるいのさ!」
太宰はまだ幼く、舌足らずな声でけらけらと笑う。彼女はこの広大な屋敷の令嬢であり、中也は彼女を護るために数年前からこの屋敷に奉公している身だ。本来であれば、身分差のある主に対してこのような口調は許されない。しかし、太宰の破天荒な性格と、彼女の親である伯爵夫妻が仕事で年中領地を空けているという環境が、二人の関係を少し特殊なものにしていた。
中也にとって、太宰は守るべき主であると同時に、放っておけない危うさを持つ、年の離れた妹のような、あるいはそれ以上の、言葉にできない特別な存在だった。
「ほら、捕まえた。いい加減にしろ、また侍女の姉ちゃん達に怒られるのは俺なんだぞ」
長い脚を生かして一歩で距離を詰めた中原が、太宰の小さな身体をひょいと抱き上げる。
「むー、ちゅうやはすぐそうやってちからづくでかいけつするんだから。ずるい!」
「ずるくねえよ。お前がちょこまか動き回るのが悪い。……ほら、大人しくしてろ」
中原が自身の騎士上着の袖で、太宰の頬についた泥を優しく拭ってやる。その手つきは、荒っぽい口調とは裏腹に、ガラス細工でも扱うかのように繊細だった。太宰はその大きな青い瞳を瞬かせ、中原の首に小さな腕を絡みつかせる。
「ねえ、ちゅうや」
「ああ?」
「きみはいっしょう、わたしのいぬだよ!」
ふんぞり返って偉そうに告げる小さな主人に、中原は呆れたように息を吐き出した。
「誰が犬だ、誰が。俺は騎士の卵だっつうの」
「おなじようなものさ。わたしがみぎといったらみぎにいくし、おやつをあげるっていったらよろこぶもの。だから、わたしのいぬ!」
「……お前なぁ」
中原は苦笑しながら、太宰の柔らかい茶髪をくしゃりと撫でた。太宰はそれが心地良いのか、中原の胸に小さな頭を擦りつける。
伯爵夫妻は外交の仕事で忙しく、この広い屋敷に帰ってくることは滅多にない。太宰は生まれながらにして何不自由ない贅沢を与えられていたが、本当に欲しいはずの親の温もりだけは、常に欠乏していた。その穴を埋めるように、太宰は中原にべったりと懐いていた。食事の時も、勉強の時も、眠る時でさえ、中原の姿が見えないとすぐに機嫌を損ねる。中原もまた、その寂しさを察しているからこそ、彼女のどんな我が儘にも、文句を言いながら最後まで付き合っていた。
ふと、太宰が中原の首に回した腕に、ぎゅっと力を込めた。
「ねえ、ちゅうや……」
「ん?」
「おおきくなっても、いっしょにいてくれる?」
その声は、先ほどまでの生意気なものとは一転して、今にも消えてしまいそうなほど不安げに震えていた。上目遣いで中原を見つめる瞳は、まるで明日をも知れぬ捨て猫のようだ。物心がついた瞬間から、自分を置いていく大人ばかりを見てきた太宰にとって、目の前の少年だけが世界を繋ぎ止める唯一の錨だった。
中原は一瞬、胸を突かれたように目を見張った。五歳の少女が抱くには、あまりに深い孤独の色。それが愛おしくて、同時にたまらなく切なくて、中原の心臓は小さく跳ねる。まだ恋という名前を知る前の、けれど確かにそれに準ずる熱が、少年の胸の奥で静かに灯っていた。
「っ……当たり前だろ。俺はお前の騎士なんだからな。どこにも行かねえよ」
気恥ずかしさを隠すように、中原は少しぶっきらぼうに、けれど確かな熱を込めて適当に返した。それを聞いた太宰の顔に、ぱあっと大輪の花が咲いたような笑みが広がる。
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「ほんと? うれしいなぁ。じゃあね、わたしがおおきくなったら、ちゅうやとけっこん、したい!」
無邪気で、残酷で、あまりにも愛らしいプロポーズ。中原は耳まで真っ赤に染め上げながら、ははっと声を立てて笑った。
「はは、結婚かよ。お前、そりゃあ子供の独り言だな。……まあ、お前が大人になって、どうしてもって言うなら、考えてやらんこともねえよ」
「ぜったいだからね! やくそくだよ、ちゅうや!」
「はいはい。大きくなったらな」
中原は太宰の小さな頭を優しく何度も撫でた。子供の他愛もないおままごとの延長。数年も経てば、彼女はもっと立派な貴族の青年と出会い、自分の言ったことなど綺麗さっぱり忘れてしまうのだろう。そう思いながらも、中原の心はその約束に、密かな救いを見出していた。
――それから、十数年の歳月が流れた。
かつて見習いだった少年は、今や伯爵家を支える若き近衛騎士団長となり、その身に纏う風格も、かつてとは比べものにならないほど洗練されていた。二十八歳になった中原中也は、相変わらずその赤髪を誇らしげに揺らし、凛とした佇まいで主君の傍らに控えている。
そして、その傍らに立つ主――太宰治は、十八歳の誕生日を迎えていた。
かつての舌足らずな少女は、どこへ行ってしまったのだろうか。成長した太宰は、誰もが二度見するような、恐ろしいほどの美人に育っていた。夜の闇を溶かしたような極上の茶髪は、緩やかなウェーブを描いて豊かな胸元に流れ、切れ長の双眸は、神秘的な深い光を湛えている。社交界では「氷の薔薇」だの「傾国の美女」だのと騒がれ、彼女の微笑み一つで身を滅ぼしかねない男たちが列をなしていた。
けれど、中原だけは知っていた。彼女の本質が、あの頃と何も変わっていないことを。
十八歳の生誕を祝う盛大な夜会が終わり、招待客たちがすべて帰り静まり返った深夜。中原は役目を終え、自室に戻ろうとしたところで、太宰の寝室から呼ばれた。
「失礼します、お嬢様。……まだお休みになっていなかったのですか」
中原が扉を開けて部屋に入ると、太宰は豪奢な天蓋付きのベッドの端に腰掛けていた。昼間のきらびやかなドレスは脱ぎ捨て、薄手のシルクのナイトウェア一枚を身に纏っている。月の光が窓から差し込み、彼女の白い肌を妖しく照らし出していた。
「中也、遅い。待ちくたびれて干からびるところだったわ。」
太宰は不満げに唇を尖らせる。その表情と言葉遣いは、あの五歳の頃のままだ。社交界で見せる完璧な淑女の仮面は、中原の前では跡形もなく崩れ去る。
「悪かったな。片付けの指示や、警備の引き継ぎがあったんだよ。……ほら、もう夜も更けてる。早く寝ろ」
中原は苦笑しながら、太宰に歩み寄る。二十八歳になり、大人の男としての包容力と色気を身につけた中原だったが、太宰の前に来ると、どうしたってあの頃の距離感に戻ってしまう。
太宰は中原をじっと見上げていた。その瞳の奥にある熱に、中原は気づかないふりをした。
中原は、太宰のことが好きだった。いや、好きという言葉では到底足りないほど、彼女を愛していた。それは十五歳の頃から、形を変え、深さを増しながら、ずっと中原の胸の中で燻り続けている感情だ。しかし、彼は自らの立場を弁えていた。自分はただの騎士であり、彼女は高貴な伯爵家の令嬢。彼女を護ることこそが自分の使命であり、その境界線を越えることは決して許されない。
だからこそ、中原は自分の想いに蓋をし、ただの「忠実な犬」として彼女の傍らに居続けようと心に決めていた。太宰が自分に向ける視線が、単なる親愛以上のものを含んでいると薄々気づいていながらも、それを認めれば、この関係が壊れてしまうと怖れていたのだ。
しかし、太宰の側は、もう限界だった。
「ねえ、中也」
太宰が立ち上がり、中原の目の前に一歩踏み出す。微かに香る薔薇の香油の匂いに、中原の身体が硬直する。
「……何だ、お嬢様」
「その『お嬢様』って呼び方、嫌い。誰もいない時は、名前で呼んでって言っているのに」
「立場ってものがあるだろ、立場が」
中原が視線を逸らそうとした、その瞬間だった。
太宰の手が、中原の胸元を強く掴んだ。驚いた中原がバランスを崩し、そのまま太宰の背後にあった広いベッドへと倒れ込む。シーツが擦れる鈍い音が部屋に響いた。
「おい、太宰……っ!?」
中原は反射的に身体を起こそうとしたが、太宰がその上に馬乗りになる形で彼を組み伏せた。薄いシルク越しに、彼女の体温と、柔らかい身体の曲線がダイレクトに中原の肌に伝わってくる。あまりの動転に、中原の顔がカッと熱くなった。
「何、何してんだお前! どけッ!」
「どかない。中也はいつも、そうやって私から逃げてばかりだわ」
太宰は中原の両手首を掴み、ベッドに縫い付けるように力を込める。成人した男性の力に敵うはずもないのに、中原は彼女を傷つけることを恐れて、本気で力を振り払うことができなかった。
見下ろしてくる太宰の顔は、月の光を浴びて、息を呑むほどに美しかった。その瞳には、あの五歳の頃の、捨て猫のような切なさと、それ以上に、一人の成熟した女性としての執着と情念が渦巻いている。
「ねえ、中也。私、今日で十八になったんだよ」
太宰は中原の顔にじりじりと顔を近づける。彼女の吐息が、中原の唇に触れそうなほど間近に迫る。中原の心臓は、まるで早鐘を打つように激しく脈打っていた。彼は、太宰のことが好きだ。今すぐその細い身体を抱き締め、自分のものにしてしまいたいという衝動が、理性を焼き切ろうとしていた。
けれど、まだ理性の一端が、中原を押し留める。
「……それがどうした。大人になったからって、こんな我が儘が許されると思うな」
中原が声を絞り出す。その拒絶が本心ではないことを、太宰はすべて見抜いていた。
太宰は、中原の戸惑いも、隠された情熱も、そのすべてを楽しんでいるかのように、妖艶に唇の端を吊り上げた。そして、かつて薔薇の庭園で、未来を誓い合ったあの頃と同じように、けれど決定的に異なる大人の色気を孕んだ仕草で、小首を傾げた。
「もう私大人になったよ? 子供の頃の約束……覚えてる?」
余談なんだけどさ、みんなテラーノベル公式AIで誰が一番好き?
私は寺島あおいさん。
寺島さん!!!コメント欄きてーーーー!!
コメント
11件
小さい太宰さんが可愛すぎる! 太宰さん、ずっと本気だったのに辛かったんだろうなぁ… お願いだからご結婚して幸せになって欲しい
確かに1度は見た事のある感じしてる(?) 原点に戻って腐を摂取するのもいいものですね( -᷄ ᴗ -᷅ ) 騎士と令嬢という昔から近くにいる存在でも立場が違うから結婚まではいけないのだろうか…