天界ー
観音菩薩達が到着する少し前、毘沙門天と吉祥天は狩りに行く準備をしていた。
紫希が毘沙門天の着替えを手伝っていると、机に置かれていた水晶玉に亀裂が入る。
パリッ!!
「風鈴の奴め、裏切りやがったか!!」
バンッ!!
毘沙門天は大きな声を出しながら、テーブルを叩き付けた。
紫希と邶球は黙ったまま、黙々と狩り道具を袋に入れ始める。
「人形の事など、放っておけば良いでしょ?裏切ったのなら、殺せば良いだけ。奴等は妖石を破壊されれば、死ぬだけだろ。」
「吉祥天…。確かに、そうだな。殺せば良いだけの話だな。」
「ふふ、お前は妾の言う事だけを聞いてれば良いのだ。」
そう言って、吉祥天は毘沙門天の腕に擦り寄る。
「邪魔な物は全て排除する。そうとなれば、お前の人形達はいらないだろう?なにせ、妾達にはあのお方がいる。」
「あぁ、私達には天之御中主神様がいる。君のおかげで、私の夢の実現が近付いた。そうか、それもそうだな。紫希、邶球。石を連れ戻したら、屋敷から出ないようにしなさい。」
「「かしこまりした。」」
紫希と邶球は声を合わせて、毘沙門天に頭を下げる。
「毘沙門天や、そろそろ行こうぞ。」
「分かった。哪吒の監視も引き続きしていろ。吉祥天、私の馬に乗って行こう。」
「妾を存分にもてなせよ、毘沙門天。」
吉祥天と毘沙門天は浮き足のまま、屋敷を出て行った。
残された2人は体の力が抜けたように、床に座り込む。
「え、え?ぼ、僕達、殺されるって事?」
「恐らくね。」
「そんなの嫌だよ!?僕が何をしたって言うのさ!?」
「うるさいな、殺されたくないのはアンタだけじゃないわよ!!」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。」
邶球は同じ言葉を繰り返しながら、泣き崩れた。
「はぁ…。あたし達もそろそろ、決めないといけないかもね。」
「決めるって、何をさっ?」
「毘沙門天様から離れるか、離れないかよ。あたしはもう、無理。」
「む、無理って…。」
「あたしね、気になる人がいるの。その人に会いたい
から、ここを出てく。」
紫希の言葉を聞いた邶球は、驚きのあまり声を発するのを忘れてしまった。
「は、は!?好きな人って事!?」
「どうせ、殺されるなら好きにやるわ。どの道、あたし達は遅かれ早かれ殺される。吉祥天様が決めるに違いないわ。」
「そ、そうだけど。ぼ、僕はどうしたら良いんだよ。」
「はぁ?そんなの自分で決めなさいよ。観音菩薩側に寝返るも良し、毘沙門天様に取り入るのも良し。好きにしたら?」
そう言って、紫希は部屋を出て行った。
「何だよ、それ。僕達は仲間じゃなかったのかよ。」
邶球は、自分達の中に絆と言うものがない事に気付いたのだった。
源蔵三蔵 二十歳
黒い渦の中を抜けると、神々しい光が視界に飛び込んで来る。
「三蔵には眩しいかもね、天界の太陽の光は。ここは太陽とかなり近い場所だから。」
観音菩薩は俺に日影を作るように手を上げた。
「うぅ…。あ、やっと光に慣れてきた。」
ゆっくり目を開けると、どこか懐かしい気持ちになった。
眩しい光に照らされた屋敷達、至る所に仏像が建てられている。
生い茂る沢山の木々達に、囲まれた広場のような場所だ。
一見、宝像国と街並みは変わらないな。
本当にここが、沙悟浄と猪八戒が住んでいた天界?
高級なアクセサリーを身に付けた老若男女、鎧を着た兵士達。
妖気が全く感じないのは、兵士達が妖を討伐しているからだろう。
「ここに住んでるのは、神だけじゃないのか?」
「大体はね、天道に選ばれた魂が実体化しただけ。つまりは、元々は下界で生きていて死んで、六道のうちの天道に選ばれた人間が住んでるよ。」
「成る程。」
「観音菩薩、お待ちしてましたよ。おや、源蔵三蔵も連れてきたのですか。」
俺と観音菩薩が話していると、天部が声を掛けて来た。
「天部、毘沙門天達は?もう狩りに行った?」
「えぇ、先程。私の式神に監視をさせていましたから、間違いはないでしょう。屋敷の警備もそれ程、厳しいものではなかったです。ですが、それがどうも怪しいのです。」
天部の言葉を聞いて、最後の部分は同感するものがあった。
何故なら、毘沙門天が自分の屋敷の警備を緩くするのか?
「んー、ちょっと怪しいね。」
観音菩薩の言葉を聞いた石は、キッと目を釣り上げる。
「そんな事はどうでも良い。早く、哪吒を助け出す事が第一だろ。」
「観音菩薩を危険な目に遭わせる訳にはいきませんよ。我々の要なんですから。」
「おい、約束と違うだろ。哪吒の事はどうすんだよ。」
天部と石の間に嫌な空気が流れ出した。
「俺の血だけが必要なんだよな。だったら、石と2人で毘沙門天の屋敷に行くよ。」
「観音菩薩、その方が宜しいですよ。貴方まで行く必要はない。」
俺の意見に賛同した天部だが、観音菩薩は首を振らなかったのだ。
「いや、天部。今回は行かないといけない。アイツが本当に、復活したのかを確かめないと。」
観音菩薩が言った”アイツ”とは誰なんだ?
「…。分かりました、私もお供します。」
天部は渋々、自分も同行する事で同意した。
「なら、急ごう。毘沙門天が勘付いても困るからね。」
「分かりました。源蔵三蔵、私達の後に付いて来て下さい。」
「お、おう。」
天部と石を先導に、俺達は毘沙門天の屋敷へと向かった。
この時、吉祥天に勘づかれている事に気付いてなかったのだ。
神獣山付近
毘沙門天と吉祥天を先導に、毘沙門天の兵士達が進行していた頃。
「毘沙門天、馬を止めよ。」
自分の後ろに乗せている吉祥天の言葉を聞き、馬を即座に止めた。
「どうしたんだい?吉祥天。」
「虫が入り込んできたようじゃ。」
そう言って、吉祥天は手のひらから紫の宝石が装飾された鏡を取り出す。
鏡に映ったのは、毘沙門天の屋敷に向かっている三蔵
達の姿。
石が観音菩薩等を連れて来た事が、一目瞭然だった。
「お前の人形は、随分と悪さをするなぁ?妾にも口答えをする始末。そうだ、妾が此奴を好きにしても良いか?」
「どうする気なんだい?」
「あのお方が、新しい人形が欲しいと言っていた。神獣よりも喜ばれようぞ。そうとなれば…、妾の式神達に相手をさせようか。お前等も屋敷に戻り、始末して来い。妾達も後から向かう。」
吉祥天の言葉を聞いた兵士達は、そそくさに屋敷の方角に向かって馬を走らせる。
「すまない、吉祥天。私の不手際だ。」
「ふふ、このぐらい大した事はない。お前の知恵が足りない所は、妾が補えば良い。あの小僧ども、少し分からしてやろう。」
ビリッ!!
そう言って、吉祥天は紫色の札を破り息を吹きかけた。
毘沙門天の屋敷付近
源蔵三蔵 二十歳
茂みの中を抜けると、坂を降りた所に大きな赤色の屋敷が見えて来た。
見た目からしても派手な屋敷は、恐らく吉祥天の好みに合わせたのだろう。
「まずいですね、吉祥天が勘付きましたね。」
緑色の水晶玉を見て、天部が呟いた。
「毘沙門天の兵士達が数名、吉祥天の式神達が向かって来ています。急ぎましょう、あちらが到着する前にここを出た方が賢明です。」
天部が観音菩薩に向かって、言葉を放つ。
「石、哪吒がいる場所は分かってるね?悪いけど、三
蔵を頼むよ。調べ物が終わったら、すぐに合流する。」
「気を付けろ。紫希と邶球には会わないように。特に邶球だな。アイツは臆病者が故に、突発的な行動に出る恐れがある。」
「恐怖は人の原動力に成りかねないと言う事だね。三蔵、これを渡しておくよ。万が一、僕と合流出来ずにまずい事になったら、これを使って下界に降りなさい。」
そう言って、観音菩薩が渡して来たのは白色の札だった。
「この札を破ると強制的に下界に戻れる。いざと言う時に使って。じゃあ、後で。」
タタタタタタタッ。
観音菩薩と天部は一足先に、毘沙門天の屋敷の中に向かって行った。
ブゥゥゥゥン…。
ブゥゥゥゥン…。
俺達の周りに気味の悪い太った蜂のような虫が、うじゃうじゃと集まって来ている。
「何だ?この虫。」
「頭を下げてろ、三蔵。」
「へ?うわっ!?」
ブンッ!!
ブシュッ!!
石が刀を抜き、俺の頭上に飛んでいた虫を斬りつけたのだ。
慌てて頭を下げたおかげで、髪の毛が少し切れた程度で治った。
「この虫は、吉祥天の式神だ。どうやら、虫に監視させていたようだ。」
「だからって、いきなり頭上の虫を斬るなよ。驚くじゃん。」
「さっさと行くぞ。こっち側から回る。」
「あ、おい!!待て!!」
石の後を追い、俺達か観音菩薩達とは逆側から屋敷に潜入する事に。
屋敷の中に入ると、嫌な重苦しい空気が流れ込んで来た。
「何か、嫌な雰囲気だな。ここ…。」
「だろうな。ここでは、多くの妖や人が殺されている。掃除はしているが、白い壁には血が染み込んでしまっている。本当に、嫌気がさすよ。」
前を歩いている石が、どんな顔をしているのか分かる。
屋敷内の空気が重苦しいのは、毘沙門天が斬逆な事を
ここでして来ていのだろう。
廊下を歩いていても、今の所は誰とも会っていない。
どうやら、本当に警備が薄いのだな。
暫く歩いていると、一つの扉の前で石が足を止めた。
「ここが哪吒の部屋だ。鍵は…、掛かってないな。紫希が開けておいたんだな。」
石がゆっくり、扉を開けると部屋から血の匂いがした。
蝋燭の火で照らされた部屋は、ベットが一つだけ置か
れている。
当然の事ながら、そのベットには赤紫色の痣だらけの
哪吒が寝ていた。
体は痩せ細っていて、口元の周りには吐血した血痕が付着していて…。
「酷い…。何で、こんな事が出来るんだ。毘沙門天の野郎はっ!!」
「これをやったのは、吉祥天様だ。あの人は妖怪よりもタチが悪い…。本当に神なのかって、神だからなんでもして良い訳じゃないだろ?」
石は泣きそうな顔をして、哪吒の頬を撫でる。
「…せ、き?」
瞼を開けた哪吒が石の顔を見て、名前を呼ぶ。
すぐに哪吒の視線が、後ろにいる俺の方に向いた。
「何で、お前がここに?」
「哪吒を助けに来たんだ。石の頼みを聞いてね。」
そう言うと哪吒は驚いた顔をした後、石を睨み付けた。
「石、コイツをここに呼んだのか。自分がどうなるか分かってんのか。僕を助けようとしなくても良いって言っ…。」
哪吒がある物を見て、言葉を途中で終わらせたのだ。
何を見せたんだ?
石の背後から覗き込むと、悟空の血の入った小瓶を見せていた。
「この血は君を助ける為に、悟空が用意してくれたものだよ。君を死なせたくないのは、僕だけじゃないって事だ。」
「悟空が僕の為に…?血をくれたのか…。」
「うん、哪吒。君は三蔵からも血を貰って、妖石を作り替えるんだ。血族になるんだ、三蔵の。」
「石、どうしてここまで…する?」
「キミを好きだから、助けたいんだ。」
ドタドダドタドタ!!
廊下から誰かが走って来る足音が聞こえて来た。
石は俺の手を引き哪吒に近寄らせた後、刀を抜く。
バンッ!!!
「石、何やってんだ!!」
「邶球、悪いけど邪魔しないでくれ。」
邶球と呼ばれた男は石の言葉を聞いて、キッと睨み付ける。
「余計な事をしないでくれよ!?毘沙門天様はかなりお怒りなんだ!!僕達を殺すって言い出してるんだよ!?」
「邶球、少し考えれば分かるだろ。吉祥天様が来た時点で、僕達は殺される存在だったんだ。その為の作られた存在なんだから。」
石は自分に注意を引かせるような話し方をしていた。
俺は哪吒の肩に触れ、口を開けた。
「哪吒。悟空と俺の血を飲ませる。」
「ちょっと、待ってくれっ。」
「哪吒、石の気持ちを受け取ってくれ。」
「…、三蔵。」
「頼む。」
その言葉を聞いた哪吒は、石の背中に視線を向け口を開けた。
「石、僕は君に何もしてない。なのに、どうして?どうして、僕を好きだと言うんだ。」
「初めて君を見た時、綺麗だと思った。今、思えば一目惚れだったんだね。僕は君に好かれたくて、行動して来たけど…。それは、君を苦しめるだけだって気付いた。」
「石…?」
「君を幸せに出来るのは、僕じゃない事ぐらい分かっている。だから、哪吒はここを出て幸せになってほしい。その為に、僕は刀を振るう。」
石の言葉を聞いて、胸が苦しくなった。
「何だよ、どいつもこいつもっ!!!好き?そんな感情がなんになるんだ!?毘沙門天様に逆らった所で、殺されるだけだろ!?」
「それでも構わない。」
「は、は?君も紫希も風鈴も、僕達は仲間じゃなかったの?そうだよね、仲間なんてものじゃない。仲間だったら、裏切ったりしないもんね。」
邶球はゆらゆらしながら、刀を抜き先端を石に向ける。
「毘沙門天様達が来るまで、足止めしてやる。裏切った報いを受けろおおおおお!!」
キィィンッ!!
向かって来た邶球の攻撃を受け止め、石が邶球の腹に蹴りを入れる。
ドカッ!!
「早く血を飲ませて、屋敷から出ろ!!」
大きな声で叫んだ石は、倒れている邶球の髪を掴み部屋から引き摺り出す。
「哪吒、早く飲んで。」
「だけど、石が…っ。」
「石の為にも、俺と悟空の血を飲むんだ。」
「…、分かった。」
哪吒は小瓶の蓋を開け、悟空の血を流し込飲んだのを見てから袖を捲る。
「噛んで。」
「ごめんなさい…。」
「大丈夫、大丈夫。ほら、早く。」
急いで哪吒の口元に腕を近付けると、哪吒がガブッと噛み付いた。
チクッ!!
ゴクゴクゴクッ。
音を立てながら哪吒は、俺の腕から血を啜る。
金色だった髪が黒色に染まり、オレンジ色だった妖石が変色した時だった。
部屋の床から黒くて、泥々した細長腕達が出現したのだ。
「三蔵、哪吒を抱えて部屋を出ろ!!吉祥天の式神だ!!」
「っ、了解!!哪吒、触るよ。」
石の言葉を聞いた瞬間に哪吒を抱き上げ、部屋を飛び出す。
泥々した物体が、部屋の中を破壊する程の大きさに変貌していた。
バリバリバリ!!
部屋の壁や柱が音を立てて、破壊されて行く。
ガシッ。
沢山の泥々した細い腕が部屋から出て来て、姿を見て驚愕した。
顔がなく胴体と手足だけの式神を見た事がない。
「何だよ、この気持ち悪い式神は!?」
「あははは!!もう少しで、毘沙門天様達が戻って来るよ。そしたら、お前等は皆殺しだ!!!」
邶球はそう言って、大きな声で笑い出したが…。
ゴンッ!!
「ゴフッ!?」
石が勢いよく邶球を殴り付け、気絶させた。
ビュンッ!!
俺達の方に飛んで来た泥々した腕を、石が刀で弾く。
キィィンッ!!
キンキンキンッ!!
次々と飛んで来る腕を石は、ひたすら弾く。
だが、全ての攻撃を防ぐ事は当然の事ながら出来なかった。
ブシャッ、ブシャッ!!
石の体から血が噴き出し、傷だらけになって行く。
「もう、やめろ石!!」
「やめないよ、哪吒。僕は、やめるわけにはいかないんだ。」
哪吒の言葉を聞いた石は、刀を振るう手を止めない。
キラッと光る一筋の光が、俺の視界に張って来た。
黒い泥々した式神の体を貫くように、金色の槍が飛んで来たのだ。
「石、避けろ!!槍が飛んでーっ。」
シュンッ!!
グサッ!!
俺の声が届く前に、石の体に槍が貫いた。
「ゴホッ!?」
「捕まえたぞ、石。お遊びはここまでじゃ、クソガキども。」
泥々した式神の肩に吉祥天が座っていて、俺達を見下ろしていた。
観音菩薩と天部は、毘沙門天の実験室に忍び込んでいた。
「やはり、ここに無くなった遺骨があったか。天部、遺骨達を霊堂に移動させてくれ。」
「分かりました。」
天部は何も書かれてない札に文字を書き、集めた遺骨達に貼り付ける。
札を貼った瞬間、遺骨達は霊堂に転送された。
「天部、これを見て。」
「これは…、地図ですね。しかも、天界の…?」
「そして、この×印の所を見て。」
観音菩薩はそう言って、地図に載っている×印がされた山を指差す。
「ここは…、もしかして…。毘沙門天は、あの子を狙っているのか。」
「やっぱり、森羅万象が封印されている場所を探していたね。」
「観音菩薩。何故、毘沙門天は森羅万象を?」
「恐らく、吉祥天の案だろう。経文を探すよりも手っ取り早いと思ったんだろうね。だけど、彼女は神と言う存在を憎んでる。我々の先祖達が、彼女にした事は
許される事じゃない。」
「しかし、彼女の強大な力が毘沙門天の手に渡れば…。」
天部は苦い顔をしながら、指で顎に触れる。
「森羅万象は美猿王の言う事しか聞かない。彼だけが彼女を物扱いしなかった。」
「しかし、美猿王には記憶ないのでしょ?」
「うん、繰り返し転生した後遺症だね。悟空自身もまた、美猿王の失った記憶を知りたがってる。」
「美猿王と鬼達の伝承を本人に読ませる為、明王に頼んだのですね。」
「森羅万象を逆撫でする行動はしない方が良…。」
スッと観音菩薩と天部の肩に腕が回され、後ろに引き
寄せられる。
グイッ。
「よぉ、面白い話をしてるなぁ?俺様にも聞かせろよ。」
2人の顔の間から、天之御中主神様が顔を覗かせた。
下界 花の都 小桃の屋敷
三蔵達が天界に行った後、入れ替わりで明王が現れていた。
明王は、黒の生地に赤い椿の花が刺繍された着物を着崩している。
「よぉ、久しぶりだな。元気そうじゃねーか。」
「え、明王?何で、下界に?」
「そら、お前達3人に用があるからに決まってんだろ?」
猪八戒の問いに答えつつ、明王は近くにあった酒瓶を手に取り口に付けた。
ゴクゴクゴクゴク。
音を立てながら酒を美味そうに飲む明王を、周囲は唖然としている。
「ぷはぁ!!美味い!!」
「何なんだよ、マジで…。さっさと用件を言えよ。」
「おいおい、悟空ー。つれねぇ事を言うなよなぁ?お前にとっても良い話だぜ?」
「…へぇ。」
明王の言葉を聞いた悟空は、少し黙ってから短い言葉を発した。
「おい、若に向かって馴れ馴れしいな。」
「あ?お前等、花果山の猿か?良かったなぁ、記憶が戻って。ガハハハハハ!!」
悟空の前に出た丁達を見た明王は、楽しげに笑う。
「天邪鬼の2人もここにいやがったか。」
明王が天と邪に声を掛けるが、2人は質問に答えなかった。
「悟空にとって?どう言う意味だ?」
「あ?何だよ、沙悟浄と猪八戒は聞いてねーのか?まぁ、後で本人から聞くこった。」
猪八戒の質問に対して説明するのが面倒な明王は、悟
空に丸投げした。
「お前等3人、女になれ。」
「「「は?」」」
悟空、猪八戒と沙悟浄の呆気に取られた声が重なった。
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