テラーノベル
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彼はゆっくりと立ち上がるとコートを手にした。
私も慌てて立ち上がりながら、隣に置いたリュックから100万円を出すと
「交通費とか、とりあえず渡すから。これで動いて欲しい」
と彼のスーツの胸を札束で叩くように、押し付けた。
「……出る」
不快な表情で私を促した彼は、手にあるコートで札束が見えないように持った。
そして、ラウンジカフェの支払いをまとめてカードで済ますと、チェックインカウンターへ向かうようだ。
「すみません。これを前金に、彼女がスイートルーム一ヶ月の滞在ができるように手配できますか?もし空きがなければ、Tホテルを彼女へ紹介しますが…いかがでしょうか?」
早川さんは私の渡した札束を、先ほど名刺を渡したスタッフの前に置いた。
そして、彼が創業記念パーティーと言っていたホテルの名前も出した。
「早川様……先ほどは失礼いたしました。再度確認致しましたところ、スイートルームのご利用は本日から可能でございます」
――彼の名刺が担保か?
「だと。どうする?他のホテルも紹介は出来る」
「ここでいいよ。私、忙しいの。ありがとう、早川さん」
「「ありがとうございますっ!!」」
美しく揃ったお辞儀をしたスタッフの一人が差し出した、宿泊者カードの記入をする間、早川さんは私に張り付いていた。
――住所を確かめているのだろうね
「一ノ瀬様、ご利用いただきありがとうございます。今、お部屋の担当者がお迎えに参りますので、少々お待ちくださいませ」
「はい、ありがとうございます。」
凄い変わり身のスタッフだけれど、私もここで毎日お世話になるのだから悪態はつかない。
「一ノ瀬菊」
そう呼ばれた方を見ると、コートを着た早川さんが手招きをした。
カウンターから少し離れた彼のそばへ行くと
「家のこと」
彼は少し身をかがめて小声で言った。
「ここで話すようなことじゃない。本気で売りたいなら、明日10時に事務所まで来い」
コメント
3件

キスケさんのようなまぁさんの書く俺様ヒーローを読むのが久々でゾクゾクします❤
ふ〜ッ やっと休めるね😊 きっと助けてくれるよ🙏先ずはお風呂🛀 部屋を確保したから、リュックの札束は… 菊ちゃんを調べるであろう希輔さんの反応は?
😳きき菊ちゃん? そのリュックには帯付きお金、何束入ってるの?気を付けてよ💦 とにかく宿泊できるように助けてくれたし(Tホテルも紹介できるって何気に…ねぇ…) 売却についても事務所で話を聞いてくれることになったし、先ずはお部屋でお風呂に入り、身体を休めよう。それが先決! そしてこれからのこと、明日の10時までにじっくり考えて、すぐ行動を取れるようにしよう。 希輔さんもすぐ『一ノ瀬菊』を調べるね。