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第壱話【始まりの朝】
朝。8時40分。
最悪な匂い。
まだ、彼奴がうろついている。
そうだと知ろうが関係無い。
彼奴等を生かしておくわけにはいかない。
絶対に。
誰かが座っている前に、呼び出される。
重い、空気を吸うことも吐くこともせず、相手は此方をじろりと見ている。
「………、」
それに比べ、自分はただただ自分の足を眺めているばかり。
「…い」
何も考えて居る事は無く、ただ、
此処に呼ばれた理由を頭に考えさせようとするだけ。
「おい」
今やっと呼ばれたことに気が付いた。
其方の人は自分をじろりと、相変わらず見ている。
自分の仇を見るように、見慣れない人をずっと睨んで居る様に。
「………はい」
不完全な返事を返す。
目線を合わす。
怖いという感情は無い…というと嘘に成るが、
無い様に見せ掛ける。
「君は、ロイ・アルティ君かい?」
そう言って、微笑む。
さっきのが嘘だった様に。
「――っはい」
勢いで返事をしてしまう。
上半身が固まり、金縛りに遭って居るかの様だ。
怖い。
この人は、微笑んでいると言うのに。
「おや、そんなに固まらんでもいいだろう。座り給え」
穏やかに、にっこりと、殺意を殺す。
―――此の人は、
何がしたい?
「あ、ありがとうございます。…それで、なんで呼び出され―…」
はっと驚く。
此の人は偉い人かも知れないのに…
……………………、間違えた。
………言葉遣いを、間違えた。
…………される。
殺、される。
「………、ハハハッ、そんなに怯えんでもいいじゃないか。
私はそんな些細なことでは人間を殺さぬ」
「………ッす、済みません―ッ」
思い切り、頭を下げる。
切り捨てられる覚悟だ。
否、さっき「殺さぬ」って言ったよな…。
「それで、用件だが」
ごくり、と唾を飲む。
大丈夫だろうか。
自分は何か、してしまったんじゃ―。
「お主、――軍の一員になってみないか?」
「――へ、?」
間抜けな声が出る。
何で、俺みたいな奴が?
軍の一員なんかに?
「お主はあの剣の達人に勝ったと聞いておる。剣の達人、そいつは物凄く強い。
しかも、43歳も年が違うと聞くじゃないか。それなら、軍にまだ仕えられる歳だ。
………どうする?決断は、われらがすることではない。お主に判断を任せよう。」
ここで断ったらどうなる?
死ぬか?
さっきので死ななかったから死には至らないと思うが、
でも、やっぱり――。
「――はい。」
自分が役に立つならば。
「自分なんかで良ければ。喜んで」
「ハハハ、よろしい。君は忠誠心が強い子で助かった。」
思えば、あの日から。
日常が壊れていったのかも知れないな。
彼奴を殺す。それだけが俺の目的だ。