テラーノベル
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──────???視点──────
自身の手のひらにナイフを突き刺し、溢れだす鮮血をなけなしの金で買った紫のペンで書いた魔法陣に垂らす。もちろん金銭的にも痛いし、刺したばかりの手のひらが痛まないわけがない。けれど、それらを上回るほどの高揚感と、全てから救われたかのような開放感があった。ドッドッと跳ねる心臓の音を押さえつけ、私は、家にあった古い魔術書を読む。そもそもなぜ、こんな本が家にあるのか。こんな古びた本に効果など期待できるのか。しかし、そんなまやかしに頼るほど、私は人生に絶望していた。死ぬくらいなら、自分をここまで追い詰めたやつを呪ってやりたい。どうせ死ぬ命。死んだ後、どうなるかなんて知らないし、ただ、無に帰るだけならば私は、復讐してから死ぬ。そんな、たった一つの思いを込めて。
『Используйменяполностью,чтобымоежеланиесбылось!!』
自分でも、これはどういう意味なのかは分からない。けれど、必死に辞書を照らし合わせてかろうじて読み方だけは理解できた。
カッと強い光が私の目を刺激する。反射的に目を瞑り、次に目を開ければ──────魔法陣は光り輝きながら回転し、辺りには地面を覆うように煙が漂う。そして、魔法陣の上には──────怪しい光に照らされた黒い服を身にまとい、短髪の茶髪が風に煽られ、ふわりと巻き上がる。これだけ見れば愛らしい見た目の人だったが、その、禍々しい角が、その鋭く尖った羽が、全てを食べようとするその牙が、そいつが悪魔であることを象徴していた。
「Hello!ナイストゥミートゥー♡初めまして!召喚に応じ、参上したあなたの担当悪魔のれいまりといいまぁーす!」
間の抜けたような、気の抜けた声。不真面目さがいかにも悪魔らしい、なんて悪魔なんてあったことも無いのにそんなことを思う。そもそも、悪魔が存在していたことすら知らなかった。その存在すらも疑ってしまう。いや、普通に考えたらただのペンで書いた魔法陣に、血を垂らし、呪文を唱えただけで召喚できるなんておかしいではないか。幻想だ。そんなこと、わかっているはずなのに。その、天国から落とされた細い糸を掴みとらずにはいられなかった。
「…親が、殺されたの。殺したやつは、証拠不十分でのうのうと生きて。親がいないからと虐められて、叔母には穀潰しだと毎日殴られる…。だから、私を不幸にしたやつ全員地獄より恐ろしいことを味あわせて殺したい!!!」
私が早口で心の内を吐露する。悪魔は愉快そうにニヤニヤと笑うだけで、頷きも、反論も、しない。ただ、話を聞いてくれる。それだけでも、私は嬉しかった。───久しぶりに私の話を聞いてくれる人がいた事が。いつも、私がなにか言う前にやれ飯が、やれ親が、やれ殴らせろ…。私の精神を蝕み、削り、殺される。こんなの、もう耐えきれなかった。
けれど、悪魔が協力してくれるのはどうやら話を聞くことだけじゃないらしい。
「あら〜それは災難ですねぇ…。…右手、私の右手とあなたの右手を交換しましょう。代償は…復讐が終わったらで構いませんよ。」
「え…?いいんですか?」
思ったよりも良心的な契約内容に私は目を見開く。私は、その悪魔の右手を見る。真っ黒な手袋に覆われているが、その鋭い爪は貫通し、黒のマニキュアが塗られていた。人外の血には多量の魔力が流れていると聞いたことがある。私も、その魔力があれば魔法を使ってあいつらに復讐が───?
「…。ぜひ、契約をお願いします。」
「賢い選択だよ。じゃあ、この契約書にサインを。」
そう言って、悪魔はくるりと手を回し、洋紙を取り出した。そこにはたくさんの文字が並べられており、残念ながらそれを読むことは困難であった。いや、別にいい。釜で茹でられようが、針山に刺さろうが、魂を奪われようがどうでもいい。復讐が終われば、私も───。
パシャッ
不意に、水音が部屋に響く。別に、大量の水が零れたような音じゃない。まるで、小さな器の中にある水をぶちまけたかのような音だ。
私にも1部かかるが、ただの水だ、としか思わない。私が、そんなことに思考を回していると、バタンッという何かが倒れる音がした。
そう、悪魔だ。先程まで悠々と翼で自身を浮かばせていたそいつが、倒れたのだ。なぜ?私が疑問に思っていれば、私は、突然地面を顔を擦り付ける。え、突然どうしたんだ?と思い起き上がろうとするが、起き上がれない。私は、痛みを感じながら、首を無理に動かなぜ、こんなにも機能しないのかと疑問を抱かずにはいられない腕を見る。
息が止まる。
腕が、ないのだ。肩から、その先が見つからない。断面からは、筋肉の筋を覆い隠す程の血が流れ出し、血溜まりを作り出していた。
「い、イヤァァアアアアァァアアッッ!!!!」
私は感情のままに叫び出す。自身の腕がない。それは明確な恐怖であり、認知した途端、痛みが脳神経を刺激する。まて、突然倒れた理由って…!!嫌な予感はすぐさま現実を認識させる。ない、無いのだ。感覚が、確かにない。麻痺してしまった、なんて現実逃避は出来ない状況だった。死んでもいいと思った。けど、私なんかよりも死ぬべきヤツらがいるのに。なんで、私から死ぬのだ。ふざけるな。私を殺すなら、私を虐げたやつ全員を殺してやらないと気が済まない…!!!
私は、救いを求めるように悪魔を見る。そこで、私は掠れた声が再び取り戻される。
───先程の悪魔が溶けていたからだ。
その背後には、───もうはるか上に見えるそいつは黒いローブを身にまとっていた。
「こんにちは。悪魔と、悪魔の協力者さん。」
静かだけど、品位のある声。確かな存在感と、不気味な空気に背筋が凍りそうだった。
「人の道を踏み外してしまったあなたも同罪。だけど、あなたの願いもわかる。けど、悪魔を頼るのは賛同できない。」
「デビル、ハンター?」
聞いたことがある。聖職者の人達が悪魔を専門的に狩る存在、デビルハンター。そいつに、目をつけられた時点で私は終わりだった、ということか。…別に死んでも構わない。けど、やっぱり死ぬのは少し怖い。いや、怖い、じゃない。許せない。私が死ぬよりも長く生きたヤツらを───
「?いや。私はこの悪魔を殺したいだけのただの人間だよ。成り代わるために、ね。安心して。あなたが眠りについたら、その幻覚はとける。両足も、両腕も失ってない。だけど、今は眠っていてね。そして───忘れて。これを守ってくれるなら、私はあなたを虐げたやつを全員処分してあげる。これは、契約だよ。」
「…する。」
私は、薄れゆく意識の中、そう呟く。ほぼ、何も聞こえないけれど、なぜだか希望が見えてしまったから。頼るしか無かった。
「契約完了。私───『Iれいまり』の名のもとに承諾しましょう。」
私は、意識を手放した───。
ここで切ります!今回はまさかのモブ視点から!そして、今回のルートはIルート!イビルのIですね!イビルゲッサー、イビルハッカー…アモアスによくあるイビル〇〇のいのIから取りました!てことで悪魔ルートです!
まあ、このルートどうなるのかは私もまだ把握しきれてませんが…お楽しみに!
それでは!おつはる!
コメント
26件
なんか…コメ欄まで含めてめちゃくちゃ笑った
Iれいまり編もおもろいなぁ 続きが予想できん楽しみやわぁ
イビルか〜確かにIがぴったり