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「二度目は、うまくいく」
そう自分に言い聞かせながら、びっしりと解答が書き込まれた答案用紙をリュックに入れたことを何度も確認した。
家を出て、乗り慣れない電車を乗り継ぎ、都心部へ向かう。
「……次は、うまくいくに決まっている」
何度も繰り返しながら足を進め、二度目の試験会場へたどり着いた。
一度目は失敗した。
でも理由は、はっきりしている。
「私は、答えを持ってこなかった」
問題が難しかったわけじゃない。ここは、答えの持ち込みが許されている試験だ。それなのに、以前の私は何も用意せずに来てしまった。
だから、うまくいかなかった。
この日のために用意したのは、公式や解法がびっしり書かれた答案用紙。
あとは、出された問題に合わせて書き写すだけでいい。
受付を済ませ、机に座る。時計を正面に置き、筆箱から鉛筆と消しゴムを出す。そして、用意してきた答案用紙を目の前に並べた。
時間が近づくと、どこからともなく試験官が現れた。受験番号を確認し、一枚の白い紙が伏せて置かれる。
部屋に、じんわりとした静寂が広がる。秒針の音だけが響く、この感じ。
嫌いではないが、好きとも言い切れない。
「それでは、始めてください」
一斉に受験生たちは紙をひっくり返し、ペンを握った。私も同じように紙を返し、ペンを持つ。
そこまでは、順調だった。
だが、なぜか私はその紙を見つめたまま、動けなくなった。そして、思わず呟いてしまった。
「……そうか。私は、問題を用意することを忘れてしまったんだ」
目の前にあるのは、何も書かれていない真っ白な紙。
その白さを見つめながら、三度目は、もうないのかもしれない。
そんな気がしてしまった。