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その朝も、変わらず静かな陽射しが差し込んでいた。ネグ――佐藤はキッチンに立ちながら、ゆっくりと料理を作っていた。
今日は野菜たっぷりのスープと、おかゆ、白身魚の蒸し物。
塩分は控えめで、けれど優しい味になるように、ゆっくりと時間をかけて煮込んだ。
鍋を火から下ろしたあと、佐藤はベランダへ。
そっとドアを開けて、少しひんやりした朝の空気を吸い込んだ。
「……やっぱ、太陽って……」
佐藤は静かに目を閉じて、ゆっくりと呼吸を整えた。
そんな何気ない瞬間が、心地よくて――けれどどこか、まだ胸の奥が苦しかった。
6ヶ月間、自分は部屋に閉じこもっていた。
その間、2人はどれだけ無理をしてくれていたんだろう。
太陽の光をもう一度浴びながら、そんなことをぼんやり考える。
•
部屋に戻ると――
リビングに、すかーが立っていた。
寝癖が少しついたまま、目を細めて。
「……はよ」
その一言が、やけに静かに響いた。
佐藤はふっと笑って、軽く頭を撫でるような仕草をしながら近づく。
「うん、おはよ」
すると、すかーがぽつりと言った。
「……撫でて」
その声は、どこか少しだけ弱くて、頼るような響きだった。
佐藤は迷わず、すかーの髪に手を伸ばした。
柔らかく撫でながら、静かに声をかける。
「起きれて偉いね。頑張ったね……」
指先をゆっくりと滑らせながら、そう言ったあと――
「……ギュー、してもいい?」
何も言わず、すかーはそのまま佐藤に体を預ける。
佐藤は、そっとその体を抱きしめた。
静かに、優しく、無理をかけないように。
「ご飯冷めちゃうから、ね?」
そう言って、ゆっくりと離れる。
•
次は、夢魔の番だ。
佐藤は寝室へ向かい、眠る夢魔の枕元にしゃがみこんだ。
少しだけイタズラな気持ちが湧いて、
そのまま顔を近づけて――
「ざぁこ♡ざぁこ♡よわよわの夢魔くん♡」
メスガキみたいな声で煽る。
その瞬間、夢魔の目がゆっくりと開いた。
「……それ、好きだなぁ……」
眠たそうな目のまま、ふっと笑った。
佐藤は夢魔の手を引きながら、少しだけ苦笑して。
「ほら、ご飯冷めるから。起きて」
「……はいはい」
•
リビングへ戻り、すかーと夢魔が並んで座った。
佐藤は作った料理を並べて、二人の前に置く。
野菜スープ、おかゆ、白身魚――。
体に優しいものばかり。
「食べて」
佐藤は座らずに、ただその様子を見守っていた。
すかーも夢魔も、ゆっくりと箸を取る。
一口食べた瞬間――
すかーが目を伏せた。
「……うま」
夢魔も、少しだけ目を細めて頷く。
二人とも無言で食べ進めていく中、佐藤はただ静かにその姿を見つめていた。
自分は食べないまま、ただ二人の顔を見ながら。
•
食べ終わったあと。
すかーがふっと佐藤を見上げた。
「ネグ、お前も食えや」
「……あとで。大丈夫」
佐藤は静かに笑ってそう言った。