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それから、少しだけ二人の距離が変わった。
仕事中は今までと変わらない。
リュウキはみんなと笑って、いじられて、楽しそうにしている。
俺もいつも通り、少し離れたところからみんなを見ている。
ただ、一つだけ変わったことがある。
俺の視線が、前よりずっとリュウキを追うようになった。
「たっくん今日喋った!?」
誰かがそう言って、みんなが笑う。
俺も笑う。
その向こうで、リュウキが声を上げて笑っていた。
その笑顔を見て、俺も自然と笑ってしまう。
……やっぱり、かわいい。
そう思った、そのとき。
リュウキの隣に別のメンバーが座った。
何気ないことだった。
二人で話している。
リュウキが楽しそうに笑っている。
それだけ。
本当に、それだけなのに。
胸の奥が、ほんの少しざわついた。
「……」
自分でも驚いた。
なんでこんなことを気にしているんだろう。
リュウキが誰と話そうが自由だ。
誰と笑おうが、俺が口を出すことじゃない。
そう分かっている。
なのに。
――俺の前でも、あんな顔するのにな。
そんなことを思ってしまった。
「たっくん?」
気づけば、リュウキがこっちを見ていた。
「ん?」
「なんか今日、静かじゃない?」
「いつも静かだよ」
「いや、いつもより」
「そう?」
「うん」
リュウキはじっと俺の顔を見る。
「……なんかあった?」
「何もないよ」
嘘だった。
でも、こんなことで嫉妬しているなんて言えるわけがない。
俺は年上だ。
それに、リュウキに余計な負担をかけたくない。
「そっか」
リュウキはそれ以上聞かなかった。
でも、少ししてから俺の隣に移動してきた。
「ここ、おる」
「うん」
「たっくんの隣」
「……うん」
それだけで、さっきまでのざわつきが嘘みたいに消えていく。
単純だな、と自分で思う。
「たっくん」
「ん?」
「今日、帰り一緒に帰ろ」
「いいよ」
「あと、コンビニ寄りたい」
「何買うの?」
「秘密」
「また?」
「うん」
リュウキが笑う。
俺も笑う。
それなのに、さっき感じたものは完全には消えなかった。
むしろ、はっきりしてしまった。
俺は、リュウキのことを独占したい。
誰にも渡したくない。
……そんなふうに思っている。
もちろん、そんなことを言うつもりはない。
リュウキにはリュウキの世界がある。
友達も、メンバーも、大切な人たちもいる。
それを俺が狭めたくない。
だから、ただ隣にいられればいい。
そう思っていた。
でも。
「たっくん」
「ん?」
リュウキが俺の袖を引っ張る。
「今日、俺のこと見すぎじゃない?」
「……そう?」
「うん」
少し照れたように笑って、
「なんか恥ずかしいっちゃけど」
と言った。
「ごめん」
「いや……嫌とは言っとらん」
「そっか」
「……むしろ」
「ん?」
「たっくんに見られるん、嫌いじゃない」
今度は俺の方が何も言えなくなった。
リュウキは恥ずかしそうに前を向く。
耳が赤い。
その横顔を見て、また笑ってしまう。
「……また笑った」
「ごめん」
「なんでそんな嬉しそうなん?」
「嬉しいから」
「……そっか」
リュウキも小さく笑った。
その瞬間、さっきまでの嫉妬が少し馬鹿らしく思えてくる。
俺が欲しかったのは、リュウキを誰からも離すことじゃない。
ただ――
リュウキが自分から俺の隣を選んでくれること。
それだけだった。
帰り道。
いつものように二人で歩く。
信号待ちで立ち止まったとき、リュウキがそっと俺の手の甲に指を触れた。
「……たっくん」
「ん?」
「手、繋がん?」
「うん」
差し出された手を握る。
前より自然に。
前より近く。
リュウキが俺の隣で笑っている。
その手を握りながら、心の中だけで思う。
――できれば、この場所だけは誰にも譲りたくない。
でも、その気持ちは言葉にしない。
リュウキが自分から俺のところへ来てくれる限り。
俺はいつでも、ここで待っていたい。
それが俺なりの、独占欲だった。
コメント
1件
このエピソード、めちゃくちゃ良かった…!「たっくん」の独占欲が急に顔を出してきたとこ、自分でも驚いてて可愛いし、リュウキが「たっくんに見られるん、嫌いじゃない」って言ったときの破壊力すごい。手繋ぐシーンも自然に距離が縮まってて、じんわり来た。二人の関係が一歩進んだ感じがたまらない🔥