<嫌悪という名の劣等感>
2024-08-22
「……」
深夜2時半を回る頃。私は少年に言われた言葉が忘れられず、中々寝付けずに居た。
私の本心を突いたような言葉が口にされる度、ただでさえ居心地の悪いあの場所が気持ち悪く感じてしまう。そして、その言葉が頭の中で再生されたのなら、その不快さはさっきの倍だ。
[また助けられなかったの?]
(私は、…助けられなかった?守れなかった?)
その言葉は、どうにも私の心を射抜いているようで射抜いていなかった。確かに私のその心はネガティブな思考から来ている物だが、何故だかすっぽりと当てはまらない。
「 ……助けなかったんじゃないの?」
「私は、自分の意思でアイルを…守らなかったんじゃないの?」
そうぽとりと口にした言葉は、心に深く突き刺さった気がした。 助けれなかったではなく、助けなかった。 守れなかったではなく、守らなかった。
れっきとした自分の意思でやったのだと。そう考えるとするっと認めてしまう。だってそれは、どうしようも無い事実で、反論のしようも無い程の真理だから。
なぜ納得してしまうかは分からない。
_嗚呼、でも。理由なら山ほどあっただろう。
整いすぎている容姿。恵まれた家庭環境。健康な身体。魔法の才能。頭の良さ。器用な人付き合い。誰にでも好かれる人柄の良さ。ずば抜けて良い運動神経。誰が見ても圧倒的な実力。
私に持っていない物を持ちすぎている彼は、私にとってどんな存在?
答えは簡単だ。劣等感を感じざる負えない、嫌悪を向ける最大の対象。
嫌悪という名の劣等感を向ける。その事に罪悪感を感じるかなど分からない。
なんで?私はなんでアイルにこんな感情を抱く?前までこんな気持ち、なったこと無かったのに。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。こんな感情、要らないのに。止まらない。アイルに対しての嫌な思いが溢れ出す。嫌だ。止めたい、でも止められない。気持ち悪い。
[また彼を助けられないかもしれない]
「かも、じゃなくて、私は⋯」
助けなかった。そうでしょ、私。
「⋯あー、でも⋯」
「⋯そっか。アイルが居なくなれば、私のことをもっと…もっと、皆に見てもらえる、注目してもらえるのかな…」
罪悪感はもう無いに等しい。
承認欲求の現れとも言える此の感情に、なんと名前を付けようか? 少なくとも憧れでは無いのは分かる。そんな綺麗な感情だったなら、どんなに良かったか。
「⋯今日は早く寝よう」
自分の感情に整理が付かなくなって、頭がぐちゃぐちゃになって行く。
その感覚が嫌で、私は気分転換として、今日はなるべく早く寝ることにした。
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