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#シリアス
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ひまりが中高一貫校での生活にも慣れ、成績も安定してきた頃。
彼女は進路希望調査票を手に、俺の前に座った。
そこには、今の学校の高等部ではなく
県外にある超難関の「医大付属高校」の名前が書かれとった。
「パパ……私、もっと本格的に医学を学びたいの。ここを出て、寮に入って、本気でお医者さんを目指したい」
寮生活。
それは、ひまりがこの家を
この事務所を、そして俺の元を離れることを意味しとった。
和幸や長治たちは、「お嬢がいなくなるなんて耐えられません!」と泣き喚いたが
俺は静かに眼鏡を外し、ひまりの真っ直ぐな瞳を見つめ返した。
「和幸……。ひまりが行きたいと言うとる学校の周辺の治安、それから寮の管理体制、全て調べろ。…ただし、ひまりには一切干渉させるな」
「長治。……お嬢が向こうで困らんよう、最高級の参考書と、向こうの特産品リストをまとめとけ」
「……行け、ひまり。ワシの背中は、もう見んでええ。お前は自分の信じる道を、その足で歩いていけ」
俺の言葉に、ひまりは「パパ……ありがとう!」と泣きながら俺に抱きついた。
その温もりを、俺は一生忘れることはないやろう。
数ヶ月後
ひまりは無事に出身校を卒業し、新しい空へと羽ばたく日を迎えた。
駅のホームで、大きなトランクを抱えたひまり。
俺はあえて、いつもの黒スーツではなく
ひまりが誕生日にプレゼントしてくれた少し派手なネクタイを締めて見送りに行った。
「パパ、たまにはちゃんと野菜も食べてね? 和幸さんもパパのことよろしくね!」
「へいッ!お嬢、お任せくださいッ!!」
和幸たちが駅のホームで一列に並び、深々と頭を下げる。
周囲の客が驚いて道を空ける中、ひまりは苦笑いしながら列車に乗り込んだ。
列車のドアが閉まり、ゆっくりと動き出す。
ひまりが窓越しに、ちぎれるほど手を振っている。
俺は、込み上げてくる熱いもんを堪え、精一杯の声を張り上げた。
「……ひまりィッ! 辛くなったら、いつでも帰ってこい! お前のシマは、このワシが一生守ったるからなァッ!!」
列車が見えなくなるまで、俺はずっと立ち尽くしとった。