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呼ばれた。
腰掛けていた椅子から立ち上がっていつもの靴の踵を少し直してから診察室へ行く。
暫く薬を続けても大丈夫だったか、
他に聞きたいことは無いか、等色々質問に答えた後 診察が終わった。
早いうちに薬を受け取って支払いをしてから急いで帰らないと。
自分の住む所からは病院が少し遠く、 車でも時間がかかる方だ。
できるだけ早めに帰って家で 安静にしていないと。 病院だって空いてる訳でもないから精神的にも肉体的にも疲労感が上り詰めるだけだ。
薬の処方箋を貰い金を払う。
機械的な動作をする相手に少し心にくる。
本来、それが普通なんだけど。
さて、帰って飯食って寝るか。
ただでさえゲームしてても眠ってても何も楽しくないんだから疲労感で身動き取れなくなる前にさっさと帰って何も考えないようにする以外ない。
水とカフェオレを買って病院から出る。
パッとしない天気を見ながらケツポケットに指を突っ込んだ。
午前10時43分、霧がかかってて気にならない程度の雨と風の冷たさを体で感じた。
結局、ケツポケットにあると思っていた鍵は上着の内ポケットの中だった。
鍵を挿して車のドアを開ける。
以前気になって買った香水のどぎつい匂いがひたすら残っている。金木犀の香りがするハンドクリームを使ったり換気をしたりで香水の匂いをかき消そうとしたが失敗した痕跡、という匂いがする。
薬を飲んでから来たものの、やっぱり病院で時間が結構かかったからか薬の効果が少しずつ薄れていくような感じがした。
とりあえず薬は帰ってから飲む事にして、車のエンジンをかけてゆっくり発進させる。広くもない道を抜けて、本屋やドラッグストアを通り過ぎて信号を待つ。
歩行者はいない。
なんの為に待つんだか。
指でハンドルをひたすらトントン音を立てて青色から黄色、赤色、黄、赤
と信号が変わったのを見てアクセルを踏む。コンビニがあったので弁当と煙草を買ってから家の近くまで帰ってくる。
家の近くが何か変わっていた。
そこら辺にお菓子が落ちている。
ほら、絵に書いた時のようなベリーのジャムが付いたクッキーとか、可愛いキャンディとか。理由はとにかく分からない。
家に着くとそこには遊園地があった。
ドアを開けて奥に行くとそこには熊のマスコットキャラクターがいた。
なんだか嬉しくなって熊のマスコットキャラクターに抱きついてみた。暖かくてくすぐったくて。なんだか夢を見ている気分だった。体が少し動きにくいけど、とにかく楽しい。これまでに無いくらい。マスコットはひたすら手小さい旗を持って振っていた。お腹からはイチゴのジャムが溢れてくる。興奮していたからか息は苦しくなる。なんだか腹部が生暖かい。
吐き気がする。
鋭い痛みがひたすら体を襲う。
声が出ない。
時計の音がカチ、カチと耳に響く
午後2時50分。
あ、違う。
ここ、
遊園地じゃない。
これは熊のマスコットキャラクターじゃない。手に持っていた旗は
病院にて
「ねぇ知ってる?あの統合失調症の患者さん、家で亡くなったんだって。」
「えぇ?怖い…ついこの前薬を貰いに来たよね?」
「お腹を滅多刺しにされたまま発見されたんだって。」
「何それ。殺した人は逮捕とかされたの?」
「それが見つかってないんだよ。
それにその患者さん、
お腹を刺されて内蔵が飛び出ててもね…
ずっと笑顔だったんだってさ。」