テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「千冬兄、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
ある日突然人類に蔓延した、『超能力』。
いつしか超能力人口が増え、それは能力、と呼ばれるようになった。
僕の妹は、俗に言うその発現者である。
発現者である者しか通えない学園『王立セルヴィア学園』。
そこに、当たり前のように通っていく。
──これは⋯⋯能力はあるね、ただ⋯⋯特殊型だ、見つけるのに苦労するだろうね
いつしかの、能力検査を思い出す
「行ってきます」
誰もいない家に要らない言葉を投げつけ、バイト先に向かう。
僕のバイト先は『トンディア北区能力開発センター』。
非発現者が自分の能力を見つけるために(もとい、社会的に有利な立場に立つために)利用する施設だ。
「お先にあがります」
「おう、お前今日もか?」
そう、僕がこのバイト先を選んだのは、紛れもない能力発見のためだった。
業務である器具の設置や整備のシフトを終え、帰る前に能力を試す。(もっとも、今まで能力は現れなかったが)
それが、僕の日課だった。
炎の生成、水の操作、土の硬さを変える、変身、巨大化、瞬間移動。
「今日もだめか⋯⋯」
思いつく限りの能力っぽいことを試してみるが、だめだ。
とぼとぼと帰宅し、自分と妹と母、三人分の食事を作る。
そしてベッドに横たわる。
天井にぶら下がる、照明の紐。
「これを引っ張るくらいの能力でもいいからさ⋯⋯」
無謀だと分かりつつも、遠隔で引っ張る動作をしてみた。
カチッ
部屋が、暗くなる。
「⋯⋯は?」
この日から、僕の人生は変わり始めた。