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―ああっ助かった・・・!―
二人は内心で安堵したが、その安堵は一瞬で吹き飛んだ
ズン!!「 最後の質問です!」
浜崎の声がまるで雷鳴のように響く
ズバリッ!「今のお二人の『夜の頻度』は? 一週間に何日?」
―ええっっ?よ・・・夜の頻度!こんな質問があるなんて聞いてないわ! ―
一瞬で桜の頭の中で警報が鳴り響いた、ジンもまた目を見開いて桜を見つめている、明らかに「聞いてないよ!」と目で訴えている
「どうしました? 愛し合って結婚したお二人なら、答が一致して当然ですよ?」
キラリと浜崎の眼鏡が光った、その奥の目はまるで獲物を仕留める鷹のようだった
「いいですか? お二人同時にお答えください、サン、ハイッ!」
「週に三日!」
「毎日!」
二人の声がずれて、部屋に重い沈黙が落ちた、ハッと二人はまたお互いの顔を見た!「毎日」と答えたのは桜だった
カァ~・・・「え?やっやだ・・・私ったら・・・」
ガタンッ!「すいません!僕が嘘をつきました、毎日!毎日なんです!ちょっと遠慮して言いました、彼女の方が正直ですね!いやぁ~僕って性欲が強くってぇ~お恥ずかしながら・・・」
慌ててジンが立ち上がって調子を合わせる、桜は両手で顔を覆ってうなだれている、彼女の顔も耳も手の甲も真っ赤になっている、まるでトマトだ、今にも恥ずかしさで泣き出しそうになっている
体が熱くてたまらない、ここの空調はどうなっているんだ、汗が止まらない、ジンは思った、理不尽だ、自分の社会的立場を守るために、策略を巡らせなければならない現実に腹が立ってならない
こんなに自分に健気に尽くしてくれている女性に小細工への協力を貰い、自分は信用を保とうとしている・・・
顔をトマトの様に染めて彼女が今自分の横にいるのは、会社の社員として礼儀を尽くしてくれているからだ、決して自分が求愛し、相思相愛ではない・・・
自分が彼女の愛を勝ち取ったからではないのだ、感のするどい浜崎がじっと二人を睨んでいる
ジンは思った、やっぱりこの計画はうまく行きっこない・・・
さらに浜崎がどこか書類の不備がないか念入りに書類をチェックしている、在留資格変更許可申請書を読んでいる時に浜崎の眉毛がピクリと上がり、額の皺が三本から四本になった
「フム・・・ちょっとこちらの項目のビザ更新期限にがひっかかりますな、WaveVibeのCEOとして経営ビザが必要なタイミングでの結婚・・・まさか偽装ではありませんかな?」
桜の心臓がギクッと再び跳ね上がった
「ぎ・・・偽装なんて! 違います!」
桜は慌てて口を開き、左手のティファニーの指輪を掲げた
「ほら、見てください! この婚約指輪!素敵でしょ! 偽装だったらこんな素敵なの買ってもらえませんよね!」
だが、浜崎は目を細めるだけだった
「指輪は金で買えますが愛は証明が難しいですよ、もし偽装結婚なら・・・」
彼はまずジンをビシッと指差した
ビシッ!「(刑法第157条)公正証書原本不実記載等罪で、パクさんは国外永久追放!」
ビシッ「そしてあなたは重罪犯! 罰金300万円、懲役5年ですよ!」
続いてビシッと浜崎が桜を指さした
「え・・・永久追放・・・」
さーっと桜が青ざめて呟いた
「懲役・・・5年・・・」
続いてジンも哀れっぽく呟いた、なんと・・・そんなことになるなんて知らなかった・・・
ジンは思った、この計画を甘く見過ぎていた、そもそも嘘をつくのは嫌いだ、役所を欺くなんて今まで考えたこともなかった、真面目一本で生きて来たのに・・・
浜崎は依然として不信感も露わな仏頂面をして自分を見ている、今の彼は猜疑心の塊で、自分達を重罪犯と決めつけている
「今日の所のヒアリングはこれで終わりです・・・しかしまだ解せぬ所がありますので、これから一ヶ月間、あなた達の生活を調査、監視いたします、審査結果が出るまでは、ビザ発行は仮申請発行という所にしておきましょう、さらにはお二人の通話記録も場合によっては調べさせて頂きます、さらに会社の同僚・・・ご近所への調査など・・・お二人が本当に愛し合って余生を誓い合って結婚したのか、それとも何か営利目的があるのか、必要な事は全てやらせていただきます」
ジンは冷静に頷くが、内心では焦りが募ってしかたがない、浜崎がふぅ~っとため息をつき、少し表情をやわらげて言う
「しかし・・・私も鬼ではありません、もしこの場で・・・ビザ発行前に真実を話して下されば調査はしなくて済みますし、この可愛らしいお嬢さんに手錠をかけなくて済みます」
ガチャリと浜崎が立ち上がってドアを開けた、その瞬間外の方からなにやら騒がしい声がした
「離して!離してよっ!なんであたしが国外追放なんかされるのよっ!この頭でっかちの役所野郎どもーーー!!」
ドアの外では恰幅の良い外国人女性が警備員相手に大暴れしていた
また一人外国人が手錠をかけられて警備員に担がれて行った、それを見た二人はさらに青ざめた、おどしに充分効果があったと判断した浜崎が、ドアを閉めてゆっくりと椅子に座り、脚を組んだ
「さぁ・・・あの人達の様になりたくなければ、真実を話してくれますね?」
浜崎がジンに言った
―ダメッッ!ジンさん!本当のことを言わないでっ!!―
桜がパニックになって口をパクパクして身振り手振りでジンに合図を送っている
しかしジンはそんな桜など見向きもせず、じっと床を一点見つめ、苦虫を噛み潰したような顔をしている、顔は青ざめ、額にはあぶら汗がにじんでいる
―彼は本当に真実を話すつもりなの?―
ズズイッ「さぁ!さぁ!」
浜崎の唸るような声でジンに圧をかける
ズイッ「真実は?お答えください!パクさんッ!」
やがて彼が口を開いた
「・・・真実は・・・」
・:.。.・:.。.