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「へぇ〜いいねこの部屋。駅から程よくて窓から俺が住んでいるマンションが見える」


「てか、凌太のマンションはかなり離れていても見えるでしょ」



「あのタワマンですか、それなら乗り換えも一回ですよ」と営業のお兄さんも何故かのってきた。


「凌太のマンションはどうでもいいけど、会社からは一本だし、ほぼ条件はクリアしてるのよね」


営業くんは満面の笑みで答える。

「オートロックで3階角部屋ですからね」


うーん、立地もいいし1LDKで広さも一人で住むならベストよね。

残業してもすぐに帰れるから睡眠時間をしっかり確保できる。

だけど一旦持ち帰ろう。

一度冷静になって住みたいと思って申し込むことができればいいと思うし、もし他の人が契約してしまったときはこの部屋とは縁がなかったんだ。

正人と住んでいたマンションは、家賃と広さを重視したため、私も正人もどちらの仕事場にも遠くもないが近くもなかった。

今後、子供が生まれた時を考えて広くて安い場所に決めたから。

どうせ一人なのだから、納得のいく場所をさがそう、今現在住むところがないわけじゃないのだから。


「部屋探しは始めたばかりなので、一旦保留します」


営業のお兄さんは似たような物件があればメールで連絡してくれるということで別れた。



「俺と一緒に住めば通勤が楽だろ?」


「どうして凌太と一緒に住むとかいう話になる訳?」


二人で電車に乗り凌太のマンションがある街に向かっているが、決して部屋に入るためではなく食べるところがたくさんあるためだ。

夕食には少し早いが席が仕切られていて個室に近く小皿料理の中華で気楽に食事ができるお店に入ると凌太は店員に名前を告げた。


「予約してたの?」


「さっきね、内見が終わりそうだったから」


「気がきくのね、こう言うのがモテ男のスキルなのかしら」


「俺が気を使うのはビジネスパートナーと瞳だけだよ」


はいはいと適当に話を流して席に着いてから、凌太のおすすめ料理を注文してもらいお手洗いに行ったその帰り、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ご馳走様でした部長」


思わずレジから死角になるであろう場所からそっと覗いてみるとスーツ姿の里中くんが立っている。

部長って誰のことだろう?そんな風に考えながら見ていると部長と呼ばれた男性がこちらを向きそうになった時に「また何かありましたら連絡をいたします」と里中くんが声をかけてくれたおかげで目が合うことは避けられた。


隠れるのもおかしい気がするけど、本能的に見つからない方がいいと思った。

総務部長と新人が日曜の夕方に二人で食事とか絶対に訳ありだと思うから見たことも忘れることにして中華を楽しんだ。


レンゲに小籠包を乗せると箸で少し切り込みを入れてスープが出てきたらそれを少しすする。

「最高」

タレにつけた生姜を小籠包に乗せて一気に口の中に投入する。

「おいしー」


「瞳の食べてる姿を見ると癒されるよ」


「どうせ食いしん坊です。エビシュウマイも空芯菜も美味しいけどやっぱり小籠包が最高」


「来週、仕事で香港に行くんだが、さすがに小籠包をお土産と言うわけにはいかないし」


「鼎泰豊、行きたいな〜」


「日本にもあるけど本店のある台湾で食べるのがいいよな。じゃあ今度二人で台湾に行こう」


「何で凌太と行くわけ?恋人でも無いんだから里子と行ってくる」


「じゃあ、恋人になればいい訳だ」


「本当にチャラいわ。そんなことばっかり言ってるといつか刺されるよ」


「瞳にしか言っていないよ」と言う言葉を無視して〆にチャーハンを食べて手を合わせてごちそうさまをするとバッグから財布を取り出す。


「半ば強引に付き合ってもらったから俺にご馳走させて、で、次回は出してよ」


「なんか食事会が延々続いていく感じ」

でもそれが嫌じゃないと思っているのは危険信号な気がする。


「それが狙いだから。お土産を買ってくるから帰国したら会おう」


「じゃあエッグタルトが食べたい」


「了解」


駅まで一緒に歩いて行き改札の前で別れた。凌太が住んでいるマンションはことのほか駅から近かった。


エッグタルトは久しぶりだ。ちょっと嬉しいかも。 昨日は会えなくてがっかりしてしまったのに、今日は会えて浮かれてしまった。

いかんいかん!


座席の前の吊り革につかまっていると目の前の人が席を立ったため、入れ替わるように私が座りスマホを手に取ると里子から通知が入っていた。



→[甲斐くんとはどう?]


どうって言われても、今の二人は友人としか答えようがない。


[一緒にご飯を食べる友人だよ]←


→[松本ふみ子って知ってる?]


[誰それ?]←


SNSのリンクが送られてきてリンク先をタップするとfumingというアカウントに繋がったが、その人のプロフィールを見てもピンとこない。

アイコンにはクローバーに似たハート型の3枚の葉っぱに黄色い花の写真が使われていた。

投稿されている写真も景色やランチでさらにスクロールしていこうと思っていると里子からメッセージが届いた。


→[フォロワーに知り合いがいたから聞いてみたら、カラオケにきてた]


メッセージのあとにすぐ画像が送られてくる。

正人の不倫がわかったときにカラオケルームで集まった時の写真で数人が写っている中に赤い丸で囲まれた女性、あの日凌太の隣に座った人だ。

嫌な予感がする。


[凌太と仲が良さそうだった人]←


→[わたしもそう思った]


[彼女がどうしたの?]←


複数のスクショ画像が送られてきてタップをして大きく表示すると息をのんだ。



【旦那に浮気されて離婚した途端、元カレのセフレになるとか堕ちっぷりがハンパないんですけど】

【大学時代の仲間で元カレを呼び寄せるあざとい女がいる】

【大学卒業して捨てられたのにセフレでつながろうとする残念女】


松本ふみ子の投稿に【その女も不倫だった可能性が高い件】だの【あそこでつながる仲】だの【彼のアレが忘れられなかった】だのと言いたい放題のツリーになっていた。


これって私のことだよね?


学生時代にもあった凌太のセフレだった人からの中傷。


[なんとなく関係ありそうだと思ってたけど、きっと凌太とは深い中になってるよね]←


→[そう思うよ。たぶん松本ふみ子こそセフレだと思う]


[だよね]←


はぁ

思った以上に大きなため息だったのか隣の人がガン見していた。

小さくお辞儀をしてから、はたと気がついて停車駅の掲示板を確認すると、次は乗り換えの駅だった。


[そろそろ駅に着くから。教えてくれてありがとう]←


→[いつでも連絡して]


大学の時からずっと助けてくれた。


[ありがとう]←

と返信をしたところで電車のドアが開いた。



やっぱり関係があるんじゃない!


さっきまでの楽しい気分が一気に下降した。

小田原城のあの時みたい。



乗り換えの電車に乗り込むとあの黄色い花が気になった。

クローバーみたいな葉っぱはとても可愛くて、“黄色い花”“ハート型の葉っぱ”と入力して検索するとカタバミという花だとわかった。

写真を見るとよく道端やコンクリートの隙間に生えているあの花だと分かった。

デザインに使えそうかもと思い、カタバミの花で検索したときに花言葉というワードが出てきて調べてみると5月20日の誕生花であることがわかった。


5月20日


凌太の誕生日だ、そして花言葉を見てみると


「喜び」

「輝く心」

「母のやさしさ」


だった。

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