テラーノベル
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「んん…。」
寝苦しさから目が覚める。
一番に感じたのは、暑さだった。クーラーは付いているはずなのに、なんでこんなにじっとりと暑いのか。
次に感じたのは喉の渇きだった。水冷やしてたっけ。やっぱり夏でも乾燥しちゃうから、加湿器を付けよう。元貴がおすすめしてくれたモデルまだ売ってるかな。
でもまずは、同棲中の恋人に確認しなきゃ。
どうせい…?あぁ、同棲か…。
そこでやっと意識がはっきりとし、背中の違和感の理由を理解した。クイーンサイズよりもう少し大きめのベットなのに腰に腕を回され、隙間もなくぴったりと寄り添われている。僕と同じくらいの身長なのに、彼も暑くて仕方がないだろう。更にお腹が弱い僕のためか、わざわざが腰の当たりだけ冷感素材の薄手の布団が掛けられている。寝息が耳元で聞こえてちょっとくすぐったい。
「わかい、ちょっとごめんねー…」
そう小声で呟く。愛しい君は顔を顰めて少し力を強めたが、起こさないようになんとか抜け出し、月明かりの中おぼつく足でドアまで辿り着く。
「りょ…ちゃ。こっち、むいて…?」
ドアノブに触れかけた手が止まる。彼のいつもの寝言だ。だが夢にまで僕が出てきていることがどうしようも無く嬉しい。こんな些細なことだけど、僕の心はゆっくりと満たされていく。
1度戻って、お腹に布団を掛けてあげた。すると冷たかったからかそれに満足そうに君は抱きついた。もやり、と胸の辺りに違和感を覚える。そう言えばこれは若井が欲しいって言ってたっけ。お忍びで2人で寝具を見に行った時に、「これで涼ちゃんを布団越しに抱きしめられるじゃん」なんて喜びながら。
夏は大好きだ。
全部をどうでも良くさせる日差しも、君を儚く反射させる海も、夕方の風呂上がりのなんとも言えない多幸感も。みんなは嫌がる蝉の声すら、僕は聞こえてくると子供みたいにわくわくしてしまう。
でも、汗臭さとか暑いからって大好きな人にくっつくのが面倒臭く感じられてしまうのはやっぱり寂しくて。こんな布団にすら嫉妬してしまって。
布団1枚挟まれるだけで関係が変わったりしない。信頼が揺れ動く訳でもない。それでも、そうだとしても…
ぶんぶんと頭を横に振り、部屋を出た。考えないようにしよう、そうすれば夏をもっと楽しんで好きになれる。
クーラーをつけていないリビングは寝室と比べられないくらい纏わりつくように暑い。時間を見ると2時30分。丑三つ時じゃないか。素早くコップを手に取り冷蔵庫を開く。そして冷えたペットボトルの水を半分ほど注ぎ、一気に飲み干す。芯から熱が下がっていくようで少し気分がすっきりした。
コップを洗って部屋に戻ると、若井がベットの上で正座をしていてうわっと驚いてしまった。こちらの気配に気が付いた君は、開いてない目を擦りながらもう片方の手でぽんぽんと隣を示す。なんだろう、どきっと近づく。
「りょうちゃ、どこいってたん…?」
同じように座ると抱きついてきてそう言う。嬉しいはずなのに、やっぱり色々気にしてしまって単純に喜べず、別の意味で心臓がうるさくなる。
「…水飲みに行ってた。ごめん、起こした?」
そう問うと、ううん〜と眠たげに応えられる。そのままぐいぐいと押されてベットに2人で横になった。すぐ目の前に顔があり、ちょっと照れてしまう。
「りょうちゃんのにおい、すきー…」
そう言って唇にちゅ、と口付けられる。
わ、くちびるつめたーい、と笑う。
普段から感情を表に出しやすい若井だが、寝ぼけていつもより更に甘えたになっている。そんな君に何時までもどきどきされられる。
「僕も、大好きだよ」
そう言うと嬉しそうに密着してくるから、思わず尋ねてしまう。
「この時期、暑くない…?嫌じゃないの?」
「んー…?まあねぇ。あついけど、おれはねんじゅうりょうちゃんにくっついてたいからいいの。」
と言って微笑んだかと思うと、十数秒後には腕の中ですうすうと寝息を立て始める。
ああ、もう。本当にずるい。
こんなことをわざわざ聞かないと安心できない僕でも、包み込んで許して、愛してくれる。そんな優しさの権化みたいな彼が大好きだ。
今度は2人で一緒に布団に包まれて、さっきより涼しく感じる空気の中僕も眠りについた。
◻︎◻︎◻︎
読んで下さりありがとうございます!
夏のうちに、夏のお話を消化しておかないと…!という思いからまたも寄り道をしてしまいました。夏は見えない速さで進んでいきますからね!(新曲の受け売り&言い訳)
りょつぱはもりょきと違って、どちらかというとすれ違いが多く喧嘩してるイメージとか中々湧かなくて…。結局甘々になってしまいますね。もちろん平和が1番ですが、いつか書けたらなぁとは思っています。
次も是非読んで頂けると嬉しいです。
コメント
2件
甘々な夏の💙💛、最高です❣️