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「……バカじゃないの? 何考えてんだよ。お姉さんの仕事、あんなに頑張って……」
「頑張る場所を間違えてただけよ。……あんたを犠牲にして守るようなキャリアなんて、1円の価値もないわ」
私は光の目の前にしゃがみ込んだ。
「……だから、出て。コンテスト。……そこで最高に面白い漫才して、私を笑わせてよ。……そうすれば、私のしたことは間違いじゃなかったって、証明できるから」
光はしばらく黙っていた。
それから、ゆっくりとネタ帳を閉じ、私の目を真っ直ぐに見つめた。
「……わかったよ。お姉さんがそこまで言うなら、滑るわけにはいかねえな」
光の手が、そっと私の頭に乗せられた。
まだ「お姉さん」と呼ぶ距離感。恋愛なんて呼べるほど、甘い空気じゃない。
でも、そこにはお互いの人生を背負うような、重たくて確かな「熱」があった。
「……日比谷くん。あんた、絶対に売れてよね」
「……当たり前だろ。お姉さんを養えるくらいには、稼いでやるよ」
光のその言葉に、胸がドクンと跳ねた。
最後のは、いつもの冗談だったのかもしれない。
でも、私の心臓はその言葉を、どんなプロポーズよりも切実なものとして受け取っていた。