テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
コンテストを三日後に控えた夜。
私の部屋の壁越しに聞こえてくるはずの、光のネタ練習の声が聞こえなかった。
いつもなら、光がボソボソと呟く独特のリズムが、隣室の私の耳に心地よく届き、それがいつの間にか私の安らぎになっていたのに。
今夜は不気味なほど、壁一枚向こう側が静まり返っている。
(……追い込みで疲れちゃったのかな)
そう思いながら、私は会社から持ち帰った資料に目を落としていた。謹慎中とはいえ、自宅でできるサポートを模索していたけれど、どうしても集中できない。
ふと耳を澄ますと、壁の向こうから「コン、コン」と、乾いた咳の音が聞こえてきた。
(日比谷くん……?)
胸をざわつきが襲う。私はペンを置き、部屋を出て隣のドアの前に立った。
「……日比谷くん? いる?」
ノックをしても返事はない。ただ、荒い吐息の音だけが漏れている。
私は意を決してドアノブを回した。鍵はかかっておらず、部屋の中は嫌な熱気に満ちていた。