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———-いつものようにビルの間の路地の中を歩く。
今日は食べる物ねぇな。仕方ねぇ、近くで珈琲でも買うか。
すぐに、くるりと後ろを向き、路地の外へと歩き出す。
すると突然、甘くどこか懐かしい匂いが鼻を突き抜ける。
なんだこの匂い、いつものヤツとかとは違う。
すっごく美味しそうだ。口角が不意に上がり、口の端からぽたぽたと唾液が滴る。匂いの元へと向かう為に走り出す。
荒くなっている息を整えようと少し走るのをやめる。
グチャッと物が潰れるような音が聞こえた。その正体を知りたく立ち止まっていた角から顔を出す。「ッ……!!!」喰種がクインケに潰され、赫子がドロドロと血溜まりを作っている。
おい嘘だろ、捜査官(ハト)が居んのかよ。
今はこの惨状に恐怖している場合では無い。自分の本能が言う「ここに居ては死ぬ」と、さっきまでの疲労なんか気にせず来た道を走って戻___
「あれ?なんでこんな時間に一般人が?」「………」
少しだけ振り返り相手の顔を確認する。いや前髪特殊すぎだろ!オシャレか?!
無駄に緊張感が抜けてしまう。そんなくだらない事を考えていると、前髪が特殊な人が喋る。
「さて、君は人かな?それとも…」
──喰種かな?
ヤバい。ヤバいヤバい…これは少しでも疑問を持たせたら負けだ。
「ハハ…ヤダなぁオニーサン。俺は喰種なんかじゃ無いよ。」
少しでも普通に振舞おうと、前髪が特殊な人と向き合う形にする。ニッコリと試しに微笑んで見た。
「嗚呼、確かに君は喰種では無さそうだね。」
「そりゃーそうでしょ、〝人間〟だから。」
「へぇ、まぁもうこんな夜遅くに出歩くのは危険だから早く帰りな。」
「うん、そうさせてもらうよ。」
手を相手に振り、来た道を戻る。はぁ……バレなくて良かったぁ、でもなんか前髪特殊なヤツ俺と歳が近いような…まぁいいか。
翌日、学校で驚きのあまり叫ぶとは…この時は考えもしなかった。