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#⛄️
kaede🍁
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最初の部屋を脱出した二人は、並んで次の扉を開けた。
中にあったのは。
さっきより少し広い部屋。
本棚。
テーブル。
いくつもの引き出し。
壁には時計や絵が飾られている。
阿部は部屋を見回した。
「また謎解きかな。」
「多分。」
目黒が扉を確認する。
やはり。
入ってきた扉は開かなくなっていた。
「戻れないね。」
「……進むしかないか。」
二人は手分けして部屋を調べ始めた。
___________
壁に掛けられた時計。
本棚に並ぶ数字。
鍵のかかった引き出し。
一つずつ謎を解いていく。
不思議だった。
「目黒くん、そこ三番目の本取って。」
「これ?」
「うん。多分その裏。」
目黒が本を抜く。
そこには小さな鍵。
「すご。」
目黒が笑った。
「あべちゃん、こういうの得意なんだね。」
「みたいだね。」
「……みたい?」
「だって自分でも分かんないし。」
「そっか。」
一瞬だけ。
目黒の表情が曇った気がした。
「……?」
「どうしたの?」
「何でもない。」
まただ。
阿部は少し前から気付いていた。
目黒は。
何かを知っている。
でも。
言わない。
___________
いくつかの謎を解いたところで。
テーブルの引き出しが開いた。
「あ。」
中に入っていたのは。
一冊のアルバム。
「これも謎解きに使うのかな。」
阿部が取り出す。
目黒が隣から覗き込んだ。
表紙には何も書かれていない。
阿部は開いた。
「……え?」
一枚目。
写っていたのは。
自分と。
目黒。
「これ……俺たち?」
「……うん。」
写真の中。
二人は楽しそうに笑っている。
顔を寄せて。
明らかに。
今日初めて会った二人の距離ではなかった。
阿部はページをめくる。
旅行。
食事。
誕生日。
何気ない日常。
どの写真にも。
自分と目黒がいる。
「……何、これ。」
さらに。
ページをめくった。
そこで。
手が止まった。
「……。」
真っ白な衣装。
花。
二人の左手には。
指輪。
そして。
幸せそうに笑う。
自分。
「……結婚式?」
阿部の声が震えた。
目黒は答えない。
「目黒くん。」
「……。」
「これ、俺?」
「うん。」
「隣にいるの……目黒くんだよね?」
「うん。」
阿部は目黒を見る。
怖かった。
「どういうこと……?」
目黒は。
悲しそうな顔をしていた。
その顔を見て。
阿部は悟った。
「……知ってるの?」
「……。」
「目黒くん。」
「知ってる。」
「……っ。」
阿部は反射的に後ろへ下がった。
「じゃあ何?」
アルバムを握る。
「俺たち……。」
喉が震える。
「結婚してるの?」
目黒は。
静かに頷いた。
「してる。」
「……。」
阿部は言葉を失った。
「俺とあべちゃんは結婚してる。」
「……嘘。」
「嘘じゃない。」
「だって!」
阿部はアルバムを開く。
確かに。
そこにいる。
目黒と自分。
「覚えてない……。」
何も。
一つも。
「こんなところ行った記憶ない。」
ページをめくる。
「これも。」
また。
「これも知らない。」
結婚式の写真。
「これだって……。」
知らない。
何も。
思い出せない。
写真の自分は。
こんなにも幸せそうなのに。
「なんで……?」
自分の人生なのに。
知らない。
まるで。
そこだけ綺麗に。
記憶を抜き取られたように。
「……怖い。」
アルバムを持つ手が震える。
目黒が近付く。
阿部は反射的に一歩下がった。
その瞬間。
目黒が止まった。
「……ごめん。」
それ以上。
近付いてこない。
「今は触らない方がいい?」
「……。」
阿部は答えられなかった。
目黒は少し離れた場所にしゃがむ。
目線を合わせるように。
「あべちゃん。」
「……。」
「怖いよね。」
優しい声だった。
「俺だけ覚えてて。」
「あべちゃんが何も覚えてないなら。」
「俺のことだって怖いと思う。」
「……。」
「だから、無理に思い出さなくていい。」
阿部が顔を上げる。
「でも……。」
目黒は小さく笑った。
「俺は覚えてるから。」
「……。」
「あべちゃんのこと。」
「ちゃんと覚えてる。」
その言葉に。
なぜか。
胸の奥が痛くなった。
知らない人のはずなのに。
目黒の声を聞いていると。
安心する。
「……目黒くん。」
「うん。」
「俺……本当に目黒くんのこと好きだった?」
目黒は少し笑った。
「うん。」
「すごく?」
「それは俺が言ったらずるくない?」
「……何それ。」
「でも。」
目黒は阿部を見つめた。
「俺は、あべちゃんのことすごく好き。」
「……。」
「今も。」
阿部は目を逸らした。
知らない。
覚えていない。
なのに。
少しだけ。
泣きそうになった。
___________
アルバムには。
次の謎を解くための数字も隠されていた。
二人はそれ以上、結婚について話さなかった。
今は。
脱出する。
それだけに集中することにした。
最後の暗号を入力する。
ピッ。
カチャ。
「……開いた。」
阿部が目黒を見る。
「行こう。」
「うん。」
目黒が先に扉を開けた。
そして。
二人とも。
動きを止めた。
「……え?」
阿部は目を見開く。
次の部屋。
そこは。
リビングだった。
ソファ。
ローテーブル。
テレビ。
ダイニングテーブル。
キッチン。
棚に並んだ食器。
観葉植物。
生活感のある。
ごく普通の家。
なのに。
阿部の胸が。
急に苦しくなった。
「……ここ。」
知らない。
はずなのに。
知っている。
そんな感覚。
阿部はゆっくり部屋へ入る。
目黒は。
入口で立ち尽くしていた。
「……目黒くん?」
振り返る。
目黒の顔から。
さっきまでの余裕が消えていた。
「どうしたの?」
「……ここ。」
目黒が呟く。
「俺たちの家。」
「……え?」
阿部はもう一度。
リビングを見る。
自分たちが。
暮らしていた家。
目黒は。
全部覚えている。
そして。
阿部には。
何一つ思い出せなかった。
ただ。
不思議なことに。
阿部の足は。
考えるより先に。
リビングの一角へ向かっていた。
「……?」
棚の前で止まる。
理由も分からないまま。
一番上ではなく。
下から二段目。
右端の引き出しへ手を伸ばした。
開ける。
「……。」
中には。
二人分のマグカップと。
一枚の紙が入っていた。
阿部は固まった。
「なんで……。」
この引き出しに何かあるなんて。
知らないはずなのに。
目黒も驚いていた。
阿部は震える声で呟いた。
「俺……。」
自分の手を見る。
「本当に、ここに住んでたんだ……。」
忘れているのは。
目黒の事だけではなかった。
二人で過ごした時間そのものが。
阿部の中から。
綺麗に消されていた。
コメント
4件
普通の謎解き脱出ゲームだと思ってたら又しても💚に何が起こったのか😮💨 旦那の🖤は苦労が絶えないな😢

うわーただの謎解きではないのですね。 意味深です。 なぜ記憶が なぜ謎解きになって居るのか? 気になります。