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4 - 第4話 最期

♥

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2025年08月12日

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幸い、松田にはまだ私の病気のことは知られていないようだった。

松田には悪いが、仕事はもう辞めるつもりだ。

理由は病気だなんて言いたくない。最後まで惨めに思われるのは御免だから、適当な口実を作って辞めよう。

どうせ上司も同僚も、私が辞めたところで気にも留めないだろう。むしろ、内心では喜ぶかもしれない。


ただ——松田のことが気がかりだった。

あんなクソみたいな会社に、松田を置き去りにして自分だけ逃げるなんて、マネージャーとしても人間としても最低だ。

最低限、私が松田にしてあげられることは、この会社から解放してやること。

まずは、松田がまだ芸能活動を続けたいと思っているかを確認し、その答え次第で動こう。

クソみたいな会社でも、そこに所属する芸能人に罪はないのだから。


松田の件が片付いたら、ようやく私の短い人生が始まる。

旅行でもしてみようか……と思ったが、旅先で倒れて野垂れ死ぬのは、迷惑をかけるだけだ。

どうせなら、できるだけ人に迷惑をかけずに死にたい。

おそらく、一番迷惑をかけないのは病院で死ぬことだろう。


家族もいない私には、家で世話してくれる人も、最期を看取ってくれる人もいない。

孤独死をすれば、発見が遅れ、悲惨な結末になるのは目に見えている。

だから、病院で死ぬのが一番妥当なのだ。

趣味も生きがいもなく、薄給ながらも貯金だけは溜まっていた。

皮肉なことに、その金が役立つのは、今になってからだ。乾いた笑いがこぼれる。


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