テラーノベル
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「壱月、好き……ふぁ、は……」
「ん……俺も」
長い長い口づけの合間に、愛の言葉を交わした。
大きな背中を抱き締めて感じる、彼の体の熱さと汗の湿った感触――
私は壱月に抱かれていた。
幸せな気持ちに、満たされながら。
身体は自分のものじゃないくらいに疼いて、もっと奥まで彼を求める。
勝手に腰が動いて、気持ちいい所にその熱を当てようとする。
満たされているのに、どうしようもなく彼を求めてしまう。
「壱月、もっと……」
すると壱月の手が私の胸に触れ、体がピクンと震えた。
「や……」
「嫌? 今更そんなこと、言えないだろう?」
すると途端に、彼の顔が黒い笑顔に変わっていく。
「え……?」
その疑問符は、彼の口付けが奪っていく。
そのキスは、私の中をむさぼるように激しく口内を責め立てる。
「やめて!」
怖くなって壱月の胸を押し返した。
けれど、それはびくともしない。
壱月はニヤニヤと口角を上げたまま、私の手首をがっちりと捕まえた。
「やめられるかよ、今更。愛音だって、気持ちいいんだろう?」
想いとは裏腹に、彼が腰を動かすと、厭らしい水音が響いた。
壱月が腰を動かす度に、その音はどんどん大きくなっていく。
彼を睨み付けると、黒い笑みはさらに深くなる。
「好きなんだろう? 俺のこと」
違う!
好きなんかじゃない!
やめて!
目頭がじわんと熱くなる。
体はこわばって動かない。
「いいな、その顔。ずっと見てたい」
壱月は体を倒すと、私の耳を食む。彼の舌が耳を這い、体がゾクゾクと震えた。
「ほら。もっと、俺に溺れろ」
耳元で囁かれた声。
背中がぞわりと粟立つも、壱月の腰つきはどんどん早まっていく。
怖い、ダメ、やめて……!
*
はっと飛び起きた。
「夢……か」
慌てて自分の身体を抱き締めた。
びっしょりと汗をかいている。
ふと隣を見れば、ベランダから差し込む朝日に照らされ、すやすやと眠る花斗の姿。
それにほう、と胸を撫で下ろすと、花柄のエプロンが視界に入った。
これは昨夜、壱月から手渡された〝お土産〟の包みの中身だ。
どうやらアメリカニュージャージーの、有名なオーガニックコットンの生地らしい。
「どうして、こんな夢……」
あの日――壱月に抱かれた日は、こんなじゃなかった。
あの日、私はただひたすらに幸せだった。
――幸せだったと思いたいだけかもしれないが。
やるせない気持ちにため息をこぼすと、隣でもぞもぞと花斗が動く。
「ママ?」
「……花斗、おはよう」
私は慌てて笑顔をつくった。
あの日生まれた小さな命は、今、こうして隣にある。決して辛いことばかりじゃなかった。
うん、そうだ。花斗は、私の宝物。
そう思ったら、今度は偽物じゃない笑顔がこぼれた。
「ママ、おはよう」
今日の花斗は、機嫌がいい。それだけで、十分幸せじゃないか。
「さて、準備しますか」
「しますか!」
私が言うと、花斗が真似をする。
鳴りかけた目覚ましを止めると、私は花斗とともにベッドから抜け出した。
朝永ゆうり
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コメント
1件
うわ……このエピソード、めっちゃ重かった……🥀 夢の中の壱月、優しかったはずなのに急に黒い笑顔になって「好きなんだろう? 俺のこと」って迫ってくるシーン、読んでて息が止まったよ。愛音の「違う!好きなんかじゃない!」って心の叫びが痛すぎる……。 あの日、幸せだったと思いたいだけかもしれないっていう複雑な気持ちもすごく伝わってきた。でも花斗が「ママ、おはよう」って言ってくれて、偽物じゃない笑顔になれるところに救われた気がする……。 タイトルの「好きっていう気持ち」が、こんなに怖くもなるんだね。続き、気になる……🌙