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麗がまだ幼かった頃、本当の両親に捨てられた。寒空の下、泣きながら彷徨っていた彼を拾ったのは、とある裕福な夫婦だった。
「まあ…なんて美しい子なの!」
夫人は麗の整った顔立ちに魅了され、その美しさに価値を見出した。そして夫婦は彼を引き取り、「美しい子は幸せになる」と言い聞かせながら、麗を育てた。
しかし、麗は幼いながらも気づいていた。夫婦の愛は無条件のものではない。彼が美しくなくなれば、また捨てられるかもしれないという恐怖が、彼の心に深く根付いていった。
それ以来、麗は美しさに異常なほど執着するようになった。スキンケア、ヘアケア、姿勢、表情、全てを完璧に保ち、鏡を見るたびに自らに言い聞かせる。
「僕こそがこの世で一番美しい…!」
しかし、その裏には常に不安があった。鏡の中の自分が少しでも衰えたらどうしよう?誰かに自分以上の美しさを認められたら?
麗にとって、美しさは誇りであり、生きるための盾だった。美しさを失えば、今度こそ本当に独りになってしまう──その恐怖が、彼を「残念なイケメン」へと育て上げたのだった。
「なあ、鈴は僕が美しくなくなっても一緒にいてくれるのか?まあ、僕は永遠に美しいだろうがな!」
「麗は努力家ねー。私にスキンケアも垢抜けも教えてくれて…人柄もいいんだから貴方の周りに人が集まるのよ。皆離れたりしないよ。」
「…!」
麗は鈴の言葉に泣きそうになったが優しく笑って小さく呟いた。
「君は…僕より綺麗だね。」
その表情は複雑で、嬉しそうで、悲しそうで本当に美しかった。