脇役ヒロイン

ガラガラッ

「ごめん、遅れた！」

「全然大丈夫だよ。」

あの日、柊くんに嫌われた日。あの日から2週間たった。

あやは謝ってくれて柊くんにあんなこと言わないように言ってくれた。

ヒロインらしい対応の仕方。これが主人公。

あの日以来柊くんへの気持ちは…薄れた気がする。

「ゆいな、柊に告白してくれば？」

「何言ってんの？！」

ほんとに何言ってるんだろう。

「だって未だ気持ち忘れられないんでしょ？」

「ならもう告白して終わらせればいい。」

「そうだね、そう出来ればどれだけ良かったかなぁ…」

「まだ逃げるの？」

「逃げるって…なに？」

逃げてなんかない、まだ勇気が出ないだけ…！

「え？」

「そうきくんに何がわかんの？！」

「私、そうきくんといるの好きだよ？でもさ、私の恋愛に関わってくるほど親しくなんか…」

「あ…ごめん」

そうきくんは悔しそうな、悲しそうな顔をしていた。

「わかった、もう関わらない。」

ガラガラ

「ゆいなちゃんいる？」

柊くん…？というかゆいなちゃんって…前まで東堂さんだったのに、

「は、はい！」

「この間のお詫びに一緒に帰りたいんだけど…」

一緒に帰る…？

「嬉しいけど、委員会が…」

「いいよ、先帰って、俺やっとくから」

こういう時まで優しいんだ。訳わかんない。

「ありがとう、明日はもっと頑張ります！」

「それじゃあ行こっか」

「うん！」

幸せ。でもあやはいいのかな？

「ねぇ柊くん、あやは…？」

「あやは先に帰ったよ」

「そうなんだ…、」

「この前さほんとにごめんね」

「本当は思っていなくて、あやが心配で」

柊くんはやっぱり優しいな

「大丈夫だよ、」

「てかさ、ゆいなちゃんって住吉と付き合ってんの？」

「ちち違うよ！」

「そんなわけ…」

付き合っては無いけど…。

「そうなんだ笑」

「俺さ、あやのこと好きなんだよ」

ズキッ

「う、うん」

「それでゆいなちゃんにアドバイス貰いたくて」

「ほら、ゆいなちゃんってあやと仲良いじゃん」

「確かに、全然いいよ！」

ピコンっ

「ちょっと待ってね」

そうきくん

『駅で待ってて』

なんで、そんなに優しいわけ？

『わかった、待ってるね』

私ほんと最低だ。

「ゆいなちゃん、？もう大丈夫？」

「うん、行こ」

ガラガラッ

「ゆいな…！」

「あ、七瀬さん…、ゆいなならもう帰ったよ？」

「うん、知ってるよ？」

「私がひかるとゆいな一緒に帰らせたんだもん。」

「ならなんでここに？」

「私、そうきくんと帰りたいなぁ…」

「むり、」

「そうきくんってさゆいなのこと好きでしょ？」

「…」

「ほんとなんだね、でもゆいなはひかるが好き。」

「ならさ？私のこと好きになったら？」

「なんでそんな自信満々なのか知らないけど、俺が七瀬さんを好きになることは無いよ。」

「俺、君みたいなの嫌いなんだ」

「は？！」

「後、」

チャラ

「俺の事名前で呼んでいいの、ゆいなだけだから。」

「ちょっと！まってよ」

「ゆいなが駅で待ってる、早く行かないと行けないから」

「それじゃあ」

「じゃあ俺こっちだから。」

「ゆいなちゃんばいばい！」

「ばいばーい！」

疲れた…けど楽しかったし、幸せだったなぁ…

そうきくんいつ頃に来るんだろ。この辺で座っとけばいっか。

「あれ？ゆいな？」

「…！さっち？」

「久しぶり〜」

「こんなとこで何してんの？」

「人待ってて…」

「彼氏？笑」

「違うよ〜！」

さっちこと山村 幸は私の中学時代の友人。

あやがヒロインならさっちはヒロインの友達というポジションだと思う。

さっちは中学時代虐められていた私を庇って助けてくれた。とんでもなくかっこいい。

「さっちまた焼けたね〜」

「まぁテニス部だしね笑」

「この間テレビで全国優勝したっての見たよ！」

「すごいよさっち！」

さっちはテニス部で凄く上手。スポーツはできるけど頭が弱いのが難点。そんなさっちが好きなんだけどね！

「ありがとう！」

「ゆいな、おまたせ」

そうきくん…、走ってきたのかな

「ごめんね遅れちゃって」

「なんだやっぱり彼氏じゃん」コソッ

「だから違うって笑」

さっちはまだ言ってる。

「あれ、待って？君住吉 奏樹？」

「え？そうですけどって、さち？」

「やっぱりそうきだー」

さち？そうき？二人は知り合いなの？ていうかそうきくんのこと呼び捨て…。そうきくん私以外に仲のいい女の子いたんだ。ってそれはそうでしょ！彼氏でもないのになに嫉妬して…嫉妬？嫉妬なんかしてんの？私が好きなのは柊くんで、それで、…

「ゆいな！」

「なにぼーっとしてんの？」

「え！あ！ごめんね」

「ていうか二人は知り合いなんだね」

「うん、まぁさちは従姉妹だからね」

「従姉妹？」

「うん、そうきは私の従兄弟だよ笑」

「そう、なんだ、」

「ゆいなってばそうきのこと好きなのー？」コソッ

「いや、それはその、」

どうなんだろう…よく分からないや

「まだ、よくわかってなくて…」

「ごめん、さち、もう遅いし俺ら帰るわ」

「そうだね、ゆいなは可愛いから夜遅くにナンパされちゃうか笑」

私が可愛い？何言ってるの？

「そんなわけ笑」

「いーや、ゆいなは可愛いよ、危ないから帰ろ」

また、からかってるの？

「何言ってんの！///」

「あははっ顔真っ赤笑」

「あのさ、イチャつくなら早く帰って？」

「腹立つんですけど？」

「ごめん、ごめんそれじゃあ」

「ばいばいさっち！またね！」

「またね！」

「帰ろっか、」

「うん」

そうきくんはそう言ってゆっくり歩き始める、私の歩幅に合わせて。

「やっぱりこの時間は空いてるね」

「だね、座れるよ」

「ありがとう」

こんなとこまで気遣いができるんだ

「今日、柊と帰ったの楽しかった？」

「いや、その、楽しくなかったって言ったら怒る？」

さっき楽しかったって言ったけど、ずっとあやの話でつまらなかった。

趣味の話ができるそうきくんといる方が楽しかった。

「怒るわけないじゃん」

「てかなんで怒ると思ったの？」

優しく聞き返してくれる。安心する。

「だって先に帰って委員会の仕事サボったのに楽しくなかったって無駄な時間すごしたことになるし…」

「そういうこと、別にいいよ、柊じゃなくて俺といる方が楽しいって分かってくれたなら」

どういう意味…？

「うん、そうきといる方が楽しい」

「ん？呼び捨てで呼んだ？」

「呼んだ」

実を言うと嫉妬してた。さっちに。

従姉妹なのは分かってるけど、その前に女の子だから。

「嫉妬したの？」

「してな、い、かも」

「したんだ」

そうきはなぜだか嬉しそう

「可愛い、そういうとこほんとに、」

「これからも呼び捨てで呼んで、俺の初めてのことゆいなが全部やって、」

ずるいな、ほんとにどういう意味なの、

ドサッ

「はぁ、」

『ゆいなちゃんってさ住吉のこと好きなの？』

『え、違うよ、…？』

『じゃあさ俺の事好きになってよ』

『待ってるから』

柊くんに今日いわれた。ちょっと期待してみた。

あるわけが無いけど、でもそうきと会った時にあぁこの人だって。

明日終わらせよう。そのしょうもない恋に幕を閉じよう。

今日わかったから私はそうきが好き。

柊くんへの気持ちなんて捨ててしまおう。

柊くんに告白する。そうすれば、何もかも終わるから。