私を仲間に入れてくれ!
私は決して孤独でかわいそうな男ではない。少しばかり控えめなだけなのである。ただ今の状況、これはどうすることもできない。
国語の授業で百人一首をやった。三人チームになって相手チームと戦うのである。私は人一倍負けず嫌いなので、この日のために何首も覚えてきたのだ。「ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」……モモちゃんとナオちゃん。「憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを」……ハゲになって憂鬱。というように毎日努力した。
そして、私がとったのは三十首にのぼった。無論、私のチームは大勝利した。私のおかげである。実際、同じチームのみんなは十数枚ずつくらいしかとれていない。私がいなければ惨敗していたのだ!
当然、私はチームに感謝されていると思っていた。というか絶対感謝される。自分から自慢するのはだらしないので、私はただ札を片付けるように見えて、チームの温かい言葉を待っていたのだ。
ところが、私のもとに来る人は誰もいなかった。これはおかしい。さりげなく後ろを振り向いてみると、「すごーい!」「涼君、三十首とったの? めっちゃすごいじゃん!!」クラスメイトの賞賛の声が聞こえた。リョー君? 誰のことだ。
三十首とったのは、チームのために尽くしたのは、この私である。
そして今に至る。私はせめてその輪に入ってみようとと、リョー君がどのような輩なのか確かめようと、そこにゆっくり近づいた。もともと私の入る間などないくらいぎゅうぎゅうだったのが、なぜかすんなりと入り込めた。みんなに思いっきりタックルしているはずなのに、にらまれたりジロジロ見られるようなことはなかった。極めて不思議である。みんなの体の感触も感じなかったのだ。
ようやく、ついにリョー君にたどり着いた。リョー君はみんなの真ん中にいて、ちょっと困ったような、恥ずかしいような目でみんなに笑いかけていた。気取りも、誰かに褒めてもらおうという承認欲求もなさそうに見える少年だった。
私と何もかも正反対だった。私は思わず、そこをあとずさった。そのまま教室の隅に蹲ってしまう。いかにも悲しげな雰囲気が私には漂っているはずなのに、声をかけてくれるクラスメイトや先生はいなかった。私だけが冷たくされる世界だ。嗚呼分からない。
はらり、とリボンのような何かが私の前に落ちてきた。ゆっくり拾い上げてみると、それはこのクラスの名簿表だった。新学期が始めってばかりので、クラスメイト全員に配られたのだが、誰かが落としたようだ。意味もなく、それをじっと眺めてみる。いたって平凡な名前、ぱっと見では分からないような難解な名前、様々な名前が並んであった。最後の最後のクラスメイトの名前を眺め終わってから、思った。
私の名前がなかった。この組のクラスメイトではないのか? 私は。
私がリョー君にとりついていただけなのか。
コメント
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というか……借りてたやつ週明けに返します(m´・ω・`)m ゴメン…
うわあああああああ いっそまったく新しい物語書いたら?