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ホテル前にてマリアベルの家族と合流した俺たちは、一路巣鴨を目指していた。


といっても、所用時間は僅かに15分程である。


お盆の都内は渋滞もなく、車はスイスイ進んでいく。


俺の隣りにはキロが座り、今はスマホを持って、兄のフウガと定期連絡中である。


移動する際は逐一連絡を入れているのだ。(使ってるのはメアリーのスマホ)


それを受けたフウガは事件や事故等がないか、前もってネットで調べているということだ。


さすがは護衛と諜報活動のプロといったところかな。


だが、今回は別の情報も一緒に受けとったようである。


キロが口元を手で隠しながら俺の耳元でささやく。


ふんふん…………。


なぁにぃ~? やっちまったな!! (クー○ポコ)


キロの話によると、


フウガがいろんな情報を元に分析して、ダンジョンの位置を割り出したそうだ。


その確率も90%で、ほぼ間違いないということ。


それは早急に現地へ行って確認してみないとな。


ダンジョンに関わることは、今の俺たちには最優先事項にあたるからだ。


……しかし、フウガのやつ凄いな。


こんな短期間にパソコン (ネット) を使いこなし、確り情報源として利用いるのだから。


そして、その指定された場所とは、


なんと、今向かっている巣鴨駅から車でわずかに5分。隣町のにある神社ということであった。






おっ、巣鴨駅に着いたな。


かの有名な【とげぬき地蔵尊】がある高岩寺は商店街の中に位置する。というか、高岩寺を中心に商店街が出来ているような感じだね。


人が多いため、車は駅前のパーキングに止め、歩いて商店街へ向うことにした。


みんなが車を降りたあと、車内を確認してドアロックをする剛志 (つよし) さん。


「いやー、待たせちゃってごめん。じゃあ行こうか」


俺と剛志さんは、先を歩いている女性たちのあとを追った。


「こちらからお誘いして何なんですが、福岡行きの件は結構バタバタしたんじゃないですか? しかし、よく盆明けで休みが取れましたね」


「ああ、それは妻が言ってただろう。うちの会社って盆明けは暇なんだよ。企業によって休みもバラバラだからね」


「そうなんですねぇ」


「まっ、高い運賃だったけどな……」


剛志さんはニカッと笑いながら痛くもない左頬をなでている。


「へっ!? それってスレッガー中尉の……」(ク○ルス・ドアンの島)


オタ話に花をさかせながら、俺たちは『巣鴨地蔵通商店街』のアーチをくぐった。


たまにはこうして、商店街の中を歩いてまわるのも楽しいものだ。


お茶屋さんに、洋品店に、靴屋さん。


中には ”メリヤス屋” なる変わり種の店もあった。


店先のワゴンに乗ってるシャツにパンツ、くつ下といった下着類がどれも赤一色。


しかも、じーさん ばーさん達が、たかって買っているのだ。


…………すごい光景だな。


その他にも、面白そうな店が何軒かあったので、帰りにでも寄ってみましょうかね。






お参りを済ませたあとは、あれこれとお土産を買っていく。


名物のどらやきに、お漬物に、お芋屋さんの大学芋。


元祖 塩大福なんかもおすすめだね。


赤いシャツとくつ下は慶子へのおみやげにしよう。


「年寄あつかいするな!」と平手が飛んできそうだけど……ハハハッ。


お土産もたんと買い込んで、俺たちは駐車場まで戻ってきた。


「お昼はどうするー?」


剛志さんの声がけに、時計を見ればまもなく12時になるところ。


どうしようかと少し迷ったが、


「じつはもう一件行きたい所があるんですが……。昼食はその後でもいいですか?」


「じゃあ、そっちを先にまわって、お昼は東京駅で食べることにしようか。みんなもそれでいいかい?」


「「「「はーい!」」」」


小腹が空いたという者には、ダンジョン・サラが作った特製クレープや、さっき商店街で買ったどら焼きなどを車内で配っていった。


次に俺たちが向かった先は、巣鴨のお隣、駒込にある富士神社。


この【富士神社】の富士はズバリ富士山を差しているのだ。


なんでも、江戸時代の初期に起こった富士信仰が要因だと言われている。


元からあった古墳を富士山に見立て、その上に神社を作ったんだね。






そういえば茂 (しげる) さんが、


「この高台が古墳になっていて、その上にこの老松神社が建てられているんだよ」


なんてことを以前話していたが、ここ富士神社も建っているところは古墳の上なのだ。この二つの神社は非常に似たような条件のもとで建てられていることがわかる。


古墳にはパワースポットと呼ばれているところが多いときいたことがある。


それなら、エジプトのピラミッドの下なんかにもダンジョンが眠っていたりするのだろうか……。


なんとなく、ありそうだよな。


ピラミッドのダンジョンかぁ……。


中は神殿エリアに砂漠エリア、モンスターには是非ともミイラ男をくわえたい、宝箱のかわりに黄金の棺を置いて、それからそれから…………。


ああっ、こっそりプロデュースしたら楽しそうだよな。


アキーラやカマルには怒られそうだけど。(笑)


駐車場に車を止めた俺たちは、『富士社』と大きく書かれた鳥居を潜り参道を進んでいく。


途中左手にある手水舎 (てみずや) に寄ったが水がはいっておらず、横の水道で手を洗って富士塚の階段へと向かった。


登る階段の両脇には、わざわざ富士山から運んできたという溶岩が多数配されている。


これらを見ただけでも、当時の富士信仰の度合いが伺えるよな。


だって今みたいにトラックがある訳ではないし、荷車を押して富士山から運んできていたはずだから。


東京から見える富士山も、江戸時代ならもっとクッキリと大きく映っていたのかもしれないな~。


石碑や灯篭、鳥居に至るまで彫り込まれた文字が赤いペンキで彩色されており、とても賑やかしく感じる。


ところ狭しと並んでいる石碑には――組と彫られたものが目につくが、これらは江戸の火消し達が奉納したものだという。


あの有名な『め組の辰五郎』もここへ来てお参りしていたのかもしれない。


30までない階段を上ると社殿が見えてきた。


お山の上にはコンクリートで建てられた拝殿と本殿があるのみ。


社殿の表は黒い鉄扉で覆われており、人の姿はない。


少し寂しいような気もしたが、これは時代の流れであり仕方のないこと。


周りはマンションだらけになり、神社を支える氏子もいなくなってしまったのだろう。


俺たちは鉄扉の穴に賽銭をほうると、


――パンパン!


みんな並んで参拝を済ませた。


さてさて、調べてみるとしましょうかね。


ダベっているみんなを社殿の前に残し、俺はシロを連れ建物の側面へとまわった。


その場にしゃがみ込んで、地面に手をあてる。


――ダンジョンマップ!


……ほうほう、やはりここがダンジョンということで間違いないようだ。


入口はどこだ………………、 ダメだ見つからない。


これから出来てくるのだろうか?


まあ、今日のところは場所が確定しただけでも良しとしておこう。


フウガには今回おみやげの他に、何か褒美を用意してやろう。


車に戻った俺たちは、そのまま東京駅へと向かった。






すると、俺のスマホが車内で鳴りだした。


うん、誰だろう?


スマホを取り出すと液晶画面に[着信・アキーラ]と表示されている。


昨日、一緒に行動した際、連絡先を交換していたのだ。


俺はスマホをタップし電話に出た。


「ハローハロー、ゲンにーちゃん! 今日は遊ばないの~」


カマルだったか。


「おう、カマルか。昨日は楽しかったなー。いまホテルからか?」


「うん、そうだよ~。昨日のゲンにーちゃん、強くてかっこよかったー!」


「そうかぁ、ありがとな。だけど今日は一緒に遊べないんだよ。今から家に帰るところだから。ごめんなー」


「え――――っ ! 帰っちゃうのー? カマルも行き…た…い…………」


「まーたお姉ちゃんのスマホを勝手に使って――。すぐ返しなさい!」


どうもアキーラのスマホをカマルが無断で使っていたようだ。


電話の向こうでカマルが怒られている……。


「ハロー。えっと、ゲンさんですか?」


「おう、アキーラか? 昨日は一緒にまわれて楽しかったな。ちゃんとホテルまで帰れたようで安心したよ」


「はい! 私も楽しかったです。……それに賊からも助けていただきき感謝しています。もう一度お会いして、ぜひお礼をさせてください!」


なんでも、アキーラとカマルのお父さんは駐日エジプト大使館に勤める一等書記官なんだそうだ。


いわゆる外交官のお偉方だな。


昨日襲ってきた輩はイスラム系裏組織に属する者のようで、母国 (エジプト) から遊びにきていたアキーラとカマルを誘拐する手はずだったようである。


エジプトといえばアラブ圏でも盟主とされる国だ。


そこの外交官ともなれば影響力も大きいのだろう。


しかし、いくら平和な日本といえども外交官の娘に護衛の1人もなしか?


まあ、上手く誘導されたのだろうが……。


まったくもって不用心な話である。


「カマルによろしく言っておいてくれ。また、どこかで会おうな!」


俺は今から福岡に帰ることをアキーラに伝え通話を終わらせるのだった。







8月15日 (土曜日)

次の満月は8月28日

ダンジョン覚醒まで22日・82日

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