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その女子は、 まっすぐ黒木君を見ていた。
周りなんて見えてないみたいに。
「……知ってる」
ぽつりと呟く。
「黒木君、その子と最近ずっと一緒にいる」
空気が変わった。
さっきまで騒がしかった若武も、 黙る。
「お前」
上杉君が静かに口を開く。
「誰?」
「……」
女子は答えない。
ただ。
じっと、 私を見る。
なんか。
怖い。
「えっと……」
思わず後ずさると。
黒木君が、 さりげなく前に出た。
「ごめんね」
優しい声だった。
「今ちょっと話せる感じじゃないから」
断ってる。
でも柔らかい。
たぶん、 黒木君っていつもこうなんだ。
だから余計、 期待されるのかもしれない。
「……またそうやって」
女子が小さく言った。
「誰にでも優しい」
その瞬間。
上杉君の目が変わった。
「若武」
「おう」
若武が、 すぐに女子の進行方向へ回る。
逃げ道を塞ぐわけじゃない。
でも自然に囲む形。
すごい。
連携早い。
「立花」
上杉君が小声で言う。
「少し下がって」
「あ、う、うん」
言われるまま下がる。
すると。
「ねえ」
女子が急にこっちを見た。
「なんで立花さんなの?」
「え……」
「なんで、あなたが黒木君の隣にいるの?」
答えられない。
だって。
私だって、 数日前まで他人だった。
「わたし、ずっと応援してたのに」
女子の声が少し震える。
「試合も全部見てた」
「……」
「なのに」
ぎゅっと、 女子の手が握られる。
「急に出てきた人が、そんな近くにいるなんておかしい」
廊下が静かだった。
周りの人も、空気を察して静かにみている。
居心地が悪い。
すごく。
「君さ」
美門君が、 珍しく真面目な声を出した。
「黒木のファン?」
「……違う」
「じゃあ何」
女子はすぐ答えなかった。
でも。
「……特別」
その言い方に、 私は少しぞわっとした。
すると。
「違うよ」
黒木君が、 はっきり言った。
一瞬。
女子の顔が固まる。
「特別なんかじゃない。」
「俺、君のこと知らない」
静かな声だった。
優しくないわけじゃない。
でも。
ちゃんと線を引く声。
「っ……」
女子が息をのむ。
「でも、わたし……!」
「ごめん。」
黒木君は続けた。
「勘違いさせてたなら謝る」
若武たちも、 黙って聞いていた。
たぶん。
茶化さない方がいいって、 わかってる。
「……最低」
女子が小さく言う。
でもその目は。
黒木君じゃなく。
私を見ていた。
「その子のせいでしょ」
空気が凍る。
「その子が来たから、おかしくなったんだ」
「おい」
若武の声が低くなる。
初めて聞く声だった。
「それ以上言うな。だまれ。」
「だってそうじゃん!!」
女子が叫ぶ。
「その子が来てから、黒木君変わった!」
その瞬間。
廊下の奥から。
「何してるの」
別の声が響いた。
みんなが振り返る。
先生だった。
コメント
1件
第10話、すごく空気感が伝わってきました。黒木くんの優しくて芯のある距離の取り方、若武くんの一瞬の低い声の圧…それぞれのキャラの動きが自然で、「その子のせいでしょ」って視線が立花さんに刺さる感じ、読んでいてぞわっとしました。先生の登場で一旦区切りがつくのも絶妙なタイミング。緊迫感のあるシーン、とても好きです。続きが気になります🌷
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