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# 綺麗 に 腐った 罰
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……最悪だ。母さんたちもいない日だってのに家の鍵を忘れた。
思わず舌打ちが溢れる。
「はぁ……あと2時間くらい外いなきゃじゃねぇかよ」
「あの、紫苑さんですか?」
「どわあっ!?」
家の前の庭で体育座りしていると誰かに声をかけられた。
……よりによってこんなところ見られるなんてツイてない。
なんか変な声出たし。
「えと、大丈夫ですか……?」
緑頭がこちらを心配そうに覗き込む。
俺と同い年ぐらいだろうか。ちょっと俺より背が高い。
……ていうかさっき何か聞かれたか?
「あの、俺紫苑ですけど何か?」
思ったより冷たい声が出た。不機嫌なのがバレたか……?
緑頭はちょっと不思議そうな顔をしたがすぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「俺、隣に引っ越してきた翠川です。今日は挨拶に来ようと思って」
緑頭は礼儀正しくぺこりとお辞儀すると紙袋を渡してきた。
どうやら最近お隣が騒がしかったのは引っ越しの準備をしていたからだったらしい。
でも、こういうのって高校生が1人で来るもんなのか?
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
少し不思議に思いながらもとりあえず俺は紙袋を片手に頭を下げた。
すると緑頭は何やらごにょごにょし出した。
「……?」
「あっ、あの、そのっ……」
緑頭が必死に口をぱくぱく動かす。
……なんか、違和感。
最初の余裕のある大人びた印象とは大違いだ。
ポツ。
「!」
「雨……」
思わず空を見ると、雨がぽつりぽつりと降り始めていた。
嘘だろ!?傘持ってねえのに……。
「あ、あの。家入れないんですよね?」
緑頭が心配そうに眉毛をハの字にした。
「なんで、それを」
「いや、その話しかけるタイミングを伺ってるときに盗み聞きしちゃって……」
マジかよ……。聞かれてたんかアレ。
ほんと今日ツイてねえな。
ザーッ……。
雨が本降りになってきた。
しょうがねえ。ファミレスでも行って避難するか。
「すいません、俺そろそろ行きますね」
ゆっくりと立ち上がって場を去ろうとしたとき、緑頭に腕を掴まれた。
俺が驚いた顔をすると、すぐに申し訳なさそうに手を引っ込めた。
そして迷ったような顔をしながらゆっくりと口を開いた。
「そ、その俺の家で雨宿りしませんか」
「……は?」
「あ、ごごごめんなさい!」
緑頭は一瞬で怯えたような顔になった。
やっべ。昔の癖で思いっきり睨んじまった。
「いや、あなたの家の人とかに申し訳ないですし……」
「あ、それなら大丈夫です。俺一人暮らしなんで」
「……そうなんですか?」
「はい」
高校生で一人暮らし……すごいな。
「いや、でも」
「うちタオルもあるんで、風邪ひいちゃうのもよくないですし」
緑頭は本気で心配そうな顔でこちらを見てくる。
……なんで今日会ったばかりなのにそんなに心配してくれんだよ。お人好しか。
そんな顔されたら断れねえじゃん。
「そしたら、親帰ってくるまで失礼してもいいですか?」
俺は迷いに迷いながらも言葉を紡いだ。
それを聞くと緑頭はぱあっと笑顔になった。
……意外とわかりやすいんだな。
「もちろん!」
「部屋きれー……」
思わずぽろりとこぼしてしまう。
まあ引っ越ししたてだったらこんなもんなのかもしれないが。
「これで体拭いてください!」
洗面所に引っ込んでいた緑頭……じゃない、確か翠川さん?がタオルを差し出す。
「ありがとうございます」
俺はそれを受け取った。
なんかふわふわしてて触り心地がいい。
少しの申し訳なさを感じながらタオルで水分を拭き取った。
「あの、座ってどうぞ」
「はい」
翠川さんは何やらキッチンでガサゴソ作業をしている。
しばらくするとコーンスープのいい匂いが漂ってきた。
「はい、飲んでください」
翠川さんがコーンスープをお盆に乗せて出てきた。
体が冷えていたところにこれはありがたい。
「……おいしい」
体の内側がポカポカとしていくのを感じる。
翠川さんはにこにこと俺の様子を見ていた。
『ピンポーン』
突然、チャイムが鳴った。
「……母さん」
さっき連絡したから翠川さん家まで迎えに来てくれたみたいだ。
……もうちょい居たかったけど。
「翠川さん、ありがとうございました」
コーンスープを飲み干すと俺は椅子から立ち上がった。
すると翠川さんは俺の腕を掴んだ。
「す、すち!」
「?」
「俺、翠川須知!そ、その……よかったらすちって呼んでほしい…です」
翠川さん……すちの顔はゆでだこみたいの真っ赤になっていた。
ちょっとそんな様子が可笑しくて。
「そしたら、すち。俺、いるま」
にっと笑って握手を促す。
コイツとは仲良くなれそうかも、なんて。
「!……いるまちゃん、よろしく!」
すちはにっこりと微笑んで俺の手を握った。