個室の大部屋。油っぽい匂いと、焼き鳥の煙が充満している。我々だメンバーは周年記念に旅館で打ち上げをしていた。長机の上には空いたジョッキと枝豆の殻が散らばって、笑い声が絶え間なく響いていた。
「おいゾム、お前またビール頼んでへんのかい」
トントンが眉を吊り上げる。
「いやいや、もう結構飲んだってば!」
ゾムは緑のパーカーのフードをいじりながら、必死に笑ってごまかす。酒は嫌いじゃないが、みんなのペースについていけるわけがない。
「せやせや、ゾムは酔ったらおもろいからもっと飲ませろや」
鬱先生がにやにやしながら盃を突きつける。
シャオロンは豪快に笑い、チーノとショッピはスマホを覗き込みつつも、ゾムの反応を楽しそうに眺めている。
そのとき、コネシマがぽつりと言った。
「なあ、久々に王様ゲームせえへん?」
場の空気が一気に盛り上がる。
「出た! コネシマの悪ノリや!」
「やろやろ!」
「ゾム、逃げんなよ?」
ゾムは苦笑いするしかなかった。嫌な予感しかしない。
――そして、ゲームは始まった。
割り箸に走り書きされた数字。
引いた瞬間、ゾムは胸の奥がひやりと冷える。自分の手元に「王様」はない。
「はいっ! 俺が王様や!」
最初に王様を引いたのはチーノだった。
「よっしゃー。ほな……『3番は4番の耳に好きって囁け』」
番号を確認した瞬間、ゾムは固まる。3番。自分だ。
そして4番は….ショッピ。
「おい待て、なんやねんこれ!」
ゾムは慌てて突っぱねるが、すでに周囲が取り囲んでいた。
「はよせえやゾム!」
「ご褒美やぞショッピにとって!」
「録音したろか?」
押し切られるようにして、ゾムはショッピの耳元に顔を寄せる。
近すぎる。相手の体温と匂いが鼻をくすぐり、胸が苦しくなる。
「……す、すき」
かすれた声。言った瞬間、耳まで真っ赤になるのが自分でも分かった。
仲間たちの爆笑と冷やかしが飛び交う。
「お前顔真っ赤やんけ!」
「おー、照れとる照れとる!」
「おいゾム、声震えてたぞ?」
ゾムは「うっさいわボケ!」と叫ぶが、笑いは止まらない。
酒と空気に煽られて、命令はどんどんエスカレートしていった。
次の王様はロボロだった。
「ほな、1番と5番は――乳首当てゲームや!」
「は?」
場が一瞬静まり返り、すぐに爆笑が起こる。
「ロボロ、お前アホやろ!」
「いやおもろいやんけ」
ゾムの手元の箸には…..「1番」。
これは偶然か?いや絶対誰かが仕組んでいる。
「誰が5番や?」
「……俺やな」
鬱先生が薄笑いを浮かべて手を上げる。
「待て待て待て待て! そんなんせんでええやろ!」
ゾムは必死に拒否するが、腕をつかまれ、強引に座らされる。
「ほら、上着脱げや」
「やめろや! 触んな!」
パーカーを引っ張られ、下の黒いノースリーブが露わになる。
密着した布越しに伝わる指先の感触に、ゾムは息を呑んだ。
鬱先生の手が胸元に伸びる。
「……どっちやろなあ」
その声に、ゾムの背筋がぞわぞわと震える。
敏感な場所に近づいてくる予感だけで、心臓が跳ね上がる。
「や、やめろって言うてるやろ!」
必死に抵抗するが、仲間たちの笑い声にかき消される。
指先が布越しに掠めた瞬間――ゾムの身体がびくりと跳ねた。
思わず漏れた小さな声に、場の空気が変わる。
「……お?」
「今、声出たやろ?」
「おいおいゾム、もしかして感じとるんか?」
ゾムの顔が一瞬で真っ赤になる。
「ち、違うわアホ! 離せっ!」
だが腕は仲間に押さえつけられ、逃げ場はない。
耳まで熱くなり、心臓が早鐘を打つ。
自分の身体があまりに敏感すぎることを、知られたくなかったのに。
笑い声と、いやらしい視線が一斉に自分に向けられる。
その中で、ゾムは必死に口を閉ざし、呻き声を堪えていた。
――だが、耐えれば耐えるほど、敏感な場所に意識が集中してしまう。
快感と羞恥の狭間で、ゾムの呼吸は荒く乱れていった。
「ほらほら、観念せえやゾム」
鬱先生が楽しそうに笑いながら指先を揺らす。
ゾムは顔を背け、必死に声を絞り出す。
「やめろ言うてるやろ! なんで俺ばっかりやねん!」
「そらお前が一番反応おもろいからやろ」
ロボロがニヤニヤしながら言うと、周囲が一斉に頷いた。
「せやせや、ゾムが嫌がれば嫌がるほどおもろいねん」
「……ていうか、もう嫌がってへんのちゃうか?」
「は、はぁ!? なわけないやろ、、」
ゾムは真っ赤になって言うが、腕を押さえられているせいで身動きが取れない。
笑い声と酒の匂いが頭をくらくらさせる。
鬱先生の指が布越しに乳首を探り当てる。
「ここやな?」
その瞬間、ゾムの身体がびくんと跳ねた。
「っ……!」
声が漏れそうになるのを必死で噛み殺す。
「おお、当たりや当たり」
「なんやゾム、ほんまに敏感やなあ」
「顔見てみぃ、真っ赤やで」
ゾムはうつむいて歯を食いしばる。
「……っ、うるさい……」
けれど、耳まで熱くなっているのは隠しようがなかった。
わずかな刺激で勝手に身体が反応してしまう自分が、何より情けない。
⸻
「あ、俺 王様や」
トントンが割り箸を掲げる。
「ほな……『2番はゾムの耳に息ふきかけろ』や!」
「は?」
ゾムが顔を上げた瞬間、周囲がまた爆笑した。
「や、やめろや! 絶対あかん…」
必死に首を振るが、番号を見たシャオロンが手を挙げる。
「俺やな。よっしゃ、いっちょやったるか」
悪戯っぽい笑顔。
逃げ惑った結果、ゾムは床に押さえつけられた。耳を守ろうと肩をすくめる。
「近寄んな! ほんまやめろ!」
「力抜けやゾム。すぐ済むって」
シャオロンの吐息が耳朶をかすめる。
それだけで、ゾムの全身がぞわぞわと震えた。
「ひゃっ……!」
堪えきれず、甲高い声が漏れる。
「録音してええか?」
「耳弱いんやなぁ、ゾム」
「だ、黙れやぁ!」
必死に叫んでも、羞恥は消えない。耳の奥に残った温もりが、じんじんと広がっていく。
⸻
その後も、命令は容赦なく続いた。
「ゾム、首筋に指で文字書かれて当てろ」
「ゾム、誰が肩触ったか目隠しで当てろ」
どれもくだらないはずなのに、ゾムにとっては拷問だった。
耳や首、肩に触れられるたびに、敏感な神経が勝手に反応してしまう。
「……っ、ん……」
堪えきれず漏れた吐息に、メンバーたちはゴクリと喉を鳴らす。
「これやもうアウトやろ」
「ゾム、声出とるぞ?」
「ほんま可愛ええなw」
ゾムは必死に口を押さえた。
「ち、違う……! これは……!」
けれども、腕はがっちり拘束され、首もすぐに狙われる。
耳に触れられただけで、背中を電流が走るように震えてしまう。
「やめろって……っ、ほんまに……!」
潤んだ声で懇願しても、誰も止めてくれない。
むしろ、その様子を楽しんでいるのが伝わってくる。
⸻
「次、俺が王様や」 ショッピがニヤリと笑う。
「ほな……『ゾムを縛っとけ』」
「はああ!? なんでやねん!!」
ゾムが叫ぶが、すでに遅い。
背後からロボロとエーミールがかりで腕を取られ、即席の手ぬぐいで縛られてしまった。
「おい離せって! なんやこれ悪ふざけやろ!」
必死に暴れるが、酒に酔った仲間たちの手際は妙に素早い。
「ほら、これで動かれへんやろ?」
「観念せえや、ゾム」
身動きが取れなくなった瞬間、心臓が大きく脈打つ。
この状況で、また弄られるのか――そう思うだけで、ゾクリと腹の奥が疼いた。
「ほな本番やな」
鬱先生の指が再び胸元へと迫る。
「やめ……やめてぇや……!」
ゾムは必死に首を振る。
だが、縛られた身体は逃げられない。
布越しに触れられるたび、敏感な場所から熱がこみ上げてくる。
羞恥と快感が入り混じり、ゾムの呼吸は荒く乱れていった。
「やっぱゾム、こういうの弱いんやな」
「見ろや、もう息切れてるやん」
「……可愛いわほんま」
ゾムは歯を食いしばり、声を堪えようとする。
だが、耳に吐息をかけられた瞬間――
「っ……あぁっ!」
耐えきれずに声が漏れた。
一瞬の沈黙のあと、歓声が響き渡る。
「おお! ええ声出たな!」
「やっぱ縛ると反応違うわ!」
「もっとやったれ!」
ゾムは涙目で首を振る。
「やめろ……もうやめろって……!」
けれども、誰も止めてはくれない。
仲間たちの手は容赦なく敏感な場所を狙い、ゾムの抵抗は少しずつ力を失っていった。
⸻
「ほら、もっと近寄ってやれ」
トントンの指示で、ゾムの両脇にシャオロンとロボロが座り込む。
耳元、首筋、肩。どこも敏感な場所ばかりを狙われ、ゾムの身体は絶え間なく震えていた。
「……っ、は……やめ……やめろって……!」
縛られたままの腕を必死に動かすが、ほどける気配はない。
顔は真っ赤に染まり、涙がじんわりと目尻に浮かんでいた。
「うわゾム、もう泣きそうやんけ」
「泣き声混じりのゾムとか最高やな」
「ほんまお前…. 素直すぎやろ」
仲間たちの言葉が容赦なく突き刺さる。
羞恥に追い込まれるほど、胸の奥の熱は収まらなくなる。
鬱先生がわざとらしく耳元に囁いた。
「なあゾム、もう隠されへんやろ。身体は正直やで」
「ち、違う……! そんなんちゃう……っ!」
必死に否定する。だが、声は震え、息は乱れている。
その様子が、余計に場を煽った。
⸻
「次はワイがいきますわ」ショッピが割り箸を掲げる。
「命令は……『ゾム、声を我慢できるかチャレンジ』や」
「はあ!? なんやねんそれ!」
ゾムは目を見開いた。
「簡単やん。俺らが触っても、声出さんかったら勝ち。
出したら……負け。」
「そんなアホなルールあるか!」
必死に食ってかかるが、もう決定事項のように空気は固まっている。
「よし、じゃあスタートや」
瞬間、首筋に柔らかな指が這った。
「っ……!」
ゾムは奥歯を噛みしめ、必死に声を堪える。
次は耳元。吐息がふっとかかる。
背中が跳ね上がる。
「……んっ……」
かすかな音が漏れ、すぐに周囲がざわつく。
「おい今出たやろ」
「負け確定やな」
「まだや! まだ我慢しとる!」
ゾムは必死に首を振った。
「ちゃう……! まだ……っ!」
けれども、胸元に指が伸び、乳首を軽く弾かれた瞬間――
「ひゃあっ……♡」
甲高い悲鳴のような声が響き渡った。
⸻
「アウトォ!!」
大歓声が巻き起こる。
ゾムは涙目でうつむき、必死に首を振る。
「ち、違うんや……勝手に……!」
「勝手に、やないなあ」
「ゾム、お前もう堕ちかけやん」
チーノが冷たい缶を頬に押し当てる。
ひやりとした感触に、ゾムは小さく喘いだ。
「っ……あ、あぁ……!」
もう声を抑える余裕すらなくなっていた。
「見ろや、触らんでも声出るやんけ」
「ゾム、ほんま敏感やな」
「酒も入っとるし、もう止まらんやろ」
耳元で囁かれるたび、身体が勝手に震える。
羞恥と快感の狭間で、思考がどんどん薄れていく。
⸻
「ほな、最後の命令や」
王様を引いたコネシマがにやりと笑う。
「『全員でゾムを落とせ』!」
「はああああ!?!?!?」
ゾムは目を剥いた。
「や、やめろや! そんなん洒落にならん!」
けれども、酒気に満ちた空気はもう止まらない。
仲間たちが一斉に近づいてくる。
耳に吐息。
首筋に指先。
肩に重なる手。
胸元をなぞる感触。
「や……やめてぇっ……!」
ゾムは縛られたまま必死に抵抗する。
けれども、全身を覆う刺激に、息が詰まり、声が止められなくなる。
「っ……あ、あぁっ……!」
声が、勝手に漏れる。
それを聞いた瞬間、仲間たちの視線がさらに熱を帯びた。
「なあゾム、もう認めろや」
「お前、感じてもうとるやろ」
「堕ちるんは時間の問題やな」
ゾムは涙を浮かべ、首を振る。
「ちが……ちがう……っ!」
けれども、震える身体は正直だった。
快感に絡め取られ、羞恥に焼かれ、もう抗う力は残っていない。
⸻
その夜、笑い声と嬌声が入り混じった大部屋に、朝まで灯りが消えることはなかった。
そしてゾムの心には、抗えぬほどの痕跡が深く刻まれてしまった。
――気づけば、自分でも信じられないほど、快感を求める身体に変わっていたのだから。
コメント
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途中から番号じゃなくて名指しで命令してるのに指摘しないの悪巧みしすぎてて好きですありがたい。