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仕事終わり、俺は自分のセーフハウスへと帰宅する。
ガチャ、と音を立てて扉を開く。
そこで俺は絶望した。
玄関に脱ぎ捨ててある、明らかに自分のものでは無い靴に。
「……クソッ」
ため息を吐き乍も、リビングと廊下を繋ぐ戸を開く。案の定、世界で一番と云って良い程大ッ嫌いな男が居座っていた。
「やァ中也、遅かったねェ。」
「な〜にが遅かったねェ、だ!此処は俺の家であって手前ェの家じゃ無ェんだよ!!」
どうせピッキング辺りで不法侵入をしたのだろう。そろそろ対策をした方がいいか?などと考えてると
「あー、あー、中也煩いよ。どうどう〜、どうどう〜…。」
元はと言えば手前の所為なんだよ、蹴り殺したい。
「ンな事云って無ェで、とっとと帰りやがれ!!」
「嫌だね、私は今帰れないのだよ。」
帰れない、とはどう云う事だろうか。思考を巡らせたが、答えは直ぐに出た。亦女が関係した事だろう。
「あァ?そりゃいつもの自業自得だろ、この軟派野郎が!」
「ところでちゅうやぁ、私お腹空いたのだけど。」
俺が怒鳴ると太宰は呑気に空腹を告げた。居座ってるのは手前なんだから、その位自分で作れや。
「……ッチ、」
ここまで来ると此奴は折れない。観念した俺は、自分と太宰の飯を作ることにした。
「あは、君ってさぁ、なんだかんだ云って私に甘いよねェ。」
「あァ?」
「ふふ、毎度私が此処に来ても、追い出さずにご飯まで作って、泊まらせてくれるじゃない。」
慥かに思い返してみると、此奴はいつも俺の家に来ては飯食って、風呂に入って、そのまま泊まり、朝は居なくなってて…と、随分自分勝手な事をしていたな。呪い殺したい。
「ご馳走様、今日も美味しかったよ。でも、もう少し塩分が強くても良かったかも。」
飯を食い終わり、食器を片付けに来た太宰に 感想を云われた。だが、俺はそこそこ料理が上手い…ってだけで、プロ並と云う訳では無い。だが、このアドバイスは今後に活かせそうで有難かった。
「あァそうかよ。食い終わったンならさっさと風呂入れよ。」
「分かってるってば。…今日は一緒に入るかい?」
「ッはぁ!?何云ってンだ手前ェ!気色悪ィ!」
急に一緒に入るなどと云われ、顔が赤くなる感覚がした。俺らは一緒に風呂に入ることがあるような仲では無かった為、そんな事を云われたのは初めてだった。だが 太宰は月イチ…否、それ以上の頻度で 女と共に入ったことがある筈だ。今更男の俺と入る事など、なんともないのだろう。
「ふふ、中也ったら顔が真っ赤だよ。」
「手前の所為だ、クソ太宰。」
「流石に冗談だって。本気にしちゃったの?」
太宰は莫迦にするように冗談を告げた。苛立って今直ぐ殴りたいと思ったが、今は食器を洗っている為、それは叶わなかった。
「……クソが、もう早く行けよッ!!」
「おお怖い怖い、すぐ行くから、そんなに怒鳴らないで?」
と、怒鳴る俺を宥めるように云い残し、太宰は着替えを持ち、愉快そうに風呂場へと向かって行った。