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『亮に伝える。絶対喜ぶよ、あいつは…マジに恭香のこと…可愛いと思ってるから』
『そんなこと、わかるわけないよ』
『わかるんだ…亮の顔見てたら。あいつ、お前のこと話す時の顔、本当に嬉しそうだった。笑顔が可愛くて、優しい人だねって…恭香のことそう言ってた』
朋也さんは、すぐ横にあった小さな水槽を見た。
小さくて色とりどりの熱帯魚が、ユラユラと泳いでいる。
『亮は、恭香に恋してた』
ドキっとした。
私を見ないで、水槽を見つめたままサラッと言ったその言葉に…
『朋也さん、変です。顔見ただけで恋してるとか…わからないですよ。だいたい朋也さんに、人が人を好きになる気持ちとかわかるんですか?』
どうしたんだろ、私。
こんなに攻撃的な口調で、しかも…
また敬語に戻ってる。
『…』
朋也さん、黙ってる。
ズルいよ、何も言わないなんて。
私達は、いつの間にか、最初に見た大きな水槽の前に戻っていた…
『俺は…亮に…焼きもちを妬いた』
『…え?』
『スタジオで恭香と亮が楽しそうに話してるの見て…恭香が笑顔で笑いかけてるのが…ちょっと…嫌だった。これって…ヤキモチだよな』
『そんな…』
『恭香。俺、ずっと、ずっと…言いたくて言えなかったことがある』
朋也さんが、私を真剣な顔で見た。
こんな私を…
こんなに素敵な人が…
嘘みたいに綺麗な瞳で、じっと見つめてくれてるんだ。
『俺は…恭香が好きだ。ずっとずっと前からお前を想ってる』
『朋也さん…嘘…』
水槽の魚達が止まってる…?
周りの人達も…
ここだけ時間が止まった…?
体が動かない。
私、生きてる?
死んでない?
大丈夫、心臓の鼓動は聞こえてる。
自然に…
涙が浮かんで、そして、流れ落ちた。
やっぱり、生きてる…
失恋した時とは、全然違う涙。
何か…心が温かい。
『朋也さん…本当に?どうしてこんな私を…』
やっと言葉が出てきた…
『恭香は覚えてないだろう。俺は会社でずっと前にお前に会って、勝手に一目惚れした』
『嘘…私に一目惚れ!?』
朋也さんと前に会ってたなんて、私、全く思い出せなくて…
『恭香が入社した頃、第1会議室にお茶をいつも用意してくれてただろ?俺は、あのメンバーの中にいたんだ。黒髪でメガネの…社長の隣に座ってた』
『え…あ…あの、あの人!?』
確かにいた。
記憶の中にちゃんとあった。
だけど、今の朋也さんとは…全然違うような気がする…
あの頃、仕事のミスをするのが怖くて、ただ目の前のことを全うすることだけに集中してたから。
とにかく必死だった…周りもちゃんと見えてなかったんだ。
余裕が全然無かった…と思う。
あの時の私を、朋也さんは見てくれてたって言うの?
本当に?
朋也さん、一目惚れしたって言ったよね?
信じられない。
有り得ないよ、そんなこと。
もう、頭の中がぐちゃぐちゃだった。