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「私もずっと応援したいです」
「亮に伝える。絶対喜ぶよ、あいつは……マジに恭香のことを可愛いと思ってるから」
「そ、そんなことあるわけないよ」
「わかるんだ。亮の顔見てたら。あいつ、お前のこと話す時の顔、本当に嬉しそうだった。撮影の合間に、笑顔が可愛くて優しい人だねって、恭香のことをそう言ってた。亮は普段女の子の話は全くしないのに、初めて俺にそういうことを言ってきたから……。ああ……亮は恭香に一目惚れしたんだなって……思った」
朋也さんは、そう言って、すぐ横にあった小さな水槽を見た。
小さくて色とりどりの熱帯魚が、ユラユラと泳いでいる。
「亮は、恭香に恋してた――」
ドキっとした。
私を見ずに、水槽を見つめたままサラッと言ったその言葉……
「と、朋也さん、それはあまりにもおかしいよ。亮君の顔見ただけで恋してるとか……わ、わかるはずないし。それに、亮君みたいなアイドルが私のことを好きになるわけないし。って、だいたい朋也さんに、人が人を好きになる気持ちとかわかるんですか?」
どうしたんだろ、私。
こんなに攻撃的な口調で、しかも……また敬語に戻っている。
「……」
朋也さんは、黙っている。
ズルいよ、何も言わないなんて――
私達は、いつの間にか、最初に見た大きな水槽の前に戻っていた。
「俺は、亮に……ヤキモチを妬いた」
「えっ?」
「スタジオで恭香と亮が楽しそうに話してるの見て、恭香が笑顔で笑いかけてるのが……嫌だった。これってヤキモチだよな」
「……朋也……さん?」
「2人が話しているのを見てたら、もしかして恭香も亮のこと好きなのか?って……。そう思ったら、死ぬほど苦しくなった。心が痛くなったんだ」
「そんな……」
「恭香。俺、ずっと、ずっと言いたくて言えなかったことがある」
「えっ……」
朋也さんは、私を真剣な表情で見つめた。
こんな私を、こんなに素敵な人が、嘘みたいに綺麗な瞳でじっと見つめてくれている。
だんだんと高鳴る心臓の音が、私の耳に届く。
「俺は……恭香が好きだ。ずっとずっと前からお前を想ってる」
えっ……
「……」
水槽の魚達が止まってる?
周りの人達も……
ここだけ時間が止まったの?
体が動かない。
私、生きてる? 死んでない?
あまりの展開に、何が起こったのかわからない。
「……恭香?」
「……な、何を言ってるの? 冗談言わないで」
「冗談なんか言ってない。そんなわけないだろ。俺はお前のことを……本当に大切に思っているんだ。本気で恭香のことが好きなんだ」
大丈夫、心臓の鼓動は聞こえている。
私はちゃんと生きている。
そう思った瞬間、私の瞳に自然に涙が浮かんできて、そして、流れ落ちた。
「朋也さん……それって……本当?」
「ああ、本当だ。嘘は絶対につかない」
「……わからない。朋也さんが、どうしてこんな私を……」
「恭香は覚えてないだろう。俺はずっと前にお前に会ってるんだ。そして、勝手に一目惚れした」
「えっ……。わ、私に一目惚れなんて……いったいどういうことなんですか? そんなこと……あるはずない」
私が朋也さんと前に会っていたなんて全く思い出せない。
「恭香が入社した頃、『文映堂』の第1会議室にお茶をいつも用意してくれてただろ?」
「あ、は、はい」
「俺はあのメンバーの中にいたんだ。黒髪でメガネの……社長の隣に座ってた」
「え! あ、あの人!? あの人が朋也さん?」
確かにいた――
記憶の中にちゃんとあった。
だけれど……
今の朋也さんとは全然違うような気がする。
あの頃、仕事のミスをするのが怖くて、ただ目の前のことを全うすることだけに集中していた。とにかく必死だったから、周りをちゃんと見ることができていなかったのかも知れない。
あの時の私を、ただただ必死だった私を……朋也さんは見てくれていたの?
朋也さんが私に一目惚れしたなんて信じられない。
有り得ないよ、そんなこと。
もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。