テラーノベル
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夜の街は静かで、風が窓を揺らす音だけが部屋を満たしていた。
不破湊は布団の中で身を小さく丸め、震える肩を押さえていた。
天界を追われた痕跡のように、背中には黒く染まった羽が沈黙を纏って揺れている。かつて純白だったそれを思い出すたび、胸の奥が締め付けられた。
けれど───すぐ隣にいる4人の視線が、その痛みを塗り替えていく。
甲斐田晴が、そっと布団の端を直しながら囁いた。
甲斐田晴「不破さん、大丈夫だよ。僕らがいる。もうひとりで苦しまなくていい」
その言葉に心が揺れる。
不破湊は無意識に甲斐田晴の袖を掴んでしまった。
触れた瞬間、全身に温もりが広がる。それは安心であり、同時に恐怖でもあった。
不破湊「……やめて。そんなに優しくしないで。僕、汚れちゃったんだよ……」
剣持刀也がすぐにその言葉を遮るように言う。
剣持刀也「汚れてなんかない。ふわっちがどんな姿になっても、僕たちにとっては“天使”なんだ。それだけは絶対に変わらない」
不破湊は目を逸らす。喉の奥が震え、泣きそうになる。彼らの言葉は甘すぎて、耳に流し込まれるたびに拒絶できなくなってしまう。
三枝明那は俯く不破湊の肩にそっと手を置いた。
三枝明那「ねぇ、ふわっち。俺たち、ずっとそばにいたいんだ。もう離れたくない」
その指先は柔らかくて、でも逃げ場を塞ぐように重かった。
加賀美ハヤトの低い声が、その空気を決定的に縛る。
加賀美ハヤト「不破さん。天界に居場所がないなら、ここが居場所になればいい。私たちが作る。……貴方だけの世界を」
「貴方だけの世界」。
その響きは危ういのに、不破湊の心を絡め取る。堕天した自分には行き場がないと知っている。追放され、拒絶された記憶が、彼らの言葉を甘美に変えてしまう。
不破湊「……触れないで……でも……」
小さな声が漏れた。拒絶と渇望が同時に口を突いて出る。自分でもどちらが本音なのかわからない。ただ、心の奥で「ひとりになりたくない」と叫んでいるのは確かだった。
甲斐田晴がその声を聞き、静かに微笑んだ。
甲斐田晴「触れないよ。……でも、そばにはいる。だから安心して」
そう言いながらも、その目には熱が宿っていた。誰もが不破湊を見つめ、まるで宝物のように扱う。けれどその視線は優しさだけじゃなく、狂おしい執着を孕んでいた。
不破湊は、胸の奥で葛藤しながらも、結局彼らの腕の中に身を預けてしまう。涙が零れ、頬を伝う。
不破湊「……もう、逃げられないのかな……」
返事はない。代わりに、温もりが重なり、堕ちていく心をさらに深く沈めていく。
夜は静かに、更けていった。
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