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0時を過ぎた夜の街は、普段よりも不自然なほど静かだった。
空を見上げれば、かつて天界と繋がっていた光の道が、黒い雲に閉ざされている。
その下に立っているのは、不破湊。
白くあった羽は、いまや漆黒に染まりきり、月明かりを吸い込むように冷たく揺れていた。
不破湊「……もう、帰れないんだね」
その呟きは、風に溶けて消えていった。
帰還の道を選ぶか否かを決める時間は、とうに過ぎていた。
帰還の道を例え選べたとしても、天界の呼びかけは途絶え、不破湊の存在はすでに拒絶されていた。
ふと、背後から声がかかる。
甲斐田晴「不破さん」
三枝明那「やっと見つけた……!」
剣持刀也「勝手にいなくなるなよ」
加賀美ハヤト「……不破さん!」
振り返れば、4人が息を切らしながら駆け寄ってくる。
不破湊は、涙に濡れた瞳を隠すことなく彼らを見つめた。
不破湊「……僕、堕天した。純潔も、羽も、天界も……全部、なくなっちゃったんだよ?」
甲斐田晴「知ってる。でも、だから何?」
三枝明那「ふわっちはふわっちだよ。羽の色が変わったくらいで、俺たちの気持ちは変わんない」
剣持刀也「むしろ……逃げられな───、いや、そんなふわっちも綺麗だから」
加賀美ハヤト「……不破さんが天使であろうと、人間であろうと。私たちは、ただ“不破さんと共に在りたい”」
4人の言葉は、強さと同時に狂気の熱を孕んでいた。
不破湊の胸の奥で、何かが壊れて、同時に満たされていく。
不破湊「……でも、僕が一緒にいたら……みんなまで天界に狙われるかもしれない」
甲斐田晴「それがどうしたんですが?」
三枝明那「そんなの関係ないよ、!」
剣持刀也「僕達はもう決めたんです。ふわつわちを手放す気はないって」
加賀美ハヤト「不破さん。不破さんが堕ちても、堕天しても……私は、私達は共に堕ちる覚悟があります。」
その言葉に、不破湊の瞳から新たな涙が溢れた。
恐怖と安堵、後悔と愛情。すべてが入り混じった涙。
不破湊「……僕……天界には戻らない。もう、戻れない……。だから……ここにいていい?」
4人は答えを待たなかった。
同時に腕を伸ばし、不破湊を強く抱きしめた。
甲斐田晴「最初からそうだったじゃないですか」
三枝明那「当たり前でしょ、ふわっちは俺たちのだもん」
剣持刀也「二度と逃がさない」
加賀美ハヤト「……この世界に、不破さんだけがいればいい」
抱きしめられた温もりの中で、不破湊は声を震わせて笑った。
それは、天界にいた頃の無垢な笑みとは違う。
傷つき、堕ち、なお愛されることを選んだ──
人間らしい笑みだった。
黒い羽が、夜空の下で大きく広がる。
その羽は堕落の象徴でありながらも、いまや4人の愛の証として輝いて見えた。
不破湊「……みんな、っありが、とう!」
誰にも聞かれない誓いが、その夜、確かに交わされた。
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