毎回こんなイカれてるのしか書けなくてごめんなさい(泣)
この連載はちゃんとえっちあります!!!
大森side
「若井、ここ間違えてる。」
「そこのアルペジオフレーズはもっと軽く…」
「もう一回歌詞読み直してきて。」
「大森さん、次の新曲とMV…」
「来週までにデモの提出お願いします」
「今月の音楽番組の衣装をメンバーの皆さんと次回の打ち合わせで決めるのでイメージ等あれば送って頂けたら…」
「涼ちゃんもここ、曲の最初の音なんだから優しくはっきりと…さっきも言ったとおりにお願い」
「ペダルもっと踏んだ方がいいかも。全部歌詞のイメージと合ってない。」
「涼ちゃんも若井と一緒に歌詞読んできて。」
他人との意思疎通、ミュージシャンとしての責任、曲に向ける想い、向けてきた想い。
いくらメンバーだからといって、俺の全部が伝わるわけじゃないし向こうの全部を掴めるわけでもない。
どれだけ優しさと愛情と熱量を注いでも届かないものだっていくらでもあるし、それを正確に受け取ってくれるかどうかも分からない。
ありもしない噂、熱愛、週刊誌、アンチ、DMがしつこい勘違い厄介オタク。
うるさいなあ。
若井「元貴、お疲れ様」
大森「おつかれ」
若井「…明日はお休みだしゆっくり休んでね」
大森「うん」
藤澤「お疲れ様!またね、もとき」
自分が予測していなかった事が起きると気が狂いそうになる。今も。
あれだけのことを言ったのに二人は何でこんなに優しいんだろう。
毎回俺のあの一言で、もう俺に冷めて、失望して、俺に対しての評価も信頼も無くして、ミセスのボーカルとしての価値も、大森元貴としての価値も全て消失してしまったかと思ってしまう。俺の被害妄想なんだけどさ。
いや、してるのかもね、俺が気付いてないだけで。さっきの言葉なんて全部建前で、自分の評価を守るための、俺のことなんて一切思ってない口先だけのセリフなのかもしれない。
さっきなんて網膜が焼かれるくらい脳に同じ思考が巡り廻ってた。
スタッフなんて俺のことを商品としてしか見ていないし。俺らの曲だって、全部商用で。
…誰からも必要とされないよりかはマシかぁ、なんて。
自分の価値が目に見えるのは安心するから。
昔はこんなんじゃなかったのにな。もっと自分で努力して、必要とされる為に頑張ってた。
今の俺は皆からしたら遠い存在ってやつで、俺のことを凄く必要として手を伸ばしても届かない。直接的な、俺に届く必要は身近でしかなくなってしまった。
もう、俺は上にも下にも行くことが出来なくて、他人のためを想っても届かなくて、報われなくて、
俺が甘えてるだけ?ずっと自分を責めることしかできない。
今日のスタジオは家から近くだったので歩いて帰る。
12月の冷たい空気の中降る雨はなんだか素っ気なくて、俺の心にとどめを刺した。
家に帰ると、足早に洗面所に向かい、棚からカミソリを取り出し自分の左腕にあてがう。
深呼吸をすると身体中を廻ってる血の動きを感じられた。
冷たい刃、力んだ右手、黒色の脳内。
っっっ…。
この瞬間、何年ぶりだろうか。
二の腕にはぷっくりと白色になった傷跡が無数にあり、時間の経過を示している。
一回皮膚を切り裂いた事実は脳に伝わっても痛みになんてならず、秒で快感に変わる。
思いのほか深く切ってしまったようで、血管から血が少し噴き出て自分の服に返り血が付く。が、そんなのも気にならなくて。
気持ちが良すぎる、止まらない。
赤黒い溢れ出す血、脳内があり得ないほど戦慄しているけど、俺のすべてを受け止めてくれた。
やっぱりみんなが言っていることはレトリックに過ぎなくて、俺が生きているこの世もこの瞬間も美化されているから。
何回腕を切ったって薬を飲んで内臓を殺したって、こんなネガティブな感情から一生逃れられないのが辛い。気持ち悪い。
「…もとき」
「?!、は、、」
「急にごめん…さっきあんな感じだったし、連絡つかなくて心配だったから」
洗面所の入り口にはいつの間にか若井が立っていて、眉尻が目につきそうなくらい苦しそうな困り顔をしている。
少し驚いたが、すぐに状況は理解できた。
ここ数年は俺の負担も多く、心身共に何があるか分からないからと若井とりょうちゃんには合鍵を渡していた。
急に来られたパターンは初めてだが、これは俺が全く気付いていなかっただけで向こうからしたら別に急ではない。
一応LINEもインターホンも押しててくれたらしく、さらにここに来て数回俺の名前を呼んでいたらしいが全く気が付かなかった。
「…ありがとう」
「その…それ、一回休憩しよっか、」
そう言い俺の右手に手を添えて、左腕に刺し込んでいたままの刃をそっと引き抜いて棚に置く。
洗面器は水によって拡散された血で余計真っ赤に染まっていて、鏡にも飛び散った無数の俺の血が垂れている。
傍から見たらこんなん事件現場なのに、若井は目を背けることも非難することもせず柔らかい言葉で俺を止めてくれた。
若井は薬箱から消毒液、軟膏、絆創膏、包帯等の一式を持ってきてくれた。
「、、自分でやるから、、大丈夫、、」
「いいよ、意外と手当めんどくさいでしょ」
「、まぁ…」
少し笑いながらも、気を遣ってかけてくれたであろう言葉に染みる。優しさが痛い。
「終わったよ」
しばらくして、止血とその後の手当てを全て済ませてくれた。
「ちゃんとしないと意外に傷跡残っちゃうからね」
「……」
「ごめん」
「なにが?笑大丈夫だよ」
若井にこんな所を見せてしまったこと、その処理と手当までさせてしまった事、さっきから冷えた態度しか取れないこと、すべてが申し訳なくて、絞り出した一言がコレ。鬱すぎ。
「ていうか、べつに初めてじゃないしね~笑」
そうだった。数年前にも我を忘れて腕を刻んでいた時に後ろから若井が止めてくれて…
その時は市販薬もキメていたいせいで物凄く心配されて、震えながらも俺に寄り添ってくれていた。
優しく抱きしめてくれて、俺の話を聞いてくれて。
「…ごめん……」
そんなことを考えていると反射的に言葉が出てきて、無意識に若井に抱きついていた。
若井は少し驚いた顔をしていたが、すぐに両手を背中に添えて抱きしめ返してくれた。
「大丈夫大丈夫…」
「ぅあっ、、ぅっ、、う、」
優しく頭を撫でられると、自然と涙が溢れ出して若井の胸元を濡らす。
ここ数年人の温もりなんて、忘れてしまうくらい感じていなかったし感じようともしなかった。
思い返すと、自分から跳ね返していたようにも思える。周りの全てが怖くて、触れられたくなくて、俺の中に入り込まれたくなくて。
「っぁ、んっ、、、ひっぐ、、」
「元貴、息吸って、ゆっくり……」
「っはぁ…ッ、ふーー、、」
遂には呼吸も疎かにしてしまうくらい泣いていると、若井が落ち着くように誘導してくれた。
「落ち着いた?」
「…うん」
「良かった、」
少しの間沈黙が続くと、なんだか急に恥ずかしくなってきて突き飛ばすように若井から体を離した。
若井は内心嫌がっているかもしれないのに、この優しさは口先だけかもしれないのに。
謎の不安が頭を廻って反射的に後ずさりをしてしまう。
何で俺はこんなにも人を信じられないのだろうか。
「待って、」
若井が右足を踏み出し、俺の腕を掴んで抱き寄せる。
「俺はずっと…死ぬまで、死んでも、元貴の傍にいるから」
「…え、?」
心の中を見透かされたような気がして怖くなった。
と同時に、死生観を軽く語られたような気がして苛立ちも覚える。
俺なんかに人生を捧げないで欲しい。こんな俺みたいな病気のやつになんか構わなくていいから、幸せな人生を送って欲しい。
でも、本心ではなくともその言葉が身内から聞けたのが凄く嬉しくて。
「…軽く言わないでよ」
「本気だよ」
「ねぇ、このまま元貴のこと離したらすぐ消えちゃいそうで怖いんだよね」
そう言う若井の目は先程とは異なり、心を突き刺すような赤黒い、鋭い眼をしていた。
何を考えているのか分からず不思議そうに彼を見つめていると、左手で顎を支えられ顔を近付けられる。
「俺が全部受け止めるから」
そのまま唇を奪われる。
しばらくしてからゆっくりと唇を離され、なにがなんだか分からないままもう一度抱きしめられる。
何故か若井とキスをした衝撃よりも、直前の言葉が頭に響いて、感情を物凄く揺さぶられる。
このままだと、若井の優しさにハマってしまう。一度ハマってしまった物からは抜け出すのはとても困難で、取り返しがつかないと思っている。
依存の末路は全員が地獄だから。
「なに泣いてんの、俺怖かった?」
「へぁっ…ちがくて、、」
「おれ、、ずっとだれからも必要とされてなくてっ、、」
溢れた涙が零れると同時に自然に言葉も溢れ出てきてしまう。
先程の衝撃が嬉しさと安心に変わったのか、今まで溜めていた気持ちを全て吐き出してしまう。
涙が止まらず上手く喋れていない中、一生懸命聞いてくれている若井の瞳はとても優しかった。
「大丈夫、大丈夫…」
「わかいっ、、もう、俺から離れないで……」
相手を信じられるかどうかなんてどうでもいい。例えそれが本音でも、嘘でも、表面上俺を必要としてくれればそれでいいんだ。
若井が少しでも俺を必要としてくれるなら、全力で答える。報われなくても、今はそれくらいしかできないから。
生き甲斐って作れるもんなんだ。勘違いでも誰かの必要として生きれるのがこんなに幸せなんだ。
腕を裂いて臓器を殺したかいがあったって思わせて。早く染まりたい、溺れ死にたい。
離れないでなんて心からは思ってないけど口先だけでも言ってみる。
潤滑に生きるためには、騙し騙されるのも必要だから。
「ずっと俺の傍にいて…一生、死ぬまで、死んでも…」
「…当たり前じゃん」
コメント
6件
すきすぎます🥹🥹
あぁぁぁ!ほんとに大好きですこれ、やばいこれ、