えっ……龍聖君?
ってことは、完全な独身なの?
そんなの……本当に?
「彼女いないんだったらいいじゃない~。ねえ、遊んでよ~」
絵麻ちゃんは、わざわざ龍聖君の隣に行って腕を触ったりして絡んだ。
その行動、大胆過ぎる。
「あっ、ねえ、このイチゴ美味しいよ。絵麻ちゃん、さっきからあんまり食べてないんじゃない?」
その場の雰囲気が壊れないよう、とりあえずバカなことを言って話題を逸らせた。
「絵麻、あんまり飲み過ぎるなって言ったのに。もうワインはおしまい」
碧が、酔ってしまった絵麻ちゃんを優しく介抱している。本当に碧は面倒見が良い。
それにしても、龍聖君に彼女がいないなんて本当なのだろうか。そのことがさっきから頭の中をぐるぐる駆け巡っている。
もしかして……
龍聖君、女性に興味がないの?
まさか……
ううん、そんなことは無いと思う。
って、私はいったい何を考えているのだろう?
でも、これ以上は聞けない。
「彼女、本当にいないの?」なんて――
「今日はありがとう、龍聖のおかげで楽しい時間が過ごせたよ」
「こちらこそありがとう。またリベルテで集まろう」
「うわ~い、嬉しいよ~」
私達は、それからしばらくして解散した。
フラフラになった絵麻ちゃんを碧が送っていき、龍聖君は用事があるみたいでホテルに戻った。
みんな別々になって、私はたまたま近くに咲いていた満開の桜の木を見上げた。
「夜桜、綺麗……」
あまりの美しさに息を呑む。
夜の闇とほんのりとした明かりの中で、いつもは可愛い桜の花が、私の目にはなぜかとても妖艶に映った。
周りの景色や時間、そして、見る者の気持ち……
そういうものに見え方も左右されるのか。
この最高の瞬間を、いつまでもずっと静かに眺めていたいと思った。
「お願い……まだ散らないで……」
私は、そう願わずにはいられなかった。
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