いま僕の目の前には、彼女がいる。
うつ伏せでカーペットに横たわっている。寝っ転がったまま何かしていて途中で寝落ちでもしたのかなと思いつつ、彼女をつつく。しかし反応はなかった。
慌てて彼女をひっくり返し、仰向けにする。ここまでしても起きないのはおかしい、と彼女の手に触れる。
手を回すが、彼女の身体は固かった。彼女は呼吸をしていなかった。
『な、なんで…どうして…』
その答えが返ってくることはない理由なんてわからないが、彼女がなくなっていることは明白な事実だ。 死後硬直が進んでいることから、確実にもう助からないとわかっていたが、僕は救命活動を行った。心臓マッサージをした時に、彼女の身体の固さが死んでいることを囁いてきた。人工呼吸しようにも固まった口は開かなかった。突きつけられる事実に、僕は頭の中が真っ白になった。僕は彼女に口づけをする。溢れる涙が彼女を濡らし、共に泣いてくれているかのように思える。『そっか…そうだよね。僕は王子様じゃないから……君を起こしてあげられないね』
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ある日、一つのニュースがお茶の間に流れた。「○県○市の一軒家にて、花束に囲まれた男女2名の死体が」ーーー