胸がいっぱいになる甘いセリフに、涙をこらえながらうなづいた。
2人の笑顔の向こう側に見えるクリスマスツリーは、まるで私達の未来を祝福しているかのように、さらにキラキラと輝きを増していた。
柊君は、人目もはばからず私を抱きしめてくれた。
すごく恥ずかしかったけど、腕の中はとっても温かくて、ずっとこのままでいたいと心から思った。
そんな素敵な出来事があったあの日――
私は、その時の感動を忘れたくなくて、日記をつけることにした。
月日は経ち、本当にいろんなことがあったけど、ますます柊君を好きになる自分がいて……
柊君も、私のことを結婚相手に選んでくれた。
~6月14日~
『今日は私の誕生日。柊君にプロポーズされた。付き合って1年半、こんな嬉しい誕生日があっていいのかな? 柊君、すごく照れて可愛かったな。キュンキュンしたよ。これから先も柊君とずっと一緒にいられるんだね。本当に幸せ』
ドキドキのプロポーズから5ヶ月。
来月、私達は結婚式を挙げる――
2人でその日に向けてあれこれ準備するのがとても楽しくて嬉しかった。
つい最近の日記のページ。
結婚式場にドレスの試着に行った時のことが書いてある。まだまだ日記をめくる手が止まらない。
柊くんは、『このドレスがいいね。柚葉にすごく似合ってるよ』って、褒めてくれた。
その真っ白のウエディングドレスは、シンプルだけど胸の辺りのレースがすごく綺麗で、素敵なドレスをプレゼントしてもらえることに感謝が溢れた。
ブラウンの肩までのストレートボブも、当日は可愛くアップにしてもらえるよう、ヘアメイクさんと相談して髪型とメイクも決めた。
そして、柊君も白いタキシードに着替え、私の前に颯爽と現れた時は、心臓が止まるかと思った。あまりにも素敵過ぎて、思わず自分の目を疑ってしまうほどだ。
私は、『こんなにもカッコいい最上級のイケメン王子様と結婚するんだ……』と、幸せを噛み締めずにはいられなかった。
『新郎様は、身長がお高いのでお裾直しが要らないですね。本当にお似合いです』
衣装合わせを手伝ってくれた式場の人達も、柊君の姿に溜め息をもらしていた。
『柚葉、どう? 似合ってる?』
ニコニコしながら聞いてくる。
そんな可愛い笑顔で見られたら照れちゃうよ。
『い、いいと思うよ。すごく』
あまりに洗練されたタキシード姿にドキドキして、そんな単純な言葉しか出てこなかった。
もっとマシな褒め言葉は無いのかと、思わず自分の語彙力の低さに心の中で文句を言った。
『柚葉、おいで』
ウエディングドレスの私を手招きした柊君は、式場の人に、『すみません、写真お願いしてもいいですか?』と頼んでくれた。
『はい、撮ります。笑って下さい~』
カメラのシャッター音と同時に、世界一幸せな2人の写真が、スマートフォンの中にたった1枚だけ生まれた。
『とても綺麗に撮れてますね。お忙しいところすみませんでした。ありがとうございます』
柊君が写真を見て微笑みながらお礼を言った。
誰に対しても決して礼儀を忘れない。私は、そんな優しい柊君の性格にも惹かれた。
私達は、本当に幸せだった――
日記に目を通し始めると、ついつい夢中になって何時間も経ってしまう。柊君との嬉しい思い出が、私の中にどんどん浮かんでくるから。
でも、もう止めておこう。
私は、ノートをそっと棚に戻した。
今日は、お昼から親友の真奈と会う約束をしている。
真奈は、柊君の会社で働く私の同期。
同じ部署だし、入社してからずっと仲がいい。年齢が同じってだけじゃなく、映画や音楽の趣味も合う、一緒にいてとてもラクな友達。
私は、洋服を着替え、部屋を出て待ち合わせの場所に向かった。