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第一章:旧国が復活!?
国際会議場の円卓は、今日も今日とて混沌の極みに達していた。
「あー、またアメリカが遅刻アル。あいつの時計はいつもハワイ時間で動いてるアルか?」
語尾に「アル」をつけた中国が、書類をトントンと机に叩きつけながらため息をつく。
「……上司死ね。なんで今週だけで残業が50時間を超えてるんだ……。ドイツ、そっちの進捗はどうだ?」
目の下に濃いクマを作った日本が、虚ろな目で隣のドイツに声をかける。
「……私の上司も死ねばいい。この議事録を片付けたら、次はEUの予算編成だ。私たちはいつになったら眠れるんだ……?」
ドイツもまた、エナジードリンクを片手に幽霊のような顔で愚痴をこぼしていた。二人は固い絆で結ばれた「社畜仲間」である。
「おや、二人ともそんなに疲れた顔をして、自慢の紅茶でも淹れてあげようか? 最高のブレンドなんだが」
紳士的な笑みを浮かべたイギリスが親切心から提案するが、日本とドイツは一瞬で顔を青くして首を横に振った。イギリスの料理と飲み物のセンス(見た目と味の破壊力)は、国際問題レベルで有名だったからだ。
「ハハハ! 親父の紅茶なんて飲んだら、社畜じゃなくて本当のゾンビになっちゃうぜ!」
「誰が親父だ、このバカ息子! 遅刻しておいてどの口が言うんですか!」
バァンと勢いよく扉を開けて入ってきたアメリカに、イギリスが即座に怒鳴り散らす。
その横では、ロシアが会議中にもかかわらずマイペースにウォッカの瓶を煽り、イタリアは「ピッツァ食べたいなぁ」と窓の外を眺めていた。
「はぁ……。静かにしてください、皆さん……」
円卓の文頭で、まとめ役の国連が深く頭を抱え、胃薬を飲み下した。めちゃくちゃな遅刻魔、ギスギスした不仲、そして限界を迎えた社畜たち。いつも通り、会議は一歩も前に進まない。
しかしその時、国連のスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。
画面を見た国連の顔が、驚愕でみるみる青ざめていく。
「こ、これは……!? 皆さん、静かに、静かにしてください!!」
国連の悲鳴のような大声に、ようやく国たちが口を閉ざす。
「国連さん、どうしたアル? そんなに慌てて」
「た、大変なニュースです……! 世界各地の観測所から報告が入りました! かつて崩壊し、歴史から消えたはずの……『旧国』たちが、一斉に復活したという情報が入りました!!」
「「「はあぁぁぁあ!?!?!?!」」」
会議室に絶叫がこだまする。
そう、この世界には「国家が滅亡、または体制崩壊しても、十何年(あるいは数十年)が経過すると、何の前触れもなく旧国としてそのままの姿で復活する」という、極めて奇妙な仕様が存在していたのだ。
「旧国……。まさか、あの人たちが……?」
日本が目を見開く。その脳裏に、かつて自分を厳しく、しかし不器用に育ててくれた「父親」の姿がよぎった。
第二章:おいしい紅茶で釣られた紳士
「さて……情報によると、旧国たちの主要メンバーが、ある特定のエリアに固まって出現したようです」
国連が地図をプロジェクターに映し出す。場所は、現国の誰もいない中立地帯の荒野だった。
「誰か、現地の状況を確認しに行ってくれる人はいませんか? かなり個性の強い方々ですから、慎重に接触してほしいのですが……」
国連が周囲を見渡すが、全員が一斉に目をそらした。旧国といえば、かつて世界を激動に巻き込んだ曲者ばかり。まともに話が通じるかもわからない。特にドイツは「もしあの『黒歴史』が復活していたら、私の精神がもたない……」とブツブツ呟いて耳を塞いでいる。
国連は困り果てたが、すぐに名案を思いつき、ニヤリと笑った。懐から、丁寧に包装された小さな缶を取り出す。
「おや……困りましたね。引き受けてくれた方には、この『世界に数缶しか存在しない、幻のヴィンテージ・ダージリン茶葉』を差し上げようと思ったのですが……誰もいないなら仕方ありませんね」
ピクッ、と一人の男の肩が跳ねた。
「……ほう? 国連さん、今なんと言ったかい?」
イギリスが目の色を変えて身を乗り出す。紅茶のこととなると、この紳士は手段を選ばない。
「幻の茶葉、ですか。ふむ……国際社会の平和を守るのは、やはり紳士の義務ですからね。私が代表して、その旧国たちとやらを偵察に行ってあげましょう!」
「本当ですか! 助かります、イギリスさん! ではよろしくお願いします!」
こうして、物欲(紅茶欲)に完全に釣られたイギリスは、一人で旧国の出現地点へと向かうことになったのだった。
第三章:カオスな再会
イギリスが指定された場所に到着すると、そこはすでに異様な熱気に包まれていた。
遠くから、何やら激しい怒鳴り声と足音が聞こえてくる。
「ひどいんね! ナチはいくらなんでもひどいんね!!」
そう叫びながら全力で走ってきたのは、軍服を着た男――イタリア王国(イタ王)だった。パスタとピッツァを愛する彼は、涙目で必死に逃げている。
「うるさい、この駄犬が!! 何度が叩けば時間通りに起きるんだ! お前のせいでスケジュールが15分も遅れただろうが!!」
その後ろから、黒い軍服をきっちりと着こなしたナチスドイツ(ナチス)が、恐ろしい形相で追いかけていた。復活早々、いつもの内輪揉めである。
「おやおや、朝から元気なことだな、ナチスの旦那」
その光景を、岩に腰掛けながらマイペースにウォッカの瓶を傾けて眺めている大男がいた。ソ連である。
そして、その隣には、陸軍の軍服を一切の乱れなく着こなし、腰に鋭い刀を帯びた、小柄ながらも凄まじい威厳を放つ男が立っていた。
「……相変わらず騒々しい。ナチス先輩も、イタ王を蹴る気力があるなら、さっさと次の行動予定を立てるべきです」
凛とした声でそう告げたのは、大日本帝国陸軍(日帝)だった。
日帝はしっかり者で、常に冷静。だが、どこか周囲の空気に対して鈍感なところがあった。ちなみに、旧国たちは一度消滅を経験しているため「ほぼ死んでいるようなもの」であり、肉体的にどんな衝撃を受けても死なないという特性を持っていた。
イギリスは、そんな濃すぎる面々を前にして、引きつった笑顔で声をかけた。
「ハロー、旧国の皆さん。私は現イギリス。君たちを保護しに来たんだが……。そこの彼らは何をしているんだい?」
日帝はイギリスに気づくと、小さく一礼して淡々と答えた。
「ああ、イギリス殿ですか。お久しぶりです。……あれはいつものことです。イタ王がいつまで経経っても起きないもので、いつも通りナチス先輩が『蹴り』で起こしたところ、あのように拗ねてしまいまして」
「いつも通り……?」イギリスが困惑する。
ソ連がウォッカをグビリと飲み、笑いながら補足した。
「そうだ。こいつを起こす時、日帝なら『刀(の峰打ち)』、俺なら『ウォッカの空き瓶(で頭を小突く)』、ナチスなら『容赦のない蹴り』と決まっていてな。今回はナチスの番だっただけだ」
「起こし方の治安が最悪すぎるだろ……」イギリスは思わずツッコミを入れた。
このまま放っておけば、ナチスがイタ王を本当に消滅(死なないが)させかねない。イギリスは国連から「全員を会議場に連れてくるように」と言われていたため、懐から一計を案じた。
「おい、イタリア王国くん!」イギリスが叫ぶ。
「な、何んね!?」逃げながらイタ王が振り返る。
「私の家に来たら、最高のピッツァをいくらでも焼いてあげよう! だから、一緒に国連の会議場へ行かないかい?」
「本当んね!? イギリスの家でピッツァ焼いていいんね!? いくおー!!!」
「ピッツァ」という単語を聞いた瞬間、イタ王は光の速さで方向転換し、イギリスの背後にピタッと隠れた。あまりの現金さに、追いかけていたナチスが呆れて足を止める。
「フン……まあいい。行く場所があるなら付いていってやる。日帝、ソ連、行くぞ」
「分かりました、ナチス先輩」
日帝が頷く。こうして、イギリス(と、ピッツァに釣られたイタ王、それについていく日帝、ナチス、ソ連)の一行は、イギリス・アメリカ・カナダが共同で暮らす「イギリスの家」を経由し、国連会議場へと向かうことになった。
第四章:とりあえず自己紹介ーーー!
ガサガサ、と国連会議場の重い扉が開いた。
イギリスの後ろから入ってきた四人の姿を見た瞬間、現国たちの間に激震が走る。
「本当に……復活したアルな……」中国が息を呑む。
「げぇっ!? マイ・ブラックヒストリー(黒歴史)!!」ドイツが頭を抱えて机に突っ伏した。
「……親父、相変わらずウォッカ臭いね」ロシアがソ連を見て小さく呟く。
「皆さん、お揃いですね。それでは……混乱を避けるためにも、まずは旧国の皆さんから、現国の若者たちに向けて、改めて『自己紹介』をお願いします」
国連が進行を促すと、まずは黒い軍服の男が一歩前に出た。
「ナチス・ドイツだ。ここにいる日帝、ソ連、イタ王とは戦友であり、親友でもある。……おい、そこの眼鏡をかけた社畜(ドイツ)」
「ひっ!?」ドイツが肩を跳ね上げる。
「相変わらず情けない面をしおって。私の名を黒歴史などと呼ぶな」
「う、上司死ねぇ……(泣)」ドイツはすでに精神的ダメージを受けていた。
続いて、大きなウォッカの瓶を持った巨漢が笑う。
「俺はソヴィエト社会主義共和国連邦、ソ連だ! まあ、固いことは抜きにして、まずは皆でウォッカでも飲もうじゃないか。ロシア、お前も飲むだろ?」
「うん、親父。あとで一緒に飲もう」ロシアだけは通常運転だった。
次に、ピッツァの箱(道中でイギリスが渋々買ったもの)を抱えた男が、語尾を跳ねさせて手を振る。
「イタリア王国、イタ王って呼んでね! ピッツァとパスタが大好きなんね! 趣味は仕事をサボることなんね!」
「お前は復活して早々サボる宣言をするな!!」ナチスから鋭い拳骨が飛び、イタ王の頭に綺麗にクリーンヒットした。「痛いんねー!」と転がるが、死なないのでノーダメージである。隣にいた現イタリアは「あはは、僕より自由な人がいたぁ」と呑気に笑っていた。
そして最後に、陸軍の帽子を深くかぶり、刀の柄に手を添えた男が、ツカツカと前へ出た。
張り詰めた空気が会議室を包む。
「大日本帝国陸軍……日帝だ。一人称は『私』。常に規律を重んじ、不条理には毅然と立ち向かう。怒らせると自分でもどうなるか分からないので、諸君、節度ある行動を心がけるように」
その凛とした立ち姿、隙のない雰囲気に、現国たちは圧倒される。
……が、日帝がほんの少し動いた瞬間、陸軍の帽子の隙間から、何やら「ふわふわとした三角形の耳」がピコピコと動いたのを、数人が見逃さなかった。
(……え? いま、耳動いたアルか……?)中国が目をこする。
実は、日帝は帽子を脱ぐと「猫の耳としっぽ」があるのだが、旧国メンバー以外の現国たちはその事実をまだ誰も知らない。本人は隠しているつもりだが、たまに感情に合わせて帽子の中でピコピコ動いてしまうのだった。
「お、おいおいおい!! 待てよ!!」
ここで、一人の男が騒ぎ出した。アメリカである。
アメリカは日帝の姿を見るなり、目を輝かせて駆け寄ってきた。
「ワオ! 会いたかったぜ、日帝chyan(ちゃん)!! 復活するなんて最高じゃん! これから毎日俺とパーティーしようぜ!」
アメリカは超ポジティブに親愛の情を込めて肩を組もうとする。
しかし、日帝の目が一瞬で氷のように冷たくなった。日帝はアメリカ(米国)のことが、ぶっちゃけめちゃくちゃ嫌いだった。だが、鈍感なアメリカはその嫌われっぷりに全く気づいていない。
「……触るな、米国。気安く私をその奇妙な名前で呼ぶなと言っている」
日帝が静かに刀を数センチ引き抜くと、凄まじい殺気が放たれた。
「お、落ち着くアル日帝! ここは会議場アル!」中国が慌てて止めに入る。
その時、会議室のドアが再び、今度は勢いよくバーン!!と開いた。
「ただいま戻りましたにゃー! お兄ちゃん、今日の晩ご飯の買い出しに行ってきた……って、あれ???」
入ってきたのは、日本と双子の女の子、にゃぽんだった。
セーラー服を着て、頭には可愛い猫耳が生えている。BL(ボーイズラブ)が大大好きな腐女子であり、料理が得意な彼女は、会議室の光景を見て完全にフリーズした。
にゃぽんの視線の先には……。
冷徹な表情で刀を構える、最推し(?)属性の塊のような父・大日本帝国(日帝)。
それを超ポジティブな笑顔で口説く(ように見える)アメリカ。
お互いに愚痴を言い合う限界社畜の日本とドイツ。
イタ王を容赦なく蹴り飛ばす黒軍服のナチス。
それを見て笑いながらウォッカを飲むソ連。
「な、ななな……何この神空間……!! 旧国復活!? しかも父様がいるにゃん!? アメリカ×父様!? それともナチス×イタ王!? 供給が多すぎて頭がパンクするにゃあぁぁぁ!!!」
にゃぽんは鼻血を吹き出しそうになりながら、自分のノートを引っ張り出して猛然とメモを取り始めた。
「あ、にゃぽん。おかえり……。見ての通り、我が家はこれからさらに大変になりそうだ……」
実の父親である日帝を「父さん」と呼ぶ日本は、さらに深くなった目のクマをさすりながら、深い、深い、ため息をつくのだった。
国連は、もはや制御不能となった会議場を見渡し、机に突っ伏した。
「……誰か、私に、もっと強い胃薬をください……!!」
旧国たちの復活により、現国たちの日常は、これまで以上に混沌としたギャグに包まれていくのであった。
(第一章〜第四章・完)
コメント
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第2話、読了しました! 旧国復活というぶっ飛んだ設定、めっちゃ好きです。社畜仲間の日本とドイツの「上司♡♡♡」連呼には思わず笑っちゃいましたw イギリスが紅茶に釣られて偵察行くのも、らしさ全開で良いですね。 そして日帝……猫耳ってマジですか!? あの凛とした佇まいとのギャップがたまらない。にゃぽんが鼻血吹き出すのも納得の供給量です。続きどうなるんだろう、すごく気になります!