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ヨルムンガンドはいいやつなん?最後のちょっと怖かったけど… すまない先生本当に命令でしか動いてくれなくなっちゃったんだ…ほんと、心がボロボロだよね… クルカとすまない先生2人…クルカ何もしないといいけれど
(《命令》じゃないと動かないなんて……)
後ろをついて歩くすまないを見ながらエウリは静かに考える。隣に少し控えて歩くクルカは玉座の間を出てからずっと顔を伏せているので表情が見えない。それ故にどんな命令をされたかの推測もつかない。
(出来るか分からないけど、全力を尽くしてすまない君が心を取り戻すのを助ける。それが私に出来る事だから)
数日前、ボロボロになった状態で目を覚ましたすまないを見てそう誓った。出来る事はなんだってやると、そう誓ったのだった。
翌日。
ピンポーン!
その音だけは軽快なインターホンの音に気付き玄関に出る。そこには四天王の一人、ジルが立っていた。
「おはようございます、ジルさん」
「おはよう、エウリ殿。ヨルムンガンド様より呼び出しです。“貴方お一人で”」
エウリはそれに焦った。
「ま、待って!?なんで!?すまない君連れていっちゃダメなの!?」
「ええ、ダメです。今日は貴方お一人で、との御命令です」
エウリは顔を顰めた。正直この状態のすまないを置いて行きたくない。しかし命令は絶対である。クルカに任せるという手もあるが昨日の命令が分からないため安心は出来ない。
(でも……クルカならすまない君に酷い事はしないはず……そうよね)
エウリは自分にそう言い聞かせ
「少し待っていただけるかしら?クルカに言って来るので」
と言って厨房に向かう。
「クルカ!」
厨房で食器を洗っていたクルカが振り向く。
「はい、なんでしょう。エウリ様」
「私だけでヨルムンガンド様に呼ばれたらしいから行って来るね。その間すまない君のことよろしく頼んだわよ」
「分かりました。行ってらっしゃいませ」
クルカはそっとお辞儀をした。エウリは
「じゃあ、行って来ます」
と言って家を出た。
クルカはダイニングの椅子に座ったまま微動だにしないすまないを見て、少し考えたあと肩を突いた。するとテーブルの一点を見つめて動かなかった視線がゆっくりとクルカの方に向けられた。
「……買い物行くから着いて来てくれる?」
そう言ったがすまないは反応しない。
(やはり《命令》でしか動かないのね)
クルカは慣れない行動に少し戸惑いながら
「《買い物に行くわ。ヘビの国の土地勘を覚えてもらう必要もあるから着いて来なさい》」
命令形で言うとすまないはこくりと頷き立ち上がった。
(……慣れないわ)
と考えながらすまないに着いて来るように手招きして共に買い物に出掛けた。
その頃。
「そういえばお前はどこに行くにしても護衛を付ける事を拒むのだったな」
ヨルムンガンドにそう言われエウリはそっと目を逸らした。もちろん護衛に不満はないのだが、あまり遊び回っていると怒られるので護衛を拒否している。
「そこでだ」
ヨルムンガンドが言葉を切る。エウリはそっと顔を上げる。
「今度Mr.すまないを連れて来い。そしてこの国の兵士と戦わせる。それですまないに充分な強さがあると分かればお前の護衛とする」
エウリは息を詰まらせた。確かにすまないなら無用な口出しはしないだろう。しかし、まだろくに鍛錬もしてないすまないがよく訓練された兵士達に敵うはずがない。例え英雄の子供だとしても、だ。
「失礼ですが、ヨルムンガンド様。貴方はMr.すまないを排除するなさるおつもりですか?」
それを聞いたヨルムンガンドはククッとおかしそうに笑った。
「ヤマタノオロチのお客様だ。そんなわけないだろう」
そうどこか嘲るように言い、エウリを下がらせた。その目はどこか面白がっているような邪悪な光を宿していた。