「というわけで、店への道くらいは覚えた?」
クルカはそう問う。しかしすまないは首を傾げるばかり。
(まさか、この子どうして着いて来てって言われたか分かってなかったの?土地勘を覚えてって私言ったわよね)
クルカは頭を抱えた。
「ダメだわ……扱い難しすぎる……」
「ただいま戻りました」
クルカがそう言って屋敷に入るとエウリは先に帰って来ていた。
「おかえり、クルカ。少しすまない君に話あるから借りるわね」
そう言ってすまないの腕を引いてリビングへ向かった。
「すまない君、聞いて欲しいのだけれど……一週間後、ヨルムンガンド様は貴方と蛇一族の兵士達を戦わせる気らしいの。断ったらどうなるかは分からないけど、今は貴方の身を優先して欲しい……断る?」
すまないは数秒考えた後
「……命令なら……従う……」
と言って、再び黙ってしまった。
「し、死んじゃうかもしれないんだよ!?すまない君はそれでいいの!?ううん、でも私が良くないわ。やっぱり断ろう!?」
それでもやはり
「……命令なら、従う」
としか言わなかった。
一週間後。
「だから、辞めさせてください!いくらなんでもおかしいです!」
エウリはそうお願いしたが、ヨルムンガンドは首を縦には振らなかった。ただ
「辞めさせるというのなら、お前が外に出る時は必ず護衛を付けるのを認めるか、お前が全く外に出ない事だな」
「そ、そんなの……」
エウリは言いかけてはたと迷った。
(私が……私が外に出る時に護衛を付ける事を認めれば……)
エウリが口を開きかけるとすまないがぎゅっと手を握った。
「すまない君……?」
すまないは何も答えず背中に背負っていたダイヤの剣を抜いた。戦う気だ。
「エウリ、Mr.すまないは戦う気のようだ。それに対して第三者のお前がどうこういう権利は無い。修練場に向かえ」
そう言うとヨルムンガンドは玉座から立ち上がり、身を翻して消えて行った。
「ごめん……ごめんね……私が断らなかったせいで……!」
そう涙ながらに謝るエウリの前ですまないはぼんやりとしていた。
「……」
すまないは自分の手に落ちたエウリの涙を不思議そうに眺めていた。
「……行こう……」
「……コク」
ギィィィ……
修練場に入ると、蛇一族の兵士の中でも腕の立つ兵士が数人待ち構えていた。
「お、おかしいです!一対多なんて!」
「お前は正式な護衛を付ける事を拒んだ。だから私がその代わりにその少年を護衛にする事を“特別に”許そうと言うのだ。それを許すにはMr.すまないがそこらの護衛より格段に強いと言う事を示さねばならない。故に妥当な判断だ」
ヨルムンガンドはそう言って冷たい視線で射抜く。
「……っ……すまない君、あの人達は強いわ。そこらの護衛より格段にね。ダメだと思ったらすぐに逃げるのよ、いいね?」
すまないはぼんやりとしたまま分かったのか分かってないのかよく分からないが、とりあえずこくりと頷いたので下の円の中に送り出した。
『では、始めっ!』
コメント
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うわぁお…ヨルムンガンド…お前は〇んだほうがいい。