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斯うして芥川と銀を拾った俺は、取り敢えず風呂に入れることにした。……のだが。此処で俺は或る問題に直面していた。

────芥川が、風呂に入ろうとしない。






先ず二人をポートマフィアに連れてきた。急に俺が子供───然もボロボロである───、を連れてきた為、黒服達の視線が痛かったが、気付かないふりをした。

流石に俺が銀を風呂に入れるのは憚られた為、銀は、姐さんに頼んで入れて貰うことにした。其処までは善かったのだ。

そして、芥川を風呂に入れようとして、今に至る。


まあ、気持ちは判らない訳でもない。知らない場所に知らない人間、新しい環境。

まして、衣服が無いと異能力が使えない芥川にとって、風呂に入るということは無力になるということ。つまり、何か有ったら死ぬ、ということであって。

一歩間違えれば死ぬ。そんな状況下で芥川が素直に入る訳がない。


────嗚呼、彼の青鯖は如何やって入れていたのだろうか……。


20歳になっても風呂に苦手意識を持っていた芥川を思い浮かべる。彼の様子じゃ、無理矢理入れたな、彼奴……。

少しでも安心して貰いたい。此処にはお前を傷付ける奴は居ない、と判って貰いたい。若し傷付ける奴が居たら、俺が其奴から守ってやるから。


「芥川」


芥川が安心出来るように優しく頭を撫でる。


「若し誰かがお前を傷付けようとするなら、俺が全員ぶっ倒す」

「心配なら一緒に入ってやる」

「だから、風呂に入ってくれ。傷口に菌が入ったら悪化しちまう」


「……………一緒に、入ってくださるのなら…」






……今俺は物凄く後悔している。


簡単に、「一緒に入ってやる」なんて云った自分を殴ってやりたい。何故あんな事を云ってしまったのか。

そんなことを考えている俺の前には、申し訳程度に腰にタオルを巻いている芥川が居る。

前も一緒に風呂に入っていたじゃないかと思うかもしれないが、彼の時は今より感情が芽生えてきていて、芥川も割と本気の抵抗をしていたので。下心とか、そんな場合ではなかったのだ。


一度風呂に入ると決めたら抵抗してこない為、俺が色々考える余裕ができてしまう。

細くて頼りない体。黒いのに、先っぽだけ白くなっている不思議な髪。其の全てが愛おしい。

わしゃわしゃと芥川の髪を洗ってやる。最初は埃等でゴワゴワしていた髪も、何回か洗う内にサラサラになってきた。

一通り洗い終えたので泡を流す。泡が目に入るから瞑っとけよ、と云うと、素直にぎゅっと瞑るのが鏡越しに見えて、笑みが溢れた。かわいい。


却説、髪の毛も洗えたし、後は。


「芥川。体は自分で洗えるか?」

「…………」


芥川が少し考えた後、多分、と首を傾げながら答えた。

嗚呼、此れは多分出来ないやつだ。

俺は此れから自分に課せられる拷問とも思える時間のことを思い、そっと溜め息をついた。

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(๑•̀ㅂ•́)و✧ウチだったら理性がどっかに飛んでいってるな〜

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