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一緒にいて苦じゃない相手。俺の中で、すぐに思い浮かぶ相手と言ったら、まぁ、伊佐くらいだろう。 同じ教室、同じ部活で毎日のように顔を合わせる。
「ねーってばー!しゅーちゃん!」
「あ?あぁ、悪い」
「考えごと?」
「そんなとこだ」
何考えてたの?と聞かれるが答えない。というか答えたくない。馬鹿正直に言ってしまえばニヤニヤされて、ここぞとばかりに質問攻めされる。大した事じゃ無いと誤魔化し、別の話に切り替えよう。しかし何を話したものか…
「そーいえばさ、しゅーちゃんから見て、はーちゃんのベースはどうよ?」
「反郷?」
「ダブルベースの感想だよン」
伊佐から話題を切り替えてもらって助かった。でも、此処にいない反郷の話をされるとは思ってなかったな。ダブルベースの感想か。
“見て”というより“聴いて”の方が正しいだろう。
「安心して任せられる」
「と!言いますと?」
「声の低さも、土台としての重さも申し分ない。実力があると思ってるよ」
いつもは土台として、曲全体を支える役目を担っている。歌詞をメインで歌うのは数秒だけ。
その数秒の間、誰かに役目を一旦預ける。俺のベースの代役が反郷というわだ。
声の低さは十分。普段は胡散臭い面もあり、大里への強い愛を語る面もあるが、歌う時はしっかり歌う。
「シンヨーしてんのね」
「VadLipは個々の実力が高い。信用しないと思うか?」
「まっさか〜」
「任せる任せられるというのは、そういう事だ」
VadLipは実力主義なグループ。春宮の独断で決められたメンバーではあるが、今となっては彼の人を見る目に賞賛だ。
「はーちゃんに直接言ったら?」
「面と向かって言われたら困るだろ」
「喜ぶと思うよ?」
あの反郷が褒められて素直に喜ぶか?いや、俺の憶測でそんな事を言うのは良くない。ただ彼は、分からない部分が多い。
丁寧な言葉遣いと声色の端々に、ただのお坊ちゃんでは無い雰囲気を感じる。実際、伊佐と仲良く悪戯をして、揉め事に首を突っ込んでは程よい距離で楽しむ。今まで何となく接していたが、改めて思い返すと本当に謎が多い。
「まぁでも、わざわざ言う必要ないか!」
「どうしてそう思う?」
「しゅーちゃんが思いっ切り歌えてるからさ」
何故か嬉しそうに答えた。俺は、そんなに歌えているのか?そもそも俺の歌う姿は、どう見えてる?
「楽しそうだよね」
俺の心を読んだかのような言い方。
「僕も楽しいよ。 しゅーちゃんの歌、ほぼ毎日 間近で聴いてるし?」
「そうか」
「その特権持ってるの、このクラスで僕だけだもんねぇ。しゅーちゃんの歌の素晴らしさ1番最初に見つけたからかな?」
「大袈裟だ。クラスが同じだけで…」
俺の机に肘をつき、頬杖しながら話を遮った。人の話くらい最後まで聞いてくれ。
「大袈裟でも何でも良いよ…しゅーちゃんが歌ってるんだから」
目を細め、柔らかい笑みを浮かべた。微笑んでる伊佐は一言も発することなく俺を見ている。口を閉じれば何とやらってやつか。 元々綺麗な顔立ちの伊佐。よく喋るよく動くよく…笑う、だから気に止めて無かった。
こんなにも、綺麗だってことを…
(今の俺、どんな顔してるんだ)
「しゅーちゃん?」
「…何でもない」
「えぇ〜?うっそーん」
ほら戻った。おちょくってくるし、指でつついてくるし。何か言わないといつまでも執拗く話しかける。正直、うるさいと思う日は少なくない。
でも、これが1番落ち着くことを俺は知ってる。
「課題、手伝ってやらないぞ?」
「わぁ〜!それだけはご勘弁を!」
「じゃあこの話は終わりだ」
「へーい」