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ゆき
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一人暮らしの家は冷たくて心地よい
一人が好きな俺にとってはありがたいことで
仕事の支度をしながらテレビをつけて
ニュース番組に変える。
今日も報道されている“佐野勇斗”の熱愛
都会の住宅街を歩く佐野さんと
その隣にとあるアイドルグループの女性と思われる人と親しげに歩いている写真
そのアイドルの方の手のほくろと位置が一致していることから確実だと、
…多分嘘か勘違いのどっちかだろうにな、
どこからそんな補償が飛んでくるのかはわからないけど
少なくとも佐野さんがそういうことする人には見えなかったし
この女性も同じ理由だ。
今は大事な時期だろうしこんなヘマ犯さないだろう、
本当だとしても外で堂々としてないだろうし
「今度は誰だよ…」
俺はこの人をよく知らない
熱愛報道前からどこかでみたことあるな?
って人なのだが
だけどなんか見てる
わかんないけど自分でも不思議
有名人なのかよくわからない
なんもわかってないけどなんやかんや見てる
なんで見てるのかはわからないけど
見てて楽しいから、かな?
でもそれだけじゃない気がする
まぁいいか
テレビのリモコンを手に取り電源を切る
俺は仕事場の花屋に向かう
好きな仕事ができるならそれでいい、
ほのかにかおる花の匂いで
いつも元気をもらっている
綺麗な花もたくさん、まるで天国のような
からコロン
まだ開いたばっかなのに早いな、
誰だろう?
俺はちらっと入り口付近を見ると
「…え?」
朝のニュースで取り上げられていた佐野勇斗の熱愛相手とされる人がそこに立っていた
こちらの視線に気づく
俺は慌てて営業スマイルを作る
そしてこちらへ駆け寄ってくる
「あの…恋人に花を贈りたいんですけど」
一気に緊張してくる
お相手は?なんて言えない
変装はしてきているようだが
ほくろの位置ですぐわかった
手首に3個のホクロが横に並んでいるという
特徴的なほくろなため
わかりやすい
せめてコンシーラーか何かで
隠した方がいいのにな、なんて思いながら
恋人に向けた花を探してみる
手には少し滲んだ汗
…大丈夫、普通の人と思って接すればいい
それがこの人にとっても
最善の対応だろうから。
微かに震える手で花をとってお客様の方を向いて花言葉を説明する
「こちらの花はいかがでしょう?こちらの花は
“貴方を愛している” “貴方以外考えられない”
と言った花言葉がございます」
少しの沈黙
お客様はとても真剣そうに悩んでいた
恋人に送る花にここまで悩めるとは
かなり愛しているのだなと他人の俺でもわかる。
そしてしばらく悩んだ末、顔を上げて
「…これでお願いします!」
さっきの顔とは違いパッと明るくなる顔
そんなに好きなんだな…
このことは秘密にしておこう
お花を優しく包み保存方法を説明した後花束を渡す
マスク越しでもわかる笑顔に俺もつられて笑顔になる
すごく嬉しそうに大事に花束を抱えて
「本当にありがとうございました!」
パパラッチや週刊誌に追われていたのか
最初は警戒されていた
だけど
久々に普通の人みたいな対応をされたのか
とても嬉しそうだった
それを見て俺も嬉しくなった、
あんなに花束を大切に持つ人は
なかなかいない
あの花枯れなければいいのにな
俺は軽くお辞儀をして
「またのご来店をお待ちしております!」
と明るく笑顔で返した
あのお花の意味がお客様の恋人に伝わりますように。
その願いも込めて俺はお見送りした
何度も何度も深くお辞儀をしてくれて
「またきます!」
明るく大きな声
…俺はこうやって笑顔になって帰っていくお客様のお手伝いをしたくて
この仕事やってたんだよな
最近忘れかけていた気持ちを思い出して
少し暖かい気持ちになる
さぁ今日も仕事頑張りますか
店に戻るとお客様が1人いた
入店音がするようになっているが聞こえなかったので少し驚く
お客様はひまわりを見つめていた
その横顔にどうも見覚えがあったが
俺は邪魔しちゃ悪いと思いそーっと
移動してお花にお水をあげていると
「すいません」
と話しかけられて横を向くと
先ほどの1人でひまわりを見つめていたお客様だった
少しなんだか驚いた顔?をした気がするが
気のせいだろう
「はいなんでしょう?」
この人マスクにサングラスってしかもニット帽まで…すごいなぁなんか
こういうファッショなのか?
サングラスで目がよく見えないけど
目があるあたりを見つめて返事を待っていると
「…ひまわり、買いたくて」
「わかりました!」
さっきからひまり見てたもんな
なんでそんなひまわりを見てるのかも
わからないけど
いや俺が知る必要はないか…
俺は置いてあるひまわりを手に取る
そう言えば昔、俺にひまわりをくれる男の子がいたなぁ
さーちゃん、だっけ?
あだ名で覚えてたからフルネーム知らないけど
よく一緒に遊んで
その度にひまわりをくれたり
さーちゃんのお母さんがひまわりの押し花をくれたりして
それを今も大切に飾ってある
さーちゃんは引っ越してから縁が切れて
確か噂によればなんかすごいでっかい仕事してるらしい
元気してるかなさーちゃん
思い出に少し浸った後
仕事に戻り
ひまわりを重ねていると
「昔、小さい頃によく遊んでたじんちゃんって子がいるんですけど
その子に会えるので…渡したくて」
少し照れ気味に話してくれた
この人も昔の大切な人に
このひまわりを渡そうとしてるんだな
そのお手伝いできるのってなんか
嬉しいな
「そうなんですね…喜んでもらえるといいですね!」
明るく返し花束を渡す
「ありがとうございます、!」
そしてまた見送る
あの人のお花も枯れなきゃいいのに
でも花はいつしか枯れてしまうもの
だからこそ
綺麗に映る
…さぁ、少し休憩しようか、
店に戻ると電話が鳴った
確認するとお母さんからだった
「はいもしもし」
出るとお母さんは嬉しそうな声で
「昔遊んでたさーちゃんがこっちに帰ってきたってよ!!今うちにいるんだけど仕事何時に終わりそう?」
さーちゃんがこっちに?!
「あぁ…6時に終わるけど」
「なら6時にこっち帰ってきなさい!」
「あ、うん」
電話機を置いた瞬間に
顔が熱くなる
さーちゃんに会える?、
嬉しすぎて飛び跳ねそうだ
どれだけ待ち侘びていたか
俺はルンルンでその後も
お客様のお手伝いをした
「またのご来店をお待ちしております!」
最後のお客様をお見送りした後
電気を消しドアに鍵をかけガレージを下げる
俺は少し急足で
実家へと向かった
いつぶりだろうかこんなに胸が躍るのは
俺とさーちゃんは2個歳が違って
さーちゃんは俺のふたつ上
大人になったさーちゃんなんて
見れると思ってなかったから相当嬉しい
俺は…こんな大人になったけど
さーちゃんはきっと立派な大人になって
結婚して…たりとかな、
そう思うと胸が苦しくなるのはなんでだろう?
この気持ちに戸惑うが
気のせいだと思い込み足を動かす
うちの花屋と俺の地元は結構近いため
走れば15分でつく
はやくはやく!15分ほど必死に走る
一度も止まらずに
見えてきた俺の家
急いで鍵を開けて入ると
俺より大きい靴が並んでいた
…本当にきたのか、
「あ!さーちゃん、じんと帰ってきたよ!」
奥からお母さんが出てきて
横から足音がする
なんだかヒヤッとする
緊張で話せるかわからないけど
…久しぶり!って言うんだ。
横から出てきた男は
朝のひまわりを購入して帰った男性のお客様だった
「え?!!!!」
「…これ、じんちゃんに」
照れ気味渡される俺が包んだひまわりの花束
自分で包んだ花が
自分に向けられているとは思わなかった
見たことあるなとは思ってたけど
「あっありがとう!!」
「いやぁびっくりしたよ、花屋に行ったらじんちゃんがいてさ笑」
驚いた顔をしていたのはそれかぁ…
てか気づいたのすご
俺はなんだか恥ずかしくて
うまく言葉が出ない
「さぁ!ご飯にしましょう!今日は2人とも泊まって!」
お母さんがルンルンで話を進める
俺らは互いを見合って笑う
こんなに楽しそうなお母さん久々に見た
よし…
「「なんか手伝えることあったら言って」」
2人揃って同じことを言った
びっくりしてお互い笑う
「仲良しなのはいいことね!でも2人は久々なんだからゆっくり話してていいわよ」
そのまま奥のキッチンの方に戻ってしまった
俺はとりあえず靴を脱いで
「とりあえずこの花部屋に飾ってくるね」
「…うん笑」
嬉しそうに笑うさーちゃん
ほんとに変わらないな。
そのまま俺の部屋で話すことにした
ベットに座って
まず1番聞きたかった
「仕事何してんの?」
「あー俳優」
「え?!すっげ!」
さーちゃん俳優してるんだ…意外
でかい仕事ってそゆこと、、
というかいつまでそのサングラスと諸々してるんだろう家の中ってのに
そんな有名人なのかな
「さーちゃんサングラスとか取らないの?」
「あ、忘れてた笑」
慌てて外す
久々に顔を合わせる
さーちゃんが顔を上げると
「…え?」
そこには佐野勇斗がいた
今日朝テレビに映っていた
「ん?」
なに?という顔をする
いや何じゃないよ
その顔すらも美しくて
さっきまで普通に話せてたのに
言葉が詰まる
「佐野勇斗、?」
ようやく搾り取って出た声
掠れていたけど聞こえていたのか少し目を見開いている
「あ、そうそう知ってるの?」
知ってるも何も有名人じゃん
知らない人あんまみたことないレベルで
有名な佐野勇斗が目の前にいるって
やっぱなんかのバグだよなこれ
「…えいま熱愛でなんか色々ある」
言った後後悔した何言ってんだよ
はやと、が困るじゃん反応に
あーもう会話下手くそ!
「それで知られてるの嫌だな笑」
笑って流してくれた
ごめんなこんな幼馴染で
「…ちょっと待って」
イケメンすぎて直視できない
俺の幼馴染が佐野勇斗?なんかの間違いじゃないのか?
嘘だ、いや、え?さーちゃん…佐野だから?!
フルネーム初めて知ったわ、
驚きすぎて言葉が出ない
「…あれ嘘だよ熱愛のやつ」
「え?」
「あの人長年の恋人いるんだって」
「そう…なんだ」
少しホッとした自分がいることに驚いた
いやいや、さーちゃんも彼女の1人からいるよね…
あの人長年の恋人に花渡すとか
ロマンチストだなぁ
俺もあんなスマートに渡してみたい
けど俺好きな人もいないし恋人もいないし
渡す相手いないなー、
「…彼女さんも幸せだよねあんな綺麗な人と付き合えてさ」
「え、?彼女?」
彼女?彼氏じゃなくて?
「あ、恋人は彼女だよ。」
彼女だったんだ…同性ってこと?
まぁ今時珍しくはないか
愛の形はそれぞれだしまずそもそも
人を好きになるっていうこと自体が素敵だよな…
「へぇ…確かに羨ましいね笑」
さーちゃん、あーゆうひとがタイプなのかな
まぁ確かにあんな綺麗な人が自分の彼女だったら嬉しいものだが
俺には勿体無いし
恋人作る気ないし…
そもそも出会いないしな
「てかはやとって呼んでよ」
「はやと?あ、うん」
初めて下の名前で呼ぶ
やっぱり慣れなくて
少し変に緊張する
俺なんかとつるんでていいのかな
その気持ちだけが膨らんでいく
なんでだろう
会えて嬉しいのに
なんでこんな気持ちを抱くのか
そんな自分に呆れる
「恋人かぁ…」
上を向いてつぶやくはやと
少し悩んでるような
そんな感じがする
「はやとは恋人いないの?」
気づけば口走っていた
少し…いやかなり気になる
有名人だからとかじゃなくて
普通に気になるというか…
覚悟決まってないのに聞くんじゃなかった
なんて遅い後悔をする
「ん?いないよ」
こっちをみて首を傾げるような仕草
これでいないとか、いやありえないでしょ
でも嘘ついてるようには見えない
「絶対いると思った笑!」
本音を伝えているのにどこかぐっと苦しくなる
またこの気持ち…
この気持ちから目を背けることは簡単だ
向き合うことが難しいから
って、なにやってんだろ俺
「それで思い出したんだけど」
「なに?」
少し真剣そうな眼差しで俺を見つめる
その視線に少しだけ身構える
…何言われるんだ?
「結婚しようって言う約束」
「…へ?」
驚いて腑抜けた声が出る
恥ずかしくて口を慌てて塞ぐが
はやとは「アホくさい声笑」とゲラゲラ笑っている
さっきまでの空気と視線をまるで誤魔化すみたいに
俺…このイケメンと結婚しようって言ったの?
昔の俺何やってんの
いやいや勿体なさすぎるし、普通に似合わないし
と熱くなった頬を血の気が引いた手で冷やす
その時はやとの笑い声が消える
視線を前に戻すと
また真剣そうな顔
今度は何言われるんだと前より少しだけ気を抜いて身構える
「俺あれからずっとじんと一筋だったよ?」
そろそろテスト期間になるので
その前にと…
お揃いは先になりそうです。
容量が本当にやばいので読み切り投稿優先にします。
それではまた。
コメント
4件
うわ、、最高の始まり方です、、