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砕いた木片を火にくべていると、暗闇の中からぼおっと小鬼が顔を出した。赤茶色の肌に伸びた鼻、手には棍棒を持っている。小鬼は駆け寄ってきて、にやっと笑ったかと思うと、棍棒を僕の頭上めがけて振り下ろした。
「防御障壁」
僕の周りに青白い魔方陣が幾重にも浮かび上がり、同時に小鬼がその動きを止めた。
「静止」
誰かが魔法を使った。僕はおかげで命拾いした。小鬼は、顔を引きつらせながら微動にしない。
「いやあ、君、私が加勢しなくても大丈夫だったみたいだけど怪我はない?」
剣を携えた若い男が、暗闇から姿を現した。剣士だろうか、でもこの人は高位の魔法を使っていたので魔法使いかもしれない。
「なんで大丈夫だとわかったんですか?」
「だって君が唱えようとした呪文、雷系の魔法だよね。僕が魔法を使わなくても君のほうが一瞬だけ速かった。そのくらいのことはわかるつもりだよ」
僕は一言も、呪文を唱えなかったし発動もしなかったのに、なぜこの男の人はそれがわかるんだろうか。
不思議そうな顔の僕を見て、男は言った。
「魔法を発動前から知覚はできないけど、頭の上に雷雲ができたらそうじゃないかなって思っただけだよ」
それでも、真っ暗な夜中に雲がわかるほど目がいいんだろうか。ヨカタか何かかな。
「この小鬼はどうするんですか?」
「殺すのは簡単だけど、君が対応してね。私は先を急ぐので」