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(gk視点)
「……え?」
『えっ、あっあのやっぱ、何でもないです』
『なんででしょうね、あはは、は、』
「…ねぇ、刀也くん?」
『?はい、なんで名前知って』
「まぁまぁ、」
「君、親を殺したやつが目の前にいるのになんで泣いたりとかしてないの?」
『え、っと、なんで、ですか、』
『うちは、愛情だとか、そういうのが無くて。』
刀也さんはパニックにもならずに答えた。ある意味すごいと思う。
「ふーん」
「やっぱり面白い人だね刀也さん」
『そうなんですかね、』
『初めて言われました、ふふ、』
俺に向けてはにかんで笑うその顔は天使なんだと思わせる。
「楽しい時間ありがとね、俺もう行かなきゃ」
『え、行っちゃうんですか』
少し脈アリかもと期待が膨らんだ。自分から連れて行ってだとか言ってくれないかなって。
「行っちゃうね。人とかに見つかる前に、ね?」
そう言って部屋の外へと足を踏み出した時に
ぎゅっ
裾を掴まれた。
『い、行って欲しくない、です』
『僕の恩人なので、』
後ろを振り向くと顔こそ見れないが赤くなった耳がちらりと見えていた。
「…じゃあ、着いてくる?」
『え?それってつまり』
「犯罪者についてくって事になるね」
「それでもいいんだったらいいよ」
『………』
少し間が空いて彼は俺の言葉を聞いて2つの死体に目をやる。また少し考えて何も言わずにゆっくりと両手を差し伸べた刀也さん。
「これから大変だね、刀也さん」
『、、はい!』
勢いよく返事をした彼の笑顔は真っ直ぐに明るかった。
「いきなりでごめんだけどね」
「もうこの街でちゃうから最低限の荷物だけ取ってきてもらっていい?」
『分かりました!すぐ来ます!』
さっきまでの事がまるで嘘のように感じるほど刀也さんは明るくなった。ここを出ていくことに何の躊躇いもない。やっぱり出逢ったのが君でよかったと思う。
数分後
大きめのリュック1つと財布を2つ抱えて持ってきた刀也さんが家から出てきた。
『ごめんなさい、待ちましたか?』
「いいよ」
「後部座席の方乗ってもらっていいか?」
『分かりました』
やけに落ち着いている。あと十数分後に街を出ているというのに。それと、最低限とは言ったものの、荷物の少なさと明らかに高そうな2つの財布が気になる。どっちかを聞くか、それとも2つとも聞いてしま何かおうか、。
『もしかして何処か気になります?』
「え?!あぁ、まぁ、」
『移動のこの時間は質問タイムということで、』
『なんでもどうぞ』
「えーっと、じゃあ」
「なんとなく察してはいるけど、」
「2つの財布ってもしかして」
『はい、あの人達のです』
『どうせ入ってるんだからもったいないかなって』
『ちゃんと通帳とカードもありますよ』
彼の話を聞きつつぽかんとした俺を見るなり
『……もしや』
『糞ガキだなとかって思いました?』
にやにやとした顔で覗き込んでくる。彼の本性が出てきたというか、案外子供なんだと思った。
「いいや全然!凄いなぁって、あはは、」
『じゃあ次、僕の番ですね』
「えぁ?」
『僕も質問したっていいでしょう?』
「それはそうっスね!どんな質問でもお答えしますよ!」
『、、貴方は何故僕を連れ出してくれたんですか?』
「んー、なんで、か」
「俺好きだもん、刀也さんの事」
『そ、うですか、』
ルームミラーを通して刀也さんを覗いた。暑いのか、赤くなった頬を手でぺちぺちしていた。
「刀也さんって案外照れやすいんだな」
『だ、誰のせいだと』
「というか、貴方じゃなくてガクでいいよ」
『!!名前!』
『ガク、ガクくん、…ガっくん、!』
『んふふ、いい名前ですね』
そう言って笑みを零して車のシートに横たわると、5分も経たずに眠りについてしまった。
日付けが変わる少し前辺りの時刻。新しい住まいに着いた。俺に物心がつく前に亡くなった祖父からの遺産として、家を貰った。今となっては顔も覚えていないし、家の手入れなんて半年に一回程だった。過疎化の進んだちっぽけな町にある家は二人で暮らすには十分すぎる程だった。
「刀也さん、着いたよ」
「起きてる?」
……反応無し。仕方ないのでもうベッドまで運ぶ事にする。
「うわっ、軽いな、」
「おやすみ。また明日。」
(ty視点)
カーテンの隙間から漏れた陽射しが眩しくて目が覚める。昨日までとは違う匂い。部屋の匂いと、香ばしい、、朝ごはんの匂い。
その匂いを辿っていくと、ガっくんが居た。
「あ、おはよう刀也さん。」
「朝ごはんもうすぐだからな」
包み込まれていくような、優しい声。
『おはようございます。』
『食器とか用意しますね』
「まじすか!サンキュな」
普通の家庭ならば当然のような何気ない会話。
【いただきます】
温かい朝ごはんを食べたのはいつぶりか分からない。
「暇だなぁ」
『そうですね』
家での心地が良い事なんてなかった。けど、今は違う。家が1番好きな場所だと思う。僕は貴方が好きだけど。
ねぇガっくん。
貴方はどう。
(gk視点)
夜になるとふと考える。
刀也さんは、後悔してるだろうか。
俺に着いてきてしまって、大丈夫だろうか。
刀也さんは俺のことをどう思ってるのかなんて分からない。
だからこそだ。
1度不安になるとあまり治らない。どんどん溜まっていって、爆発しちゃいそう。
『…っくん、』
『ガっくん、?』
「あ、あぁ、刀也さん、」
『のぼせちゃいました?』
「ううん、大丈夫、」
そうだった。今は刀也さんとお風呂に入っているのだから、暗いことは考えないようにしないと。
『………』
『お風呂気持ちいいですね、』
「そうだなぁ、」
『窓からでも星が見えますよ』
「星かぁ、もしさ、流れ星が降ったら刀也さんは何を願う?」
『僕ですか?んー、』
『ガっくんが元気になりますように、と』
「?、俺は元々平気だよ?ほらこの通り!!」
そう言って浴槽から勢いよく立ち上がると刀也さんの口から出るとは思えない声で
『こっの、変態野郎!!!』
結構強めのビンタをくらった。何故だかは股間に目を向ければ一目瞭然である。
「、、俺のーーー勃ってる」
『言うなー!!』
『もう、』
怒ってそうな雰囲気は出しつつも
「ひひっ」
「刀也さんが幸せだと俺も幸せだから」
「ずっと幸せでいてね」
『??』
少し顰めた顔をして口から出てきた言葉は
『僕はもう幸せです』
『ガっくんがいるから』
あーあ、この人は俺が無意識に欲しかった言葉を無条件に沢山くれる気がする。今がそうだから。これからも居たいなと思える人。それが刀也さんなんだと。
(gk・ty視点)
【ずっと。これからも。】
一緒
終わり。
所々誤字脱字変なところあると思いますが気にしないで下さい。
それでは