テラーノベル
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陰キャ転生は震える指でマイクのミュートを解除した。
「うるせぇよ……」
その声は、いつもの自信に満ちた煽りとは程遠く、小さく震えていた。
その瞬間、ボイスチャットに騒々しい声が飛び込んできた。
DDだ。「おいおいおい!転生さんよぉ!ミスって泣いてたってマジ!?情けねぇ!お前の座右の銘は『勝てるときに勝て!』だろ!?今こそ勝てよ!敗北から目を背けるな!」
うるんるが被せる。「あーあ、転生さーん。ミスするなんてダッサい!ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ちなの?ねぇねぇねぇ!」
そして、極めつけはペニガキの容赦ない声。「マジ陰キャかよ!デブがメソメソすんな!早く起きて、次の企画の飯テロ枠で笑い取ってこいよ!」
彼らの言葉は、一見するとただの暴言、悪ノリだ。だが、陰キャ転生は違和感を覚えた。いつもなら深く傷つくはずの言葉なのに、今はなぜか、突き放されている感じがしない。むしろ、温かい。
(…こいつら、俺が落ち込んでいるから、わざと悪役を演じてくれているのか?)
彼らの悪ノリは、重苦しい沈黙や同情を許さなかった。KUNやできおこが提供した「理解」が静かな味方だとしたら、彼らの煽りは強制的に戦場に引き戻す「熱い味方」だった。
「うるさいんだよ、DD!敗北から目を背けてなんかねぇよ!てめぇこそ、俺の今日のミスを笑ってやがれ!」陰キャ転生は、無意識のうちにいつもの煽りキャラに戻っていた。
なっしーが笑いながらチャットに書き込む。『転生、復活!やっぱりこうじゃなきゃ!』
とーますの落ち着いた声が場を和ませる。「よかった、元気そうだね。プリンあげるから、また一緒にやろうよ。俺は転生の戦い方も、煽りも好きだよ。」
そして、あーけんがふわふわとした声で言った。「ねぇ、転生。ミスしちゃったのは、きっとプリンが足りなかったせいだよ。だって、プリンは正義だから。プリンが満たされれば、勘違いする方が悪いって思えるようになるよ!」
(プリンが足りないせい……だと?)
陰キャ転生は、その突拍子のない「見方」に思わず吹き出した。彼らは、「ニート部」という場所では、弱さやミスも、すぐに「個性」や「ネタ」という名の宝石に変わることを教えてくれた。
彼の「困り事」は、完璧なキャラクターを演じなければならないというプレッシャーだった。しかし、彼らはミスを全力で笑い飛ばすことで、「お前は完璧じゃなくていい、お前の失敗すらも面白い」というメッセージを送っていたのだ。
「フン!わかったよ。次は絶対勝つ。お前らを全員まとめてゴミにしてやる!」
いつもの陰キャ転生が完全に戻ってきた。カメラの前の彼は、敗北の痛みから解放され、再び自信に満ちたヒーローとして振る舞い始めた。
彼は確信した。このニート部という場所は、自分の「個性」を無条件で受け入れてくれる最強の「味方」だ。そして、「失敗を恐れず、全てを笑いに変える」という、新しい「自分らしさ」の価値観こそが、彼が手に入れた最高の「見方」だった。
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