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配信終了後、どるぴんは静かにマイクをオフにした。
「勝ったのは俺なのに、一番疲れてるのはお前かよ、転生」
モニターの隅に表示された陰キャ転生の名前を見て、どるぴんはそう呟いた。彼の指は、マウスではなく、頭に当てられたまま動かない。
どるぴんは、ニート部における「王」だ。しかし、彼にとって「王」とは、最強のプレイヤーであると同時に、このコミュニティの全てを背負う「責任者」という、重すぎる役割だった。これが、彼の抱える「困り事」だった。
今日の企画も、裏側ではいくつものトラブルがあった。ペニガキとうるんるの暴走を止め、なっしーの配信遅延に対応し、視聴者が飽きないよう、企画を常に動かし続ける。
(俺が手を抜けば、このニート部という場所は、すぐに崩壊する)
どるぴんは、ニート部という居場所を、誰よりも愛していた。社会に適合できず、孤独を感じていた彼にとって、ここは唯一無二の「味方」だった。だからこそ、彼は「完璧な王」を演じなければならないと自分に課していた。彼の「王」という鎧は、陰キャ転生のそれよりも、さらに重かった。
陰キャ転生がミスをしたとき、どるぴんは彼を突き放すような冷たい言葉を投げた。だが、それは彼自身の不安の裏返しでもあった。
(ミスは許されない。それがこの場所を維持するルールだ)
しかし、KUNの冷静な判断と、ひまじんやDDたちの愛ある介入を見たとき、どるぴんの心は揺らいだ。
できおこが「転生は誰よりも真面目にやっている」と言ったとき、どるぴんは陰キャ転生の裏での努力を思い出した。常にネタを探し、企画のために動き回る陰キャ転生は、「誰にも弱さを見せない」という点では、彼自身とよく似ていた。
「転生は、失敗しても許されるという、新しい『見方』を手に入れた」
どるぴんはそう感じた。そして、それは「王」という重荷を背負う自分自身が、最も求めている「見方」でもあった。
(俺の「困り事」は、この場所を守るために、ミスを恐れすぎていることだ)
彼は、チャット欄で騒ぐメンバーたちを見つめた。彼らの個性的な「自分らしさ」が、どるぴんの孤独な責任感を和らげてくれる。メンバー一人ひとりが、どるぴんという「王」の「味方」になっているのだ。