注意
・モブ凛
・凛ちゃんがレイプ(未遂)されます。
凛side
今、何が起こって。
理解するよりも早く、目の前の男に口付けをされた。喉の奥が閉まって、頭の中の何かが刺激される。
「ヒュッ、ぇ、や⋯っ! やだやだ⋯っ!」
バタバタと手足を動かしても、男に効く様子はない。恐怖で膝が震えて、地面にへたりこもうするのを、男が阻止する。
ガタガタと震える体は収まることを知らないようで、怖いという感情だけに襲われた。
『ラッキーだな。こんなべっぴんさん見つけられるなんて』
目の前の男が言う。英語らしきものだ。おれには理解出来ないけれど、今から嫌なことが起きるということだけは理解できた。
もう一度無理やりキスされる。顔を背けても、男が頬を掴んでくるせいで逃げられない。不意に、男の手がおれの尻へ触れた。
(何、なになになに⋯! なんでそんなとこ触るの⋯!?)
ツキンと頭が傷んだ。
この前のような頭痛だ。
(いたぃ⋯いたい、痛いいたい⋯っ!)
「たすけて、よいち⋯っ」
「お前、何してんの」
低い声が、鼓膜へ届いた。
、
反射的に顔をそちらへ向ける。逆光で見えにくいが、間違いなく世一だ。
「よいちっ⋯!世一、世一!」
名前を呼んで、男の手からすり抜けた。突然世一が登場したため驚いたのか、男は力が抜けていて、抜け出すのは先程よりも楽だ。
おい!と叫んだ男を無視して世一に飛びつく。おれより背が低い体だけど、しっかりとキャッチしてくれた。
よく頑張ったな。と耳元で囁かれる。抱きしめる手に力を込めると、世一が背中をさすってくれた。
『お前、“俺の”凛になにしたの』
世一が、男が話していた英語らしきもので男に語りかける。いつものような優しい表情ではなく、氷のように冷たい瞳で相手を睨みつけていた。
男が怯えたように腰を抜かし、はいくつばって逃げようとするのを、世一が背中を押さえつけて阻止する。ひ、と男が小さな悲鳴を漏らした。
『何とか言えよ』
『⋯っ、いくらでも支払う。だから、どうか⋯』
『違ぇよ。そういうことを言ってんじゃねぇ』
『2度とンな事すんな。凛の目の前に現れるな。どっか遠くの方で今までレイプしたヤツらがいつ復讐しにくるか、怯えながら死んどけ』
そう言い切った世一は、スマホを取り出して警察に連絡をした。男はもう諦めたのか、逃げる様子は無い。
世一がおれの方を向いて頭を撫でる。
「凛、ごめんな、遅くなって。どこ触られた?」
「唇⋯キス、されて。後、お尻⋯」
「うん。後でキチンと消毒しような」
ツキツキと地味に痛み続ける頭を押さえつける。さっきまでは緊迫した状況だったからどうにかなったけど、今は痛い。すっごく痛い。
「凛どうした?頭も殴られた?」
「ううん。違うの。ずっと、頭痛い」
そっか。後でちゃんと病院行こうか。と言われて、こくりと縦に頷く。世一が笑って、「いい子」と褒めてくれた。
それから警察が到着して、男はお縄となった。ホッとすると同時に、世一への感謝が湧いてくる。
「世一。ありがとう、助けてくれて」
「いいよ。こっちこそごめんな。」
世一が目線を左下に下げながら言う。
「もう言っちゃうけどさ。凛、記憶喪失の原因のこと言うと過呼吸起こしちゃうの。そんな凛を見たくなかったから、原因を言わなかった。凛はずっと知りたがってたのに」
だからちゃんと話すよ。そう言われて、世一と目線が合う。怖いけど、ちゃんと聞かなきゃ。
そう思って、胸の前で手を握った。
「レイプって、分かる?」
「ううん」
「レイプはね、凛がさっきされそうになってた事。同意無しで、無理やり性行為することを言うんだ」
せいこうい?分からない言葉が出て、首を傾げる。小さく世一が笑って、「凛はまだ知らなくていいよ」と告げられた。なんだか子供扱いされている気がしてムカつく。
「それで⋯凛はレイプされて、それがショックで記憶喪失になっちゃったんだ」
「⋯れいぷ⋯⋯。」
おれがさっきされそうになっていたのもレイプなら、その怖さも分かる。まだ序盤だけだったのに、怖くて腰抜かしちゃいそうだったもん。
「普通は、大好きな人とするものなんだけど⋯好きでも無い、知らない人にされて怖かったみたいなんだ。凛には、恋人がいたし」
「⋯?前の俺は、誰かと付き合ってたの?」
世一が、言ってしまった。という顔をして、口元を抑えた。世一を問い詰める。
「誰?誰と付き合ってたの?」
「あー⋯。内緒!」
「気になる⋯」
教えてくれないので、拗ねて口を尖らせると、笑って世一が言った。
「凛が記憶を思い出せば、誰と付き合ってたか分かるかもね」
そう世一の何気ない一言で、頭痛が増加された。
「──⋯⋯痛⋯っ!」
「⋯⋯、凛?」
今までとは比にならないくらいの痛み。ツキツキ、ズキズキ、チクチク。色んな痛みが頭中を駆け巡って、耐えきれなくなって頭を抱えた。
それと同時に、色んな記憶が頭に流れ込む。
初めてシュートを打った記憶。
兄ちゃんにサッカーに誘ってもらった記憶。
兄ちゃんと喧嘩した時の記憶。
ブルーロックに来た時の記憶。
初めて潔と出会った時の記憶。
U-20戦で潔と同じチームで戦った記憶。
ブルーロックを出る直前、潔に告白された時の記憶。
レイプされた記憶。
「──⋯⋯ぁ」
全部、思い出した。
凛ちゃんモブレばっかされてる。癖なんだ、すまぬ。
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