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〜ぼん目線〜
あれから、2人でわいわいしながら来た道を戻っていた。
ドズさんは相変わらず顔を真っ赤にして俺に文句を言ってくる。
俺も俺で、録音を流したり、茶化したりして、最初にドズさんの家に向かっていた時より、賑やかだった。
これからドズさんのご両親と話すとは思えないくらいに楽しかった。
そんなこんなで、ドズさんの家が近づいて来た頃。
段々とドズさんは口数が減り、ついには俺が煽っても反応しなくなった。
そして、俺も喋れなくなった。
先程の空気が嘘のように、辺りが凍っていくのを感じた。
そんな空気を纏ったまま、歩き続けて約5分後。
ぼん「…..いよいよだな」
ドズル「…….うん。」
ドズさんの家は、電気が着いていて、人影が見えた。
…..やっぱり、そんな簡単に帰ってくれないか。
ドズル「….本当に、いいの?」
ドズさんが、よりいっそう真剣な顔で俺を見る。
ぼん「何回も言ったろ?」
ぼん「俺は着いてきたことを後悔してないし、するつもりもない。」
ドズル「…..!」
ドズル「….ありがと」
そう言ったドズさんは、少し照れくさそうだった。
ぼん「行けるか?」
ドズル「うん、僕は大丈夫。」
ぼん「….じゃ、行きますか」
俺は、ゆっくりとドアノブを引いた。
ドズ父「….やっと帰ってきたか。」
ドズ母「一体どのくらい待ったと思ってるの!」
ドズル「…..別に、待ってて欲しいなんて、誰もお願いしてないです。」
ドズ父「なんだと…..?」
ドズさんのお父さんの顔に、怒りの色が見える。
帰ってきてそうそう、既に冷戦状態。
ドズ母「…..そちらの方は?」
ドズさんのお母さんが、俺に視線を向ける。
やけに冷えきっているその目が、俺の母の目にどこか似ていて、背中を冷たいものが転がり落ちていくような、好きじゃない感覚が俺を襲う。
ぼん「….っ、ドズさんの友達の、ぼんじゅうる…..です…….」
胃酸が逆流するようなすっぱさに耐えながら、俺は自己紹介をする。
すると、ドズさんのお母さんと、俺の母に似た目を、ドズさんのお父さんからも向けられる。
….覚悟はしていた。
だがやはり、いざとなると上手く頭が回らなくなり、どんどん追い詰められてしまう。
すると、そんな俺を見たドズさんのお父さんは、こう吐き捨てた。
ドズ父「….汚らわしい。」
ぼん「…..っ?!?!」
まさかそんなことを言われるとは思っておらず、驚きすぎて声が出なかった。
ドズル「なっ…..?!」
それはドズさんも同じだったようだ。
….わかってるよ、そんなこと。
俺じゃドズさんの横に立っているのは申し訳ない。
いつも思っていた。
けど、ドズさんが隣に来てくれるから。
俺は、ここにいていいんだなって思える。
….思おうとしている。
じゃないと、本当に壊れちゃいそうだったから…..
ドズル「ふざけんな!!!」
ぼん「へっ…..?」
ドズ父「…..なに?」
ドズ母「ドズル!そんなこと言うなんて!」
ドズル「ふざけんな!」
ドズル「あんたらに何がわかるんだよ!」
ドズ父「なんのことだ?」
ドズル「あんたらに、ぼんさんの何がわかるんだよ!」
そう叫ぶドズさんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
….今日、いっぱい泣いてるね。
ドズ父「何も知るわけないだろう。」
ドズ父「ふざけたことをギャーギャーと喚くんじゃない。」
ドズ父「見苦しい。」
ドズル「ふざけているのはそっちでしょ!」
ドズ母「ドズル!いい加減にしなさい! 」
ドズル「そっちがいい加減にしてよ!」
ぼん「ぁ….」
ドズさんを助けるつもりで来たのに、俺のせいで事態を悪化させてしまった。
けど….
ドズル「僕の友達をバカにするやつは許さない!」
ドズ父「友達?」
ドズ父「こんな汚いやつが?」
ドズル「黙れ!!」
ドズ母「そんな言葉どこで覚えたの!」
ドズル「あんたらに関係ないでしょ!」
ドズ父「お前は俺たちの顔に泥を塗るつもりか!!」
ドズル「あんたらの顔なんてどうでもいいよ!!」
ドズ母「な、なんてこと….!」
俺のために怒鳴ってくれている。
その事実が、どうしようもなく嬉しくて…。
….なんて思ってしまう自分は、最低なのだろうか。
ドズ父「いい加減にしろ。」
ドズ父「俺はお前と、こんなくだらないことで言い合うために時間を割いたわけじゃない。」
ドズル「く、くだらないって….?」
ドズル「くだらないわけないだろ!」
ドズ父「まずは話を聞け。」
ドズル「嫌だね」
ドズ母「ドズル!!」
ドズル「聞いて欲しいなら、ぼんさんに謝って。」
ぼん「えっ….」
別にいいよ…
慣れてるし….
ドズル「じゃなきゃ聞かない。」
ドズ父「こんなやつに?俺が?」
ドズ父「バカにするんじゃない。」
ドズル「じゃなきゃ聞かないから。」
ドズル「謝んないなら、さっさと帰って。」
ドズ母「ドズル!」
ドズ母「お父様がなんのために病院を空けて来たと思ってるの!」
ドズル「別に来て欲しいなんて、お願いしてないんだけど。」
ドズ母「なっ…..!」
ドズ父「….はぁ〜 」
ドズ父「ドズル、いいか?」
ドズル「….なに。」
俺はこの場面をどういう気持ちで聞いてればいいのだろう。
…ドズさん、苦しそう。
ドズ父「お前は国立病院の院長の一人息子だ。 」
ドズル「….だからなに。」
改めて聞くと、やっぱりすごいな。
ドズ父「お前には、家を継ぐ義務がある。」
ドズル「知らないよ、そんなの。」
ドズ父「….戻ってこい。」
ドズル「….は?」
ぼん「ぇ….」
ドズさん…取られちゃう…….?
ドズ父「みんなお前に期待していた。」
ドズル「…..っ。」
….ドズさん、辛そう。
期待されるって、辛いこと。
ドズさんは前に、そんなことを言っていた。
期待してもらったことがない俺は、「期待」に憧れていた。
だって、いいじゃん。
みんなが俺を信じてくれてる。
みんなが俺を見ていてくれてる。
だから、その「期待」に応えられるように、努力するんだ。
けど、ドズさんとめんは違った。
めんは言った。
めん「その、応えなきゃ!….っていうのが辛いんすよね」
わからない。
でも、されたことがある人が言うから、そうなんだろうな。
あと、この話をしていた時、ドズさんとめんは….
ドズル「期待されると、それに応えようとする度に、なんか….自分が消えていくような気がするんだよね」
めん「ちょーわかるっす。」
めん「段々と自分の意見が言えなくなってくるっすよね。」
ドズル「それな〜」
ドズル「期待を裏切っちゃいけない…って感じを押し付けられてる感じするよね〜」
めん「ですね」
ドズル「期待されるって、加減を間違えると….」
ドズル「簡単に、人を壊せちゃうんだから」
2人とも、すごく辛そうな…でも、どこか懐かしむかのように話していた。
たった今、少し理解できた気がする。
さっきドズさんのお父さんが言った、「期待していた。」
これは、ただの押し付けだ。
それに、過去形になっている。
….つまり。
もうドズさんには、失望している。
ということだろう。
ドズル「……だから、なんだっていうの。」
ドズ父「お前も、もう自分で家庭のお金をやりくりするのは厳しいんだろう?」
ドズル「…..っ。」
図星だ。
….ドズさん、厳しかったんだな。
ドズル「….別に、そんなことないし。」
ドズ父「電気代に水道代。光熱費に、食事代。 」
ドズル「…..。」
ドズ父「帰ってくれば、俺たちが全部出すんだぞ?」
ドズ父「わざわざバイトになんか行って、夜眠る時間を割いてまで課題をしなくていいんだぞ?」
ドズル「……。」
ドズさん、寝る時間割いてたんだな….。
俺の家はまだ、母がなんとかしてくれていた。
俺はただ、家事をこなし、顔色を伺い、ストレス発散に使われていればいいだけの人だったから。
自分でお金を稼ぐ必要がないのは、まだよかったかもしれない。
ドズ父「な?お前も辛いだろう。」
ドズ父「俺たち、家族だろう。」
ドズル「….!」
それまで俯いていたドズさんが、いきなり顔を上げた。
…..え、嘘でしょ?
行っちゃうの?
俺を…俺たちを…..
置いて行っちゃうの?
ドズル「…..いい加減にしてよ。」
…..え?
ドズ父「なんだと?」
ドズル「今まで家族らしいこと、なにもしてないのに….」
ドズ父「どういう意味だ?」
ドズル「一緒に食卓囲んだことあった…?」
ドズさんは、さっきの激昂したような声じゃなく、悲しそうな声で、諭すような声で話す。
ドズル「お出かけに行ったこともない。」
ドズル「雑談とか、他愛もない話をしたこともない。」
ドズル「頭を撫でてくれたことも、抱いてくれたこともない。」
ドズ父「…..。」
ドズ母「そ、それは….!」
ドズル「こんなので、どこが家族なの?」
最後にドズさんは、声を震わせ、ドズさんのお父さんの目をまっすぐと見つめ返し、そう言った。
….今まで、どれくらい我慢していたのだろう。
生まれた時から、親の愛を知らないんだろうな。
俺は、生まれた時はまだ、愛されていた…気がする。
家の環境が悪くなったのは、たしか….
そう、小学校の…3、4年くらいだったはず。
段々と、父の帰りが遅くなっていった。
最初は、週に何回かだった。
けど、日を追う事にその頻度は増していき…
ついには、もう帰ってこなくなった。
最初に母に手をあげられたのは、帰ってこなくなった、何週間かあと。
夜、トイレに起きた時だった。
ぼん母「ひっ…ぐすっ…..」
母が泣いていた。
いつも笑顔な母が泣いていたのが、なにか重いことがあったということを言葉なく語っていた。
幼ぼん「おかあさん…..?」
ぼん母「…..っ!」
幼ぼん「ど、どうしたの、おかあさん…!」
ぼん母「…..うるさい。」
幼ぼん「え…..?」
ぼん母「あなたがいるせいで私はっ….!」
幼ぼん「おかあ、さっ….?」
ぼん母「あんたのせいでっ….!」
意味がわからなかった。
机の上には、父が知らない女の人と、ラブホに入っていく様子が写った写真が、何枚もあった。
そこで俺は、幼いながらに理解した。
幼ぼん「うわ、きっ…..? 」
口に出したのがいけなかった。
ぼん母「…..っ!!」
幼ぼん「….へっ?」
気づけば俺は、床に倒れていて….
幼ぼん「ふぇっ、うわぁああん!!」
ほっぺたが異常に痛くて、泣き出してしまった。
すると….
ぼん母「うっさい!!」
そこから俺は、いっぱい殴られ、蹴られ、叩かれた。
幼い俺は、状況がよく分からなくて。
ただ痛くて
ただ怖くて
ただ泣いていた。
だけど、泣けば泣くほど、母は怒った。
そんな暴行を受け続けて、何時間か経ったあと。
ぼん母「はっ、はぁっ、くそっ…!! 」
母は寝室に入っていった。
残された俺は、ただただ放心状態で。
涙も鼻水も、拭う元気すらなくて。
そのまま、冷たくて硬い床で眠りに落ちた。
たしか、そこからだった。
そこから虐待されて、父からも受けて。
でも、最初は愛されてた。
ピクニックに行ったり、遊園地に行ったり。
ドズさんは、それをしたことがないんだろうな。
家族で美味しいご飯を食べたことも。
家族でどこかお出かけに行ったことも。
家族で一緒の寝室に入ったことも。
家族で…他愛もないことを話すことも。
そんな、世間一般の「普通」を、ドズさんは味わったことがない。
どれだけ美味しいご飯でも、一緒に食べる人がいなければ、美味しさは半減する。
どれだけ楽しい場所でも、一緒に行く人がいなければ、楽しさは半減する。
どれだけ質のいい布団でも、一緒に寝る人がいなければ、冷たさは倍増する。
どれだけ面白い話でも、一緒に話す人がいなければ、つまらなさは倍増する。
一体ドズさんは、どれだけ長い間、愛に飢えていたのだろう。
小学校の中頃まで、一応愛をもらっていた俺でさえ、欲しいと願うのに。
生まれた時から愛を知らないドズさんは、どれを愛と認識して、どれだけの量を求めているのだろうか。
ドズル「なんでここがわかったんですか。」
ドズ父「探偵の人に頼んだんだ。」
ドズ父「お前のことも知っていたさ。」
ぼん「え、あ、俺….ですか?!」
….まぁ、いつも一緒にいたし、当たり前か
ドズ父「もう1人いただろう。」
ドズル「えっ….」
ぼん「えっ….」
俺とドズさんの声が面白いくらいにピッタリとハモる。
俺とドズさんは顔を見合わせ、確信した。
めんのことだ。
ドズル「いえ…僕たちはずっと2人です。」
ぼん「….!」
ドズさんは、めんを庇おうとしている。
ドズ父「下手な嘘をつくんじゃない。」
ドズ父「いただろう。」
ドズル「いないっているじゃないですか 。」
….今更気づいたんだけどさ
ドズさん、気持ちがたかぶった時は、ちゃんと噛み付くけど、落ち着いてる時はしっかり敬語なんだな。
ちっちゃい頃から、そうやって教えられてきたんだろうな。
大変だな〜。
ドズ父「….そうか。」
ドズル「…..!」
わかってくれた….?
ドズ父「お前はどうだ。」
ぼん「….へっ?」
え、俺?
ドズル「ちょ、ぼんさんは関係なっ….!」
ドズ父「お前には聞いてない。黙っておけ。」
ドズル「….っ。」
ドズさんのお父さんのやばすぎる覇気で、さすがのドズさんも黙ってしまった。
ドズ父「ぼんじゅうる…と、言ったな。」
ぼん「は、はいっ….」
ドズ父「うちのドズルと関わっていたあと一人。いたな?」
ぼん「ぅっ…. 」
とんでもないくらいの圧かかってるんだがこれどうしよう…
ドズ父「答えろ。いたな?」
ドズル「ぼ、ぼんさっ…!」
ドズ父「お前は黙っていろと言っただろう!」
と、顔を真っ赤にしたドズさんのお父さんが、いきなり…..
ドズル「…..え?」
ドズさんを思いっきりぶん殴った。
ながくなるますた
にとですぅ〜
前回、ドズさんが過呼吸になった場面を書いたと思うんですけど。
その数日後にですね。
なんとわたくし。
学校で過呼吸になってきました。
いや〜、びっくりした。
これもしや、運命?
それではさよなら(? )